教育福島0020号(1977年(S52)04月)-010page

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通理解が図られないままになっていれば、一人一人の教師が思いつきやその場限りの指導となり、協力的な指導は期待することができない。生徒指導の全体構想が、校長、教頭、生徒指導主事など、少数の教師の考えだけで策定されたのでは、全教師の理解と協力を得ることは困難である。そこで、共通理解をじゅうぶんに図るためにも、その策定過程に全教師が参加できるよう配慮する必要がある。

(2) 自校の問題点を全教師が共有する

生徒指導は、自校の児童生徒の実態を知ることから出発できるものであり一人一人の児童生徒の理解が最も基本といえよう。したがって、各教師が日常とらえている児童生徒の問題点を率直に交換し合い、自校の問題を明確にすることが重要である。

(3) 生徒指導に関する情報や資料を生かして共通理解を図る

全教師が常に新しい問題事態に対して、敏速にしかも協力的に対処できるようにするには、各種の情報や資料を収集し、活用することがたいせつである。情報や資料の収集のし方や提供のし方については、各校の実情に合わせて創意くふうすることが望まれる。例えば、校内に資料コーナーを設けたり当面の問題やともに考えたい事項などをもり込んだ「生徒指導ニュース」などを定期的に配布することも効果的であろう。

 

2、教師の協力体制のもとで生徒指導の推進に当たる

生徒指導の実施に当たっては、全教師が協力しなければ効果を期待することができない。しかし、現実には生徒指導の係に依存したり、各教師の足並みがばらばらであったりする例もよくみられるのは残念である。自校の実態に合わせ、協力的指導体制の(1) 学校の実情に合った生徒指導の組織の改善を図る

学校規模や職員構成の違いによって校務分掌の組織やその運営のあり方は当然異なるであろう。また、都市部と農山村部の学校においても、それぞれ異なる面もあろう。

特に生徒指導については、自校の抱えている課題をじゅうぶんに検討し、実情に合った組織に改善を図ることがたいせつである。つまり、必要な係を新設したり、改廃したり、その人数を増減したりすることなどによって具体的に改善を図りたいものである。

(2) 生徒指導の推進体制を整備する

生徒指導は、学校の全教育活動をとおして全教師の分担と協力によって進められるものであるから、すべての教師がそれぞれに役割を持つように校務分掌上の組織をくふうするとともに、相互の連絡と協力が保持できるよう、運営にくふうが必要である。

例えば、問題を持つ児童生徒の指導において、学級担任が責任を強く自覚することは望ましいが、それが行き過ぎて、自分だけで指導しようとする閉鎖的な考え方にはしることがよくある。

そのためにかたよった判断をしたり指導方法が固定化したりして、望ましい方向で問題解決を図れなくなったりすることがある。そこで、生徒指導部会等の組織を生かしたり、学年部会の組織を生かしたりしながら、適切な指導ができるような体制づくりなどさまざまなくふうが望まれる。

(3) 生徒指導に関する校内研修の充実に努める

児童生徒を取りまく社会環境はもちろんのこと、先にも述べたとおり児童生徒の考え方や心身の発達も大きく変わってきている今日、生徒指導もこれらに対応できるよう、教師自身も絶えず研修に努める必要がある。当面重要な研修の内容としては、次のようなことがらが考えられよう。

○生徒指導についての考え方

○児童生徒の心身の発達の一般的特徴と自校の実態

○児童生徒の理解を深めるための観察のし方

○検査、調査等結果の活用のし方

○教育相談の進め方

○各種の問題傾向をもつ児童生徒の指導の方法

 

三、精神的に不安定な時期にある児童生徒の指導

児童生徒の情緒の発達段階の中で最も変化の激しい時期は中学生の時代である。

この時期は青年前期あるいは思春期と呼ばれる時期であり、心身の変化が著しく、不安と動揺の中に立たされている。この結果、ある場合には、反社会的行動に走ったり、非社会的な傾向に陥ったりしていろいろな不適応現象が問題となる。したがって、この時期における生徒指導には、よりいっそうの配慮が必要であり、適切な援助・指導の手をさしのべることがたいせつである。

 

1、青年期の精神発達と指導

青年期になると身体の発育、特に性的な発達が著しく、外見上も児童期を脱して男らしく、女らしく心身ともに変化していることが自覚されてくる。

同時に、判断力、思考力、推理力等論理的な能力が発達し、美的感覚や鑑賞力も高まってくる。

他方、親や教師の保護を脱して、自我の自覚が高まり、独立の要求や、束縛から逃れたいという願望も強まってくるが、反面には現実の自分が独立するには未だ弱く、見せかけの強がりをしていることも知っている。

このような複雑で揺れ動いている精神発達の過程では、周囲の人たちの態度や扱い方のいかんによっては、ある生徒は無理に背のびをしていた虚勢が崩れ、自信を失い劣等感に陥りやすく場合によっては神経症的な傾向に陥っ

 

 

 


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