教育福島0020号(1977年(S52)04月)-013page
へのあこがれ、興味や冒険心の追求などが考えられる。
これらによって生じてくる不安、不満、かっとうなどの処理がうまくできず家を出たいと考えるようになる。
しかも、交通機関の発達や、比較的自由に金銭を手にしたり、他人のことに無関心な社会の風潮などは、家出に結び付き易くしている。
家出の起こり易い時期としては、七月が最も多く、次に九月と五月、十月と一月の順に多く(昭和五十一年度、義務教育課調へ)、よくいわれるように長期休業期の前後が多いことがわかる。
2、「家出」に対する指導
(1) 家庭との連絡協力
最近、多くの家庭では、親と子との心理的な結びつきが弱くなっているといわれる。現在の親は、子供の実態やその心理までじゅうぶんに理解しきれず、多様化した価値観に対応できないために、子供にどのような態度で接していけばよいかにとまどっている。そのため、親も子も不安定な状態に置かれている。ごく普通の家庭にあっても多かれ少なかれこのような問題を抱えていると言えよう。
そこで、学校としては、家庭訪問、PTA集会等のあらゆる機会を生かして、心理的発達の特長や悩みの傾向、家庭での指導のし方、学校の指導の方針や実際を理解してもらうとともに、学校と家庭とが、一貫した指導を行うことのたいせつさを認識してもらうよう更に努力することが必要である。
(2) 学校での指導
家出児童生徒の指導といっても、さきに述べたように、複雑多様な原因や様態があり、その指導に特効薬があるわけではない。つまり、日ごろの生徒指導を充実し、それぞれの児童生徒を正しく、幅広く、愛情をもって理解し正常でより健康な発達をめざして個別的な指導を徹底することであろう。
また、特に精神的に不安定な児童生徒については、カウンセリングをとおして阻害条件の除去や克服など治療的な指導を考慮する必要がある。
更に、集団への所属感の充足を図ることや、障害や失敗にもくじけないで最後までやりぬく耐性、強じんな意志の鍛練など、現在の学校教育に切望されている点についての指導を強化するようにしたい。
なお、児童生徒の家出の事実が明白になった場合は、速刻関係機関等の協力を求めて保護に当たることが先決である。いたずらに隠し立てをしたりしないで知り得る情報を提供し協力を求めるようにしたいものである。
また、家出からもどってきた児童生徒に対しては、その非を一方的に責めるだけでなく、温かく、時間をかけて立ち直りを図ることが望ましい。
その間、家庭への指導や協力を併せて行いながら、本人にも、事の是非について、しっかりと指導することがたいせつである。
六、学校事故における措置
学校事故といえば、学校をめぐって起こる事故の総称であって、その範囲は極めて広く多岐にわたっている。そして、 一般的な見方として事故の責任を学校側、校長、教職員に求められている。なかでも、児童生徒の非行を伴う事故は、その非行のあった場所が学校の内外に関係なく、生徒指導上の教育的な問題として追求されるものである。ここでは、紙面の都合上、生徒指導上にかかわる事故を中心にとりあげる。
1、非行事故に対する措置
生徒指導の本来の考え方としては、事故を未然に防ぐ予防指導が積極的に行われることであり、事故発生における事後措置は二次的なものである。しかし、不幸にして事故が発生した場合は、その事後措置がそれぞれのケースによって完全に行われることが教育上最も重要なのである。
(1) 非行の発見者として
児童生徒の非行を発見するのは、教師による場合のほか、父母や地域社会の人々または諸団体、警察その他の諸機関などから知らせを受けてわかる場合がある。そして、その取り扱いについても、非行の軽重によって異なるので、非行を発見したり、非行のあったことを連絡を受けた教師は、それぞれの非行内容によって、学校の生徒指導組織部門に速やかに連絡し、事後措置をとることがたいせつである。
(2) 軽微な非行も学級担任へ
非行が軽微なものであるとか、 一時的な非行であるという場合には、その場で、説諭その他の処置をとるだけですませる場合もある。このように発見者が軽微な一時的な非行として指導した場合であっても、その軽微に見えた非行の背後に大きな非行が潜んでいる場合も考えられるので、学級担任にだけは、その指導経過を連絡しておくようにする。
(3) 非行内容・程度によっては全職員へ
非行の内容や程度によっては、その場でとりあえずの処置をとることのほかに次のようなところに報告し、事後指導の対策を講ずることが必要である。
○校長及び教頭
○学級担任
○生徒指導主事、生徒指導を担当する組織部門
○全職員(これは、校長の指示によって行う。必要によっては職員 会議で報告することなども含む)
(4) 非行の内容・程度によっては教育委員会ヘ
非行の内容・程度によっては、非行を犯した児童生徒に対する処置と指導のほかに、教育委員会へ報告し、教育長の指示や指導を受けることを忘れてはならない。