教育福島0021号(1977年(S52)06月)-040page

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図書館コーナー

法学関係書 小野崎文庫

 

資料紹介2)

 

故 小野崎正明氏

 

同じツールを使って選択するなどの制約から同じようなものになりがちである。

 

公共図書館はその性格上あらゆる部門の資料を収集し、均衡のとれた蔵書構成にすることが要求される。その結果、収集された資料をみると、各図書館の予算不足とか、日本図書館協会の選定速報、図書新聞等同じツールを使って選択するなどの制約から同じようなものになりがちである。

したがって個人が生がいをかけて、一つの専門分野の資料を収集した「個人文庫」は非常に貴重な存在である。世界に冠たる大英博物館は個人のコレクションが基になっているといわれている。

当館の個人文庫には、江戸時代の軟文学、俳句書など六百冊の「放江文庫」犬を中心にした動物の本のコレクション三百冊の「井筒文庫」、戦争関係の資料一万三千点の「佐藤文庫」があるが新たに昨年の一月亡くなられた県弁護士界の長老、故小野崎正明氏から、故人の意志として、氏が生がいをかけて収集された法律関係の専門書が多数当館に贈られ、「小野崎文庫」として加わることになった。

昨年度は同氏宅から運んだものを書庫にアト・ランダムにつめいれ、大まかな分類順にならべて、「小野崎文庫価格評価書目」を作成した。その結果、同文庫の全容について知ることができた。

朝日、民報、民友等の各紙で″ビック・プレゼント法律の専門書約一万冊″などと紹介されたが、その概要は、法律関係図書・雑誌・判例集、一般図書等で二万五十二冊、内訳は図書扱いとしたもの四千四十九冊、雑誌扱いとしたもの一万六千三冊にのぼり、その評価額は九百九十二万六千八百七十円にものぼる。

小野崎氏の本集めの基本方針は、法学の学問的伝統のある東大、京大各法学部の資料(図書・雑誌)が大部分でその他に若干数の旧帝大系資料も含まれている。

学問的な価値のある雑誌では、東大法学部の機関誌「法学協会雑誌」、京大法学部の機関誌「法学論叢(そう)」があり、なかでも法学協会雑誌は明治二十年後半からのものが一応そろっている。実務とも学問とも関係のあるものでは、末川博責任編集になる有斐閣発行の「民商法雑誌」が創刊号からそろっているのも特色にあげられる。

実務雑誌では「判例タイムズ」「判例時報」「ジュリスト」が創刊号からそろっている。分野ごとに紹介すると「公法研究」「私法」「民事訴訟法雑誌」、弁護士会の機関誌である「自由と正義」もそろっている。総合雑誌では昭和十二三年頃からの中央公論がだいたいそろっている。

図書で力をいれられたのは民法、商法などの民事法、民事手続法である「民事訴訟法」とか「強制執行法」とかである。また氏が行政機関の各種委員などもつとめられた関係か、「行政法」とか「労働法」とか「教育法」、あるいは「憲法」などの分野にも力を入れられたようである。

その他には「法哲学」とか「法制史」とか、「国際法」とか「国際私法」も集められており、文字通り法律全般にわたっている。

東大、京大各法学部の教授たちの講義録や論文集なども集められている。珍らしいものとしては岡松参太郎著「註釈民法理由 上・中・下」(有斐閣 明治30刊)があり、代表的なものとしては鳩山秀夫著「民法研究」(岩波書店昭和5・6刊)とか、近藤英吉著「註釈日本民法」(昭和7刊)とか、石坂音四郎著「日本民法」(有斐商 大正4・5刊)がある。なかでも特色のあるものは、民法の起草者である梅謙次郎著の「民法講義」(有斐閣 大正7刊)など数えあげればきりがない。最近のものでは中川善之助、我妻栄のほとんどの著作がそろっている。

その他、各分野にわたって種々の特色のある本があるが、それは今となっては品切本とか、絶版本とかがほとんとで、たいへん貴重なものである。

判例集については、明治二十年代からつい最近までの大審院・最高裁の全判例集がそろっている。

その他判例集では、戦後の高等裁判所判例集、下級裁判所判例集、行政事件判例集、労働事件判例集などが整備されている。

数年前、東大法学部が地方弁護士の活動状況を調査したさい、氏のコレクションをみて「地方でこれだけそろっているのはきわめて珍しい」と評価されたとのことであるが、まことに貴重なコレクションである。

 

 

 


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