教育福島0021号(1977年(S52)06月)-010page
う場合が見られる。そして、「両者の相違・矛盾に気づかない」と嘆くことが多いが、(1)、(2)を確認し(3)に進むことが肝要である。
(1)〜(3)のような学習を、問題を発見する場合の一例としてパターン化し、その順序を踏むことを習慣化させておけば、新しい事象、問題に遭遇したとき、児童生徒が自力で問題を発見するのに役立つものとなろう。
(二) 仮説設定の段階
この段階では、設定された学習問題に対して、既有経験・知識や資料等から解決のための仮説(予想)を立てることが行われる。ここでは、児童生徒各自の持てる思考力が動員されるであろう。その際注意したいこととして
○ あくまで児童生徒自身の力で設定されること。
教師が期待する反応が得られないからと、教師の誘導的な援助、助言等により児童生徒の思考の方向、内容まで無理して教師の望むものへもっていくことがあるが、問題解決のために必要な能力の育成という面からすれば、決してプラスになるものではない。
未熟な予想であっても、それをたいせつに扱い、検証の段階を経て、自分の仮説(予想)が一面的、あるいは考えの浅かったことに自ら気づくとき、「今度こそは」の意欲が出、物事を深く、多面的に考えようとする意識が生まれるのである。こうして問題解決に必要な能力が備わっていくのである。
(三) 検証の段階
この段階では、資料等を活用し、分析、総合を加えながら論理的な追究をとおして仮説(予想)の確かめが行われる。論理的な思考力の基礎となるべきものや、資料活用能力の基礎を身につけさせたり、それら諸能力の発展を期待したい。
そして、ここで養われた能力が(一)、(二)の段階における資料活用を可能にしたり、思考を深めさせる基ともなると考えられる。つまり、ここで培われた能力の生きてはたらく場が、次時以後の(一)(二)であると考えてもよいであろう。
このような意味から、この段階においては、仮説(予想)を確かめる資料を用意しながら、それの説明のみに終わることなどのないよう児童生徒の能力育成にじゅうぶん留意したい。
(四) 結論の段階
この段階は、学習内容についてのまとめのみを意味するものではなく、本時の学習問題についてどんなことが言えるのか、どんな限界をもっているかなどを明らかにすることがたいせつである。
また、本時の問題設定・仮説・検証のしかた等についてまとめ、以後の問題解決の学習に役立ち、ひいては問題解決能力を伸ばす基ともなるのである。
算数・数学
児童生徒の発達段階に応じて、数学の基礎的な知識、技能をじゅうぶんに身につけさせ、「数学的な考え方」を育成することは、算数・数学の基本的な目標である。
この目標を達成するために、本年度の算数・数学教育の重点事項を設定するに当たり、昨年にひきつづき、次の四つの柱を立てた。
○ゆとりある学習計画
○ねらいに即した教材の精選
○基礎的な知識・技能(特に計算力)の向上
○わかりやすい学習指導法
この四つの柱は、個々ばらばらな形で行われるものではなくて、相互補足的な形で互いに結び合って指導がなされることによって、よりいっそうの指導効果が期待されるものである。
本年度の算数・数学教育の重点事項は以上の四つの柱を軸として、二十近くの項目を掲げているが、そのいくつかについて説明を加えてみよう。
一、二つの数量の依存関係に着目したり、対応のしかたを調べたりするようにすること
関数的な見方・考え方は、小学校の一年生の段階から指導される。
すなわち、一年生でのたし算、ひき算、二年生のかけ算、等号や不等号をつかった式、三年生では、対応する数量の組をつくったり、表をつくること又は、周囲は、直径の約三倍であることなど、四年では、折線グラフをかいたりするといったものが指導され、学年、中学校へと発展している。これらの中には、関数とは関係がないようにみられるものもあるが、関数的な見方、考え方をすることによって、その概念をよく理解させることができるものが多いことに着目すべきである。
(一) 二つの数量の依存関係に着目すること
この指導は、小学校の低学年や中学年では、その性質上単独でとり扱う場面は少なく、他の指導内容を理解させるための補助手段としての扱いが多いが高学年や中学校では、この依存関係そのものをとり扱うことになる。この場合、次のことがたいせつである。
○ 与えられた数量について、変化させるものと変化させないものを意識させること。
○ 具体的な二つの数量について、一つの数量を単独にみるというのでな