教育福島0022号(1977年(S52)07月)-007page

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想的な人生を送れる人を体力があると表現される。

二、行動体力

積極的な体力である走る、跳ぶ、投げる、打突等の単独動作、及びこれらの動作の複合された運動をなしうる能力が考えられる。生理学的表現をすると、「動物性機能」又は「体制機能」と呼ばれる知覚に対する運動器の機能が重要である。行動体力が劣っている場合に、不健康であると判定することは多くの場合正しいが、行動体力が優れていればいるほど健康度が高いということは必ずしも正しくないともいわれている。この主張の根拠は、おう盛な人間の適応力にある。与えられた環境に適応して生きていく人体にあっては、その変化がはげしすぎるために生じる危険のある適応失調の場合を除いては確実に適応できるのである。いいかえれば、環境の変化が生命維持に危険を及ぼさない程度に徐々である場合、結果的には、相当大幅な状態の変動もストレスになったり、生命現象全身の水準低下をおこす可能性がないのである。しかし、事実はそうではなく、運動不足は確実に身体を構成している諸器官の変性、又は機能低下の障害をひきおこしていることは、臨床病理学的・疫学的調査統計によっても立証されている。

動物は動くことによってのみ生きることが保証されている。運動は植物における肥料のようなものである。人間に対する必要運動の量・質・方法は体質その他の条件によって同一ではないが、共通の最小運動量は必要である。肥満傾向が著しい体質の場合、その予防又は治療しようとするためには、多くの運動を負荷しなければならないがこれらの運動をじゅうぶん実施し、かつ翌日にまで疲労が残らない程度の運動能力は絶対に必要である。最終的に行動体力を決定するものは精神力である。骨格系・呼吸循環系を中心とした身体的能力が、目的に向かって有効に発揮されるためには、速さ、強さ、持続時間などをみずからの自由意志によって決定しなければならない。ひたむきな情熱、おう盛な意欲が充実している場合、一見貧弱に見える肉体であってもすばらしい行動を発揮するものである。

三、防衛体力

防衛体力とは肉体が外界の変化に適応する体力である。即ち、ストレスに耐える能力を意味するのである。生理学的表現をすると、「植物生機能」又は「自律生機能」に極めて関係の深いものである。生物がストレスを受けたとき、あまり致命的な変化を受けず、又受けたとしても、速やかに回復するには、恒常性を維持する防衛体力が優れている必要がある。防衛体力は常に活動的な生活を送るためには極めて重要な体力であるといえる。

疾病に対する抵抗力を増大する目的で、だれでも行い得るものに皮膚の鍛練がある。乾布摩擦、冷水摩擦は皮膚の緊張を高め、皮膚血流を増大するとともに、反射的に全身の血管の運動性を高め、二次的に自律神経系、内分泌器官の働きを促進させるのに効果があるといわれている。また、皮膚の日光浴が皮内における化学反応をおこさせて、疾病の予防効果を発揮したりすることについてもほとんど常識となっている。したがって皮膚は、単に清潔に保っておけばよいという消極的な考えではなく、積極的に刺激を与える努力をしなければならないのである。そのほか、身体的防衛力を形成するものとしては、細菌の侵入に対し、直接関与するりんぱ系細胞があり、更に環境変化などがストレスとなる場合には、身体を適応させて、生命全体のバランスを崩さないように働く副腎などの内分泌系も重要である。この防衛体力の増強には精神的な働きについて考察する必要がある。運動特にレクリェーション的スポーツ活動等により、脳の知的な負担過重を積極的に抑制し、休養を与えることによって潜在能力を豊富にさせることが可能である。

四、体力つくりと栄養

基礎代謝量に見合っただけの栄養を摂取していれば、生きることは可能であるといえそうであるが、現実的にはそうはいかない。第一それでは社会活動ができない。そして基礎代謝だけの人間は、ほぼ植物的な人間である。筋肉運動を行わなければ、その委縮退化が極限状態に到達し、ひいては二次的に精神荒廃をおこしてしまうことは明白である。少なくとも人間が人間らしい頭脳の働きを維持するためには、脳の働きを賦活するための骨格筋系を相当水準に保っておかなければならない。筋肉組織の機能を保持するためには、運動刺激が絶対条件であり、その運動をするために必要な熱量、それにともなって放散せざるを得ない熱と、運動に耐える組織を維持するための物質を確保するためには、ばく大な栄養摂取が必要なのである。このように体力つくりと栄養は密接な関係がある。

栄養指導留意事項の第一は、一食事完全食の原則を守ること。毎食事ごとに三大栄養素、ミネラル、ビタミンなどの適量が含まれるように配慮されなければならない。

第二は、継続食の原則である。まれにしか摂食しない食品では、物によって消化、吸収が極度に悪く、食品のもつ栄養分の利用率が非常に低下するので合理的な食習慣の形成が重要である。

第三は、一回量と一日量との関係である。食事回数が少ないものほど耐糖能力が障害され、脂肪沈着を招来する可能性が強い。重点を置くとすれば朝昼食とし、夕食はできるだけ軽減するように努めるべきである。

五、体力つくりと運動刺激

生物を構成している細胞は、適当な

 

 


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