教育福島0020号(1977年(S52)04月)-019page
盗少年全体の八〇%に達している。
(二) 手口別
窃盗のなかでは、万引きが一番多く、四七・三%になっている。
万引きについてみると総数千八十二人のうち高校生が最も多く、三百八十八人で三五・八%、中学生は、三百三人で、二八・○%、小学生は、三百四十四人で、二二・五%となっている。したがって、小中高生の占める割合は、全体の八六・三%という高い率を占めている。
(三) 時間別
午後三時から六時までが一番多く、三三・五%である。午後九時から午前三時までの、いわゆる深夜の窃盗も、約二〇%に達している。
(四) 家庭環境
両親とも健在であり生活程度も中流以上の経済的には不自由のない普通の家庭の子供が大部分である。
また、万引きをした二百三十四人の中高校生徒について調べた結果によると、自分で使うために万引きしたといっている生徒が、七一%もおり欲求をおさえることができない生徒の割合が最も多い。また、その場で急に欲しくなり、衝動的に万引きした生徒も二〇%に達している。万引きしたときの心理状態では、すごくこわかったといっている者が、六三%で、万引きすることがいけないことは、じゅうぶん知っている。したがって、発見されない盗みが重なると、一方では、大胆で計画的となり、他方では、習慣化してしまう傾向がある。更に、三百三十四人のうち、三七・二%の生徒は、親に対して申し訳ないことをしたとのべている。このことからも、親は、子供を過信することなく、誰も見ていなくとも、「とっていけないものは、いけない。」と教えるべきことを裏づけている。学校での成績をみると、普通が、六五%で最も多く、悪いは三〇%、よいは五%となっている。
三、指導の進め方
(一) 学校における継続的な指導
1) 消費指向の増大、情報の氾らん価値観の多様化など、欲求をかりたてる条件がそろっている中で、子供の欲求は、無限に増大している。自己理解の深化を図り、欲求をおさえる強い意志を育てるためにも、ホームルーム活動の充実とあわせて、個別指導を徹底し、人間的なふれあいのなかから、人間性の陶やを図る必要がある。
2) 単なる遊びのための友人ではなく、望ましい友情や、連帯感を育てながら、善悪の判断ができて行動するような、主体性を強調すべきである。
3) 盗みは、悪いことだとは知っている。知っていてとるのだから、自制心に欠陥があるといえる。自制心は、他人から与えられるものではなく、どうしても自分で持たなければならないものなので、どうしたら自制心を持つことができるか、を具体的に教えることがたいせつである。
4) 盗みが行動化されるのは、自制心が外部の刺激に抗しきれなくなった場合であるが、その要因は、単純ではない。とったことを叱るだけでは、解決しないことが多く、二度と盗みをやらないような指導の方法を考えるべきである。
(二) 家庭教育の充実
1) 家庭の持つ教育的な機能の見なおしをする。保護的な面のほかに、社会生活に必要な、基本的な生活習慣は機会あるごとに教えないといけない。どんなにとりやすい状態であっても、とってはいけないものはいけないこととしつけることがたいせつである。
2) 勉強部屋さえ与えておけばいいというような安易な考えでなく、交友関係や、服装、所持品等に細かい配慮が必要である。見なれない物があったり、不審に思える物があったら、すぐ問いただすべきである。「うちの子に限って、決して間違いをおこすようなことはない。」というような過信は、放任になりやすい。
3) 家族間の対話は、特に親子間では、うわすべりし易い。言葉がなくとも、心は通じあえるという親と子の絶対的な信頼関係があるからだろうか。
表 学職別窃盗の状況
学職別 小学 中学 高校 大学 他の学生 有職 無職 種別 総数 2,286 434 678 722 11 74 234 133 万引き 1,082 244 303 388 9 38 65 35 自転車盗 223 24 68 91 1 12 20 7 バイク盗 163 1 52 76 0 12 11 11 空き巣 133 47 46 8 0 1 19 12 その他 685 118 209 159 1 11 119 68