教育福島0020号(1977年(S52)04月)-007page
小中学校における生徒指導
一、生徒指導上の問題
1、児童生徒のもつ問題
(1) 児童生徒のもつ不安
児童生徒の身体発育は著しい伸びを示している。一方、社会環境の変化がめまぐるしく、情報は茶の間にはん濫している。こうした中に生活する児童生徒は、身体と精神発達とのバランスがとれないため、身体、学習、交友、進路等さまざまな不安や悩みをもち、情緒不安定な傾向を示すことも少なくない。
また、各種の危険が予想される社会環境の中では、教師や親からの一方的な禁止、指示が多くなりがちで、児童生徒自らが判断し、行動して何事かをなし遂げるという機会が少くなってきているように思われる。
こうした生活経験等から追従的、無気力な精神状態に陥り、情緒不安定となり、ついには非行にはしることも予測される。
(2) 児童生徒の非行の傾向と特徴
児童生徒の補導件数は、小中学生とも増加の傾向にある。(表1参照)
刑法犯少年が増加しているのに対しぐ犯・不良行為少年は横ばいにあるように読みとれる。だが、ぐ犯・不良行為少年については、その性質上、潜在的なものも多分にあると考えねばならない。
その非行の原因や動機についてみると、物欲、好奇心、偶発、不和雷同等が多い。(図1参照)更に、遊興費、小づかい銭等を加えると、現代の物質的繁栄に伴う児童生徒の享楽的な風潮や欲望、不満の増大等がクローズアップされる。また、偶発、好奇心等の割合をみるとき、特定の者だけではなく、普通の児童生徒にも非行を犯す可能性がじゅうぶんにあることに着目しなければならない。
〈図1〉非行の原因・動機(20歳未満少年)
これらの非行のうち最も多い件数を占めている窃盗では、表2でみるように万引が圧倒的に多く、空巣、乗物盗車上盗がそれに次いでいる。
これは、困窮からの窃盗というよりはむしろ、万引きのスリルを楽しむとか友人の行動を見て深い考えもなしに自分も試みるといった衝動的行動によるもののようである。また、従来の自転車盗からバイク、自動車盗にまで発展し、それらを乗りまわしての欲望の発散、あげくの果てに交通事故を起こすといったケースも見られる。
窃盗に次いで多いのが家出(表3)である。この原因、動機等については後述したい。
また、薬物乱用も増加しており、これがため死亡事故まで発生している。
これらに次いで、表示されていないが、強制わいせつ、暴行、傷害、ろう火、花火・火薬遊び、鉄道線路のいたずら、自殺等が発生しており、最近では全く予期しない殺害事故まで発生している。
これらの事故と家庭環境の関係は、両親健在(八八%)、生活程度が中流(八一%)のごく普通の家庭が大部分を占めていることにも留意したい。
〈表1〉小中学生の補導状況(昭51.1.1〜51.12.31)
小中 小学校 中学校 年度 昭51 昭50 増減 昭51 昭50 増減 非行別 総数 1,111 1,093 18 2,595 2,475 120 刑法犯少年 487 449 38 708 599 109 特別法犯少年 3 3 0 24 6 18 ぐ犯・不良行為少年 621 641 △20 1,863 1,870 △7 (県警本部防犯少年課調べ)
(注)刑法犯少年 刑法に定められた罪を犯した犯罪少年及び触法少年
特別法犯少年 刑法に定める以外の法令の罪を犯した犯罪少年及び触法少年(銃刀法、火薬類取締法、毒劇物法、軽犯罪法違反等)
ぐ犯・不良行為少年 飲酒、喫煙、けんか等自己又は他人の徳性を害する行為をしいる不良行為少年
家出又は不良行為をする性癖があり、性格、環境に照らし、将来罪を犯し、又は刑罰法令に触れる行為をするおそれのあるぐ犯少年の総称
〈表2〉 窃盗少年
小中 学校 学校 年度 昭51 昭50 増減 昭51 昭50 増減 手口別 総数 434 401 33 678 549 129 万引き 244 182 62 303 245 58 空巣ねらい 47 57 △10 46 44 2 自転車盗 24 14 10 68 41 27 オートバイ盗 1 2 △1 52 66 △14 自動車盗 4 0 4 37 15 22 車上ねらい 24 15 9 31 19 12 出店荒し 2 8 △6 11 9 2 部品盗 1 0 1 10 8 2 学校荒し 33 16 17 16 15 1 店舗荒し 7 11 △4 5 13 △8 その他 47 96 △49 99 74 25
〈表3〉家出少年
小中 小学校 中学校 年度 昭51 昭50 増減 昭51 昭50 増減 男女別 男子 29 21 8 67 74 △7 女子 4 13 △9 63 56 7 合計 33 34 △1 130 130 0 (県警本部防犯少年課調べ)