教育福島0020号(1977年(S52)04月)-015page
交遊などとなっており、これは全国的な傾向(後述)と同じ傾向を示している。
二、非行の傾向と特徴
以上の概況から、最近の高校生の非行のおおよその傾向をうかがうことができるが、更に諸資料を加えて検討して見ると、非行の傾向として、次のことがいえよう。
一、非行の全体の数は漸減の方向にあるが、刑法犯、特に窃盗は大幅増加の傾向にある。
二、喫煙経験者が増加し、一部には常習化が見られる。
三、シンナー等薬物乱用者が再び大幅に増加してきている。
四、不健全な男女交際と潜在的性非行が増加の傾向にある。
五、異性との交友に端を発する家出が跡をたたない。(親子関係や家庭生活に対する不満と複合している場合が多い。)
六、学業不適応からくる怠学や夜遊びなど、容易に非行に結びつく行動が増えている。
七、無免許運転、速度違反、一時停止違反などの交通法令違反は依然として増加している。
八、なお、昭和五十一年度の県立高校からの事故報告書によって、こ れらの学年別を見ると、三年生による非行が大幅に減少し、ひきかえに一年生によるものが増加、前年に比し二倍にもなっており、低学年化が目立つ。
次に、これら高校生非行の最近の特徴ともいうべき共通点には、
一、動機(物欲、好奇心、偶発的でき心、付和雷同などが指摘されている)において、単純な「遊び型非行」が多い。
二、非行の集団化現象と、卒業生や他校生、及び地域の有職、無職少年との共同非行が多い。
三、環境にはあまり関係がなく、普通の性格、普通の家庭環境(両親健在で、経済的不自由のない家庭)の生徒にも比較的多く見られる。など、高校生の多様化に伴い、非行傾向も多様化している。
以下、最近の顕著な傾向三つについて、その実態と対策を具体的に検討してみる。
男女交際の指導について
一、増加している女子非行
警察庁では毎年、犯罪や不良行為などで検挙もしくは補導した未成年者の実態を発表しているが、この二〜三年女子非行の増加、低年齢、性にかかわる問題の多発などが目につくようになっている。
昨年末に公にされた同庁の少年非行白書によると、昭和五十一年一月〜十一月末までの間に全国で検挙、補導された非行少年(十四〜十九歳)は交通事故などによる業務上過失致死傷を除く刑法犯が約十万人で、昨年同期とほぼ同様であった。
しかし、女子についてみると大幅に増加しており、十月末までに約一万五千人が刑法犯で取り締まりの対象となっている。
これは前年より一〇%上回る数字である。
その非行の主流を占めるのは毎年のことながら窃盗、特に万引きであるが、増加率という点では性に関する逸脱行動が断然多くなっている。
白書によると売春などの性非行によって補導された少女は、高校生が二千八百二十七名とトップで、次いで学校にも行かず、特定の仕事にも就いていない少女が千五百七十四名、職に就いているものが千四百六名、中学生が千三百七十三名となっている。
さすが小学生は含まれていないが十二歳の中学一年生という例もあり、低年齢化の傾向が歴然としている。
これらの背景としては、今の子供たちの身体の発育がめざましく、性的な知識や関心をもつのも早いという事情が働いていると思われるが、むろんそれだけではない。
むしろ、規範の侵犯、道徳の無視はそれらの生徒の精神的面とのかかわりに基づく面が大きい。
情緒の枯渇が自己抑制力の弱化と結びついて、行動の歯止めをきかなくしているからであると考えられる。
二、一対一の交際希望
いわき地区高校生活指導協議会では昭和五十一年十二月、一〜三年生四千二百三十二名を対象に、男女交際に関して十八項目をつくりアンケートを実施した。
この調査では、男女交際、性の自覚意識、性愛意識、性道徳について尋ねている。
調査結果の主な内容をみると、交際については、「自由に交際してよい」が三七%で対象者の三分の一強は、男女交際については自由でよいという意見が強い。これは学校で補導の対象としている一対一の交際に、強く反発していることになる。
また、性に関する現在の社会風潮についても、「もっと自由でよい」という者二〇%強、このままでよいも含めると約三〇%になっている。
また、純潔については、「わからない」と回答している者五〇%と意外に多いのに驚く。純潔教育の必要性は声を大にして叫んでも、実際には純潔教育がなされていないことを暴露しているようで反省させられる。
守るべきであるとする理由は、「高校生だから守るべき」「純潔の意味がよく分らないが守るべき」結婚するまでは守るべき「名未成年者で行動に責任が持てないから」等であった。
性愛についても、「キス」の経験について、「ある」と答えた者一一%で、各学年とも女性より男子が多かった。