教育福島0020号(1977年(S52)04月)-009page

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〇諸検査、調査結果のデータをそろえ関係機関等の専門家にその子の教育措置等について意見を求めるとき、それらのかたがたから尋ねられることがある。「担任の先生は、その子をどのように観察しているか。観察、調査や相談をとおして、どんな考えをお持ちか。」ということである。観察や教師自身による調査はたしかに主観的な要素の強い場合があろう。だからといってこれらを軽視し、標準的な検査に頼るだけでなく、常に子供に接し、観察し、ふれ合いをとおして子供の内的状態を知り、その変化に意をとめるようにしたい。

こうして、平常の児童生徒の状態を理解しているとき、その変化に気づき援助の手を差しのべたり、不測の行動にはじる前に指導の手を打つこともできるのである。

(2) 一人一人の実態に合った指導

○集団場面における指導が多い学校生活では、ともすると、教師の授業進行のペースにそのまま乗れる子供中心の授業が進行され易い。教師の発問にすぐには反応を回に出さず、まず頭の中で受けとめ、解答を準備してそれからおもむろに発言しようとしたとき授業は次の場面に進行していたとすれば、その子は、発言し自己実現を図る場がなくなってしまう。こうしたことから授業に対する熱意を失い、他に関心を求める結果となることが多い。

学級における指導は三十〜四十人を対象として行うのであるが、二十人の中の一人としてみるのではなく、個性ある一人一人の集まりとして三十人の集団をみることが肝要である。

教師のこのような見方により、指導のあり方は根本的に異なってくるものである。

○子供には子供の世界、考え方がある。このような内的状態を知らずに教師が見た外面的な言動、教師自身のもつ大人の考えをもって対処するとすれば、「先生は私のことをわかってはくれない。」といった念を抱かせることになろう。児童生徒の心理的発達の一般的特徴を文献等でとらえ、しかる後に自分の学級の子の実態をは握して指導に当たることがたいせつである。

現代の子供と接していると、用いる語いが豊富であり、行動にもそつがなく小さな大人を思わせることがよくある。こうしたことから「このようなことは当然知っているはずだ。」として、最も根幹となる指導を抜きにしてその上をいく指導をし、なかなか徹底しないと嘆くことがある。その実、子供たちは「知っているはずだ。」の内容がわかっておらず、単なることばだけを身につけている場合が多い。それぞれの発達段階に応じて、根幹となるべきことがらのどこまでを理解しているのかをじゅうぶん調査し、その上に立って地道な指導を行うことが必要であろう。

○「おとなしく目立たない子供だった」。--よく聞くことばであるが、これらの子供に対する理解や指導の手はどこまで伸びているだろうか。三十人から四十人を受け持っている教師はともすると、いろいろな面で目立つ子の指導に追われがちになり、一週間に一度も話さないという子が出てきたりはしないだろうか。

こうしたおとなしい子の場合、不安や悩みを表出せず、内にこもってしまい自己の能力等について悲観的な考え方をしがちである。自分を正しく理解し、愛情をもって接してくれる人がいないと思ったり、自己の能力に対する自信を失ったとき、関心は他に向っていったりするものである。

日常の生活で、目立たない子にこそ教師の温かい日とやさしい声がほしいものである。

○現在ではほとんどの学校に教育相談の組織も作られ、運営されているが、この教育相談をとおして児童生徒の不安、悩みの解決や不適応の解消に努めたい。そのためには、教師自身の力で診断、治療の可能なものは早期にかかわりあってその是正に努めることはもちろんであるが、教師の力では及ばないものは他の専門機関に依頼するという判断、決断が必要である。この点については、今後の研修にまつことが多い。

 

二、教師の共通理解と指導体制の確立

生徒指導は、学校の教育活動のあらゆる場と機会をとおして、全児童生徒を対象にして行われる働きである。したがって、全教師が生徒指導の目標、内容・方法並びに自校の課題についての共通理解を図りながら、それぞれの役割を分担し合い、組織的な指導を推進することによって、その成果をあげるようにしていきたい。

 

一、全教師の共通理解を図る

学校内における生徒指導に関する考え方は全教師必ずしも一致しているとは限らない。また、生徒指導が学級担任まかせとなったり生徒指導係に依存する傾向もみられる。

生徒指導を効果的に推進するためには、一人一人の教師が、いつ、どこでどのような指導を行うかということについての共通理解を図り、協力して実践する心構えが確立されていることが必要である。

(1) 生徒指導の全体構想の共通理解を図る

学校教育における生徒指導をどのように展開していくか、全教師の共通の目標となることを明らかにするためには、生徒指導に関する全体構想の策定が必要になるのである。各校においては、生徒指導の全体計画が策定されているが、その内容について全教師の共

 

 

 


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