教育福島0021号(1977年(S52)06月)-014page

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(七) 学習の遅進をどうするか、また、発表をどのようにするかについても配慮が必要である。これらについては、機会を見て述べることにする。

 

音 楽

 

音楽の学習は、音楽に親しみをもたせ、音楽を愛好する心情を育てることを重視し、児童生徒に楽しく豊かな音楽経験をさせることによって、音楽を学習する喜びを得させ、音楽的感覚を養うことがたいせつである。

最近の音楽指導上の問題は、

○ 児童生徒が喜んで学習に取り組んでいるか。

○ 児童生徒が音楽科の指導目標に向かってどう高まっているか。

の二つにまとめられる。

児童生徒が喜んで学習に取り組み、音楽の美しさを意欲的に表現したり、鑑賞したりする態度を育てることは、すべてに優先する課題であり、意欲なくしては学習の成立はあり得ない。

次に、児童生徒が指導目標に向かってどのように向上しているかという問題である。

授業で取り扱う教材曲は、児童生徒の心身の発達に応じて高度なものになっているが、階名唱をしたり、記譜したりする力は相応に伸びていないことが多い。読譜や記譜の能力が中学生になっても小学校中学年の児童と大差がないということは、系統的、発展的な指導といいながら基礎的な指導の積み重ねがなされていないということになり、各学年の指導目標に照らして一人一人の学習状況をたしかめながら着実な指導をすすめる配慮がじゅうぶんでないといえよう。

本年度の指導の重点として、「指導内容の理解と重点的指導」「指導計画の改善」「集中して学習させる指導法の改善」等を掲げ、それぞれに具体的な観点をあげている。これらは、いずれも音楽科の指導効果をあげる上でじゅうぶん配慮すべきものであるが、各校では実態に応じて、更に重点的に努力すべきものを明確にしていく必要がある。

ここでは、小学校、中学校共通の重点である「指導法の改善」に関する内容から主な観点を取り上げ、前記の問題点に関連する指導上の留意事項を述べる。

 

一、目標を具体化し、学習の段階や到達度を明らかにして学習活動を活発にし、学習の充実感・達成感をもたせる

 

(一) 目標が明確で、具体的であること

児童生徒が、意欲をもって活発な学習ができるようにするには、まず、学習目標が児童生徒によくとらえられており、何を学習するかが具体的にわかり、しかも、学習をとおして達成できるという目標でなければならない。

音楽科では、題材学習の立場をとる場合が一般的であり、題材そのものを歌ったり、演奏したり、聞いたりすることをとおして目標に迫る方法をとるのがよい。しかし、ややもすれば、教材曲を選んだ立場(目標と指導内容、実態の関連)が忘れられ、ねらいが不明確になる場合がある。

音楽科の学習の正しい意味は、曲の味わいを感得し、理解し、表現することである。したがって、曲の味わいを感得する助けとなる理解や、表現技能上の課題を解決する学習方法をとれば学習のめあては、教材曲に即して明確になり、学習内容も発展的となり、授業も充実すると考えられる。

目標を具体化するには、教材曲を教科目標や指導内容、児童生徒の実態に照らして多面的に分析し、その中から学習目標を重点化する教材研究が必要であり、その目標は、教材曲の学習をとおして達成されるという裏づけをもったものとしなければならない。

 

(二) 目標達成への筋道と段階が明確であること

学習が主体的に、効果的に行われるためには、児童生徒自身が、自分の現在の力と目標とのへだたりやずれを意識し、それを埋めるための細かな段階がは握されなければならない。そして学習を進める過程でその段階をふみながら目標に向かって着実に進んでいるか、又は、目標からそれているかを評価する働きがだいじになってくる。

このようにして目標を達成した満足感や喜びは、次の学習への意欲を呼び起こし、更に高い目標への志向を促す働きをするのである。

 

(三) 基礎の内容は、各領域の活動の中で取り扱われること

音楽的感覚を細分していくと、調性感、拍子感、音程感、リズム感、和声感、速度感、強弱感等となり、結果的に見れば、これらは音楽を構成する基礎的な内容であるということから、これらの内容を取り出して徹底した指導を繰り返せば能力として身につくと考え易い。この結果は音楽の授業を無味乾燥にし、音楽の授業が嫌いな児童生徒をつくってしまうことが多い。

児童生徒は音楽に感動を求めているのである。音楽の美しさを感じとり、更に感動を深めていくように、音楽に密着して基礎の指導がなされ、美しさや味わいと一体となって基礎の力が身についていくように指導上特段の配慮が必要である。

 

二、学習の過程や成果について絶えず評価反省し、効果的な授業を行うようにする

 

評価は、児童生徒が目標にどの程度到達したか、あるいは、その学習がどのように進歩したかを測り、学習への意欲づけをするとともに、指導計画や指導方法を検討するためのものである。

 

 

 


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