教育福島0020号(1977年(S52)04月)-020page
価値観が多様化し、情報化時代といわれながら、適正な情報が不足している現代では、家族が真剣に話しあえるふんい気が必要である。また、家族の一員としての自覚を持っためにも、それにふさわしい仕事の分担が欲しい。
(三) 地域ぐるみの指導
1) それほど用事もないのに、グループで街の中をはいかいしている子供たちが多い。デパートなどでは、「買物がすんだら早く帰るんだよ。」という愛の一声は、かなり「でき心」をおさえることに効果がある。
2) 子供たちの欲求を、いたずらにあおるような社会環境は、青少年の健全な育成を阻む要因である。環境浄化運動の推進が必要である。
3) 盗みは、発見されなかったり、適切な指導でなかったりすると、かえって計画的になり、回を重ねる結果となる。関係機関の連携が必要である。
以上窃盗防止の指導について、概略をのべたが、更に、欲求について考えてみると、成長の過程では、常に生理的にも、心理的にも、不均衡状態をおこすものである。そしてこれらの不均衡状態をいちはやく回復しようとしたときに、欲求がおこる。生理的な不均衡状態は、例えば、空腹のような場合であり、食事をとることによって、即時的に平衡状態をとりもどして、欲求は解消する。心理的な不均衡状態は、人間特有の欲望であり、継続的な欲求となっているのが特徴である。豊富な物と、はんらんする情報のなかで、子供たちは、心理的な欲求を、生理的な欲求のように考え、行動するところに問題があるのではないだろうか。精神的な面での充実を図るような生活態度の育成こそ、緊急の課題であると思われる。
まとめ(指導体制と共通理解)
以上、「男女交際」「喫煙防止」「窃盗防止」の指導について述べてきたが結局、いずれの場合の指導においてもその指導のあり方には共通するものがある。それはどの場合も、「生徒指導そのもの」であるから当然のことといえる。
一般に、生徒指導は、生徒の人格の健全な発達を助長するために必要な教育活動であり、学校の教育活動の重要な機能の一つである。
その意義は、
(一) 個別的かつ発達的な教育を基礎として
(二) 一人一人の生徒の人格の価値を尊重し、個性の伸長を図りながら同時に社会的資質や行動を高めようとするものであり
(三) 更に、その指導は生徒の現在の生活に即しながら、具体的・実践的活動として進めるとともに、その活動は統合的とし
(四) 常にすべての生徒を対象とするもの
である。(「生徒指導の手びき」-文部省)
また、生徒指導が学校教育の目標を達成するために、学校教育のあらゆる場と機会を通じて行われなければならないことも、いうまでもない。
したがって、高校における生徒指導の場は、教科指導、ホームルーム指導などの場をはじめ、生徒会、クラブ活動、部活動などを中心に学校教育活動全体を通じて行われ、しかもこれらの指導活動は、生徒指導と相互補足の関係にあることを重視し、一体的に行われるよう配慮されることが望まれる。
さて、生徒指導が学校教育の本来的機能として、右のように考えるとき、まず第一に、生徒指導は一部担当教師だけによる特別の指導領域と解することはできない。全教師の共通理解と協力、そして、各が役割分担をして指導に当たるということが当然となってくる。
次に、その際、なによりも必要なことは、教師の側に指導しやすい体制ができていることである。
生徒指導を行うための指導体制を考えるとき次のような点に留意する必要がある。
(一) 教師自身の指導理念の確立
(二) 教育目標に沿う全体計画・学年指導計画の作成
(三) 学校の施設設備の充実
(四) 生徒指導の組織づくりとその円滑な運営
(五) 関連機関、団体等との緊密な連携
また、教師の構えとしてあげられるものに、生徒指導を担当する関係教師の問題がある。生徒指導を担当する教師にはホームルーム担任をはじめ、生徒指導主事や相談教師などの専門家それに特別教育活動の各部門を指導する教師、保健主事、進路指導主事などがあげられるが、これらの関係教師による密なる連携と協力のもとでの指導力にまつことが大きい。また、指導教師によるたえざる研修をふまえての知識と技能の修得や、更には生徒指導主任を中心として、実態に応じた指導組織の編成に当たらなければならない。
文部省編生徒指導資料「生徒指導の推進体制に関する諸問題」では組織化について次のようなことをあげている。
ア、学校における生徒指導上の重点事項や課題を明確にし、指導のための基本構想を確立したうえで、組織を押さえること。
イ、学校の特色を生かし、できるだけ単純かつ明確で、実践的な組織