教育福島0021号(1977年(S52)06月)-009page

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社 会

 

社会科では、本年度も能力の育成を指導の重点として取りあげた。基礎的能力として観察力、資料活用能力、思考力を育成する指導については、昨年本誌「学習指導の展開(1)」特集号において述べているので、今回は問題解決能力に焦点を当てて述べてみたい。

 

一、問題解決能力育成の必要性

社会科は、人間の社会を問題とし、複雑化する社会を学習の対象とする教科である。

現代のように情報が質的に多元化し量的に拡充していく社会において、その内容をわからせるという指導をしていたのでは、いくら時間があっても足りないであろう。そして、ただ単に断片的な知識を数多く指導しても、社会事象を確かに見る目や、社会のしくみを意欲的にとらえていく能力の育成を図ることは困難である。

社会科の学習指導において、児童生徒が学習の対象となる社会事象に関する問題を的確には握し、問題意識に支えられて意欲的に学習を進め、社会的な意味や法則を自らの力によって発見していく能力や態度を育てることが基本とされる理由はここにある。

こうしたことから、社会科学習においては、児童生徒が主体的に問題解決が図られるような学習過程を組織することが多く見られる。だが、現実には授業者自身が望んでいる、児童生徒自身による問題解決が行われないままに、授業が終了することも少くない。

児童生徒自らによる、その問題解決力を養うためには、問題解決を図れるような学習過程を構成するだけでなく、児童生徒に問題解決の手順・方法を身につけさせるとともに、学習過程の各段階において、それぞれの段階の意味する活動がじゅうぶんできるように、指導を充実させていくことが重要である。

例えば、

(1) 学習していく上でどうしても解決しなければならないものとして学習問題を設定し、

(2) その問題の解決を図るために仮説(予想)、学習計画を立て、

(3) その検証を行い、

(4) 結論として言えることは何かを明確にする。

という学習段階を設定した場合、(1)〜(4)のことを児童生徒自身が「できる」ようになることが、問題解決能力が育った状態といえよう。このような能力が身につくようにするためには、問題解決を図る過程の各段階において、順次に問題解決に必要な力を育てていかねばならない。

次に、問題解決能力と基礎的能力の関係について述べたい。

問題解決能力とは、社会科の基礎的能力として前述の観察力・資料活用能力・思考力と並列的に別個に存在する能力ではなく、問題の解決に当たって働くそれらの能力の総称であるといえる。つまり、問題解決の過程にあって観察力・資料活用能力・思考力等の育成に力を注ぐことが、問題解決能力を育成することにつながっていくといえよう。

 

二、問題解決能力の因子

問題解決能力は、前述のように「問題が解決されていく過程」において発揮されるものと考えてきたが、その過程において前記一の(1)〜(4)のような学習段階を設定したとすれば、問題解決能力の因子を次のようにとらえることができよう。

(1) 問題設定の段階-問題発見力

(2) 仮説設定の段階-問題解決のための計画を立てる力

(3) 検証の段階-資料を蒐集する力、資料を選択する力、資料を読みとり判断する力

(4) 結論の段階-結論の妥当性を吟味する力

これらの能力には、いずれも観察力・資料活用能力・思考力等がかかわりあってくるが、それらが問題解決という方向に向かっていることに着目したい。

 

三、問題解決能力を伸ばす指導

問題解決を図る学習過程としては、いろいろな学習段階が設定されているが、ここでは前述の学習段階を例として問題解決能力を伸ばす方法を探ってみたい。

 

(一) 問題設定の段階

社会的事象・事実から問題を発見しそれを明確にしていくには、観察力や資料活用能力が土台となり、事象・事実をはっきりとは握しなければならない。更に、観察や資料から得た事実相互の関係や条件等について思考をはたらかせることが必要である。こうして基礎的諸能力が駆使され、総合されて問題が発見される。

例えば、既習事項Aと新資料BからABを比較させ、その矛盾等に気づかせ、問題の発見とその意識化を図ろうとする学習活動がよく見られる。

この場合

(1) Aの既習事項を想起し確認する。

(2) Bの資料を正確に読みとる。

(3) A、Bを比較して考える。

の順序をふまえることがたいせつであるが(1)、(2)を省略し、資料Bを提示しAの想起を促し、すぐに(3)の発問を行

 

 

 


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