教育福島0020号(1977年(S52)04月)-017page
の形成を目指しているが、そのいずれにも違背する高校生の喫煙問題は、教師として見逃してはならない教育の本質にかかわる問題である。
二、高校生の喫煙状況実態調査
いわき地区、相双地区生活指導協議会が、二万二千二百八十二名の高校生を対象にして実施した喫煙に関する意識調査アンケートを見てみると、
(一) 喫煙経験
約四〇%の生徒が経験をもっているが、これは県北地区生指協の親から見た喫煙者推定数と一致している。表面に出ない数を考慮すると約五〇%以上の生徒が何らかの形で経験していると見ても間違いではなかろう。
(二) 喫煙の動機
「なんとなく」が四一・九%で一位で「好奇心から」がいわき二二%、相双三〇%以下「かっこよい」で実にささいなことがきっかけになっていることがよくわかる。
「吸ってみたいから吸う」青年期における微妙な心理状態の影響をうけている。この時期に適切な指導の手だてが講じられればかなりの成果が期待できる余地が見られる。
(三) 吸いはじめの時期
中学時代が、男子三六・二%(いわき)三五・八%(相双)女子二四・二%(いわき)四〇・二%(相双)である。
高校時代になると高校一年終了時では男子いわき七八・四%、相双七三・八%で女子はいわき六二・三%、相双七一・四%で女子生徒の喫煙傾向が目立っている。
このことからたばこの有害さについて早くから指導する必要性がわかる。
(四) 主にどこで吸うか
一位が自宅で、男子いわき四八・七%、相双六〇・四%で、友人宅名等いわき二二・四%、相双二〇・四%、喫茶店いわき一七・四%、相双五・九%の順で圧倒的に自宅が多く、友人宅を含めると家庭での喫煙の機会が極めて多いことがわかる。
(五) たばこの購入場所
たばこ店からが、いわき三九・三%、相双五五・三%と多く、一一位は自動販売機でいわきの四五%、相双二四・三%となっている。これはたばこを売る側買う側も明確な罰を科されないという法執行の不徹底さをあらわしている。
(六) 父母の意識
子供の喫煙に気づいていない親が男子はいわき四四・七%、相双二九・一%で女子いわき六一%、相双五六・六%で女子生徒の親が多い。
注意した親は三八・六%のいわき、相双は四二・五%である。気づいているが何もいわない親はいわきで一〇%、相双で一〇・五%、黙認している親がいわきで八・一%、相双六・六%もあるのは寒心にたえない現象といえる。
(七) 喫煙生徒の発見・指導される割会
学校に喫煙を発見され指導を受けたものは、男子はいわきで一八・七%、相双一四・六%、女子は八%台にすぎない。
(八) 喫煙についての罪悪感
悪いと思う男子生徒はいわき四五・六%、相双三五・九%で、女子生徒はいわき二八%、相双六八・三%で全体をとおして見ると半数にも満たない。悪いと思わない生徒は、いわき二八%、相双三二・四%もあり、喫煙と若者のモラルについて積極的指導が必要である。
(九) たばこの有害性に対する意識
相当気にしている者がいわきで二七・一%、相双二三・七%で、多少気にしているのがいわき五六・九%、相双三一・三%に対して、全然気にしていない者がいわき一六%、相双一五・六%と少ないことは、たばこの有害性についての健康教育の必要性を示している。
(十) 喫煙している友人に対する見方
「高校生として怒りを感じる」生徒が二二・九%「ばかな奴らと思う」三七・四%と大半の生徒は認めてはいないが普通のことだから気にしない生徒が三〇・五%もいることも注目したい。
またその友人に対して注意したものが二四・三%で、注意しない生徒が二九・九%「言ってもきかないから」「勇気がない・かかわりたくない」が二八・九%と半数以上もある。
(十一) 生徒から見た喫煙防止策
自分で吸わないようにするが四七・五%に対し取り締まりを強化する二九・七%、おとなが注意する六・七%で今後の指導のあり方を示している。
三、指導の進め方について
前述のような実態が各地区各校に共通するものとすれば、それぞれが持っている問題傾向を具体的には握するところから指導を進めなければならない。
(一) 個別指導の充実
ア、未喫煙者に対して
喫煙の動機や心理が、
1)好奇心、たいくつ、なんとなく。
2)劣等感の代償-感覚的におとなになりたい。学習に興味がわかない。
3)自己保持のため仲間から評価を受けたい。
4)青年期のおとなの持つ権威への抵抗。
などにあることから喫煙行為そのものを直接的に問題とするのでなく、まず第一に、今自分がなにに対して独自性を持つべきかを考えさせ、正しい価値観の樹立を援助する。そこには教師の生徒に対する強い人間的関心と、厳しい人間的要求が生まれていなければならない。
教師集団の中で各人の考え方の相違があり、それが容認されるにしても、生徒をどのようにして育てていくかという視点については共通した理解の上