教育福島0020号(1977年(S52)04月)-011page

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たりする。

(1) 青年期の劣等感と悩み

中学校の生徒の大部分は、自分が他の者よりも劣っていると感じた経験をもっており、その内容も知的能力、身体的能力、容貌、容姿、性格特徴、家庭環境など多方面にわたっている。

ア、身体的発達について

身体の発達、性的な発達が急速な時期であるため、生徒は心身の変化にお互いに敏感で、自分が他の者より遅れている場合はもちろん、早過ぎると感じたときも不安感をもち、悩みの原因となることが多い。

イ、能力や性格について

自我の目覚めは自己に対する期待をもつ反面、自分に種々の欠点を発見し理想と現実のずれに悩み苦しむことがある。この結果、自己嫌悪に陥り不適応感や脱落感を抱き、問題行動に発展したり、劣等感の補償として暴力傾向や非行に発展していくことがある。

ウ、対人関係について

思春期では対人関係が敏感になり、好き嫌いがはっきりしてくる。また、集団への所属要求が強まり、仲間からの排斥や孤立に不安を抱く時期である。

対人関係の悩みは父母、兄弟の関係、教師との関係にも見られ、その不適応は対立や反抗となって現われるが、さらに深刻になれば、自らの逃避や孤立化の傾向が出て神経症的な兆候を現す場合もある。

エ、家庭や社会環境について

不適応現象の原因には環境的な要因がある。家庭内の不和や親の無理解など自分の学業や進路の関係で深刻な悩みとなることが多い。また、社会問題に対する関心も高まり、矛盾に悩んだり勉学に疑問を感じたりする。このような悩みや親や教師に対する反抗や批判という形で現われるが、これに対する接し方によっては悩みをいっそう深刻にし意固地にさせてしまうこともある。

(2) 劣等感の強い生徒の指導

青年期に共通する心理として誰もが劣等感や悩みをもちやすいことや、客観的にはそれほどでもないことに悩み込んでいることを具体的な事例などに即して理解させることが必要である。

ア、生徒一人一人が自己の長所と短所を正しく理解しそれぞれの矯正改善を図ることができるように教師と生徒の間の信頼関係や共感的な相互理解を深めることがたいせつである。

イ、学校生活への適応を図り、充実感や安定感をもたせるように学級指導を充実し、また個別の教育相談を実施するなど一人一人に対する援助をたいせつにする。

ウ、折にふれて生徒の心の内面に問いかけ、受容的な態度で接することもたいせつである。

エ、生徒の不安や心配などを教師に話せるよう信頼感に支えられた人間関係をつくるように努めることもたいせつである。

オ、病的な傾向の生徒については、医師や教育相談機関と連絡をとりながら治療指導を進める必要がある。

 

2、児童期の精神発達と指導

小学校の時代は、比較的安定した着実な発達をする時期である。

しかし、児童期が心理的な問題が少なく扱い易いということではない。

ことに、七、八歳以後の感じ易い年齢の時期では、周囲の人との関係は協調的であっても、児童自身の心の中は不均衡で他人のことばや批判でたやすく傷つき、かんじゃくを起こしたり粗野な行動を示したりすることがある。

また、児童期の後期では批判的で他人の過ちを許さない面があると思うと一方では思いやりや愛情を示すなど、感情の起伏や移り変わりが見られ、未発達で安定していない時期といえる。

児童期は問題行動の現れ方が顕著ではなく急激でないために発見が遅れたり気づかれないまま蓄積されることが多い。中学生の時期の問題が実は児童期にその原因をもつ場合が多く、児童期に前兆が出ているのに見逃されているところに大きな問題がひそんでいる。

こう考えると、現象面では中学生時代が問題を生じやすいが、教育的には児童期が最も問題の多い時期であり、一人一人の発達の様相を注意深く見守りながら指導を進める必要がある。

 

四、学業上の問題をもつ児童生徒の指導

学校生活の大部分は教科等の学習の時間である。学業不適応の傾向にある児童生徒は、この学習時間をどのように過ごしているだろうか。児童生徒が持つ学業上の諸問題に対して、適切な指導が適時に行えるならば、学校生活への不適応や社会生活への不適応として表れる問題もある程度防止できるであろう。

ここで児童生徒の持つ学業上の問題と一口にいうが、同じような不適応現象も児童生徒一人一人同じ理由により起因するものではない。個々別々の原因によることが多いゆえ、これに対する指導も、その原因を究明し、個別に適切な指導を行うことが肝要である。

 

1、学業上問題のある児童生徒の診断のしかた

学業不適応が顕著な形となって表れるのは、学業不振と勉強嫌いである。

診断に当たっては、次の諸点に留意する必要がある。

(1) 学業不振

学業不振とは、知能に比較して学業成績が振わない場合を指す。

(原因)

○身体的欠陥あるいは病気

顕在的な欠陥、病気よりも、むしろ軽度の視力、聴力の障害、耳鼻科

 

 

 


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