教育福島0022号(1977年(S52)07月)-010page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

走、走り幅とびは全年齢が下回り、それに持久走が男子十三歳と女子十二歳を除く年齢層が劣る。また女子の十歳を除いた斜め懸垂腕屈伸の劣るのが目立つ。

3) 総括

運動生理学的にみて瞬発力・敏しょう性・柔軟性は中学生の年代に最大の発達を示し、筋力とスピードは高校一二年生ころに、持久力は高校三年生ころに著しい発達を示すといわれている。

これらの基本的な原理をふまえて、体力つくりを進めていく中で、スピードの養成については、量より質が重要である。例えば十回の練習を行うため各回の強度を落とすことより、五回以降ができなくなってもよいから、一回一回に全力をかけさせる指導がたいせつである。

すなわち、常に最大の力を集中発揮できるようにすることがポイントである。

持久力については、短距離走とはまったく違った練習をしなければならないが、ランニングそのものの練習に重点をおくべきで量が多ければ多いほどよい。いわゆる、スピードをあげたため二千メートルしか走れなかったというより、少しスピードは落ちたが一万メートル走れた方がよいのである。

筋群では、下たい筋及び足関節周辺の強化を中心におくが、肩帯を中心とした上し筋群も中等度の発達をさせた方がよい。これは呼吸筋の強化にも重要なポイントになることを意味する。ついては体力を構成しているそれぞれの能力を年齢・性別に対応して養成できるように、授業構造を考える必要がある。

これらの指導で忘れてならないのは精神力の養成である。わずかの疲労や苦労でも耐えがたいと感じたり、意欲をなくしたりしたのでは、他の肉体的諸能力がじゅうぶんあったとしても結果的には持久力がないことになる。精神力は絶対的持久力の最後のかぎを握っている。

(3) 体格と背筋力の推移

1) 表3と図1は、本県の児童生徒の体格の伸びに対する、背筋力の関係を限定してまとめたものである。特に体格の諸データーのうち、身長に関連する要素の分析と、スポーツテストの集計による背筋力の分析とを対比し、昭和三十九・四十三・四十七・五十・五十一の各年度について、十、十三、十六歳の三年代を抽出し、図表化・グラフ化したものである。

ア 本県児童生徒の体格の推移

十歳、十三歳、十六歳の身長・座高・脚長(身長引く座高)の伸び(表3)をみると、昭和三十九年度から五十一年度までの十三年間に、男子の十歳は四・六センチ十三歳は六・四センチ、十六歳は四・三センチ伸び、女子の十歳は四・七センチ、十三歳は四・三センチ、十六歳は二・七センチ伸びている。この伸びを座高と脚長に分けてみると図1のとおりで、座高の伸びに対して脚長の伸びがはるかに上回っていることを示している。

伸び盛り、育ち盛りの現代の子供は、めざましい体格の向上を続けており、「脚長の欧米型」とか「かっこよい体格の向上」という表現で、文部省が五十年度に学校保健統計調査の結果を発表したが本県の児童生徒も「脚長の欧米型」に類似し、全国的傾向と同じである。

年代別にその伸びをみると、表3からもわかるように、十代の若い年齢層ほどその伸び率がよい。

他方、現代っ子は「もやしっ子」などといわれているが、本県の児童生徒の現状をみるかぎり、やや細身にはなってきているものの、おおむね普通の体格である。

イ 背筋力の推移

背筋力については、(表3)測定の方法等によって多少の誤差がでてくる検査項目ではあるが、推移の概要はつかむことができる。

これを指数として、身長等と対比したのが図1のグラフである。

男子の十三歳と女子の十歳、十六歳に向上が認められるが、その他はかなりの落ちこみがみられる。

背筋力の低下は、全身の筋群力の良否に相関々係が高いことから、血液循環に深いかかわりのある、ミルキングアクションの機能低下にも発展し、起立性貧血や脊柱変形の事態が発生するおそれがあるので、重要な問題を提起している。

ウ まとめ

以上のような諸事実から、体力の科学的追求により、問題が表面に出されたことになる。できるだけ個人差をなくし、集団の基本的性格を解明するには、統計的技術

 

表3 児童生徒の身長・座高・脚長並びに筋力(背筋力)の推移〈3年代を抽出〉

S.39年度を100として

 

身長

年齢・年度3943475051
10M132.2134.0135.5136.5136.8
指数100101.4102.5103.2103.5
13M149.8152.2153.6155.4156.8
指数100101.6102.5103.7104.1
16M164.3165.7166.6167.2168.5
指数100100.9101.4101.7102.6
10M133.3134.9136.6137.6138.0
指数100101.2102.5103.2103.5
13M148.9150.8151.6153.0153.1
指数100101.3101.9102.7102.8
16M153.5154.8154.7156.1156.2
指数100100.9100.8101.6101.8

 

座高

年齢・年度3943475051
10M72.773.373.674.174.2
指数100100.8101.2101.9102.1
13M81.282.182.183.283.3
指数100101.5101.1102.4102.6
16M89.589.589.389.990.1
指数10010099.8100.4100.8
10M73.673.874.274.774.9
指数100100.3100.8101.4101.8
13M82.283.282.783.583.3
指数100101.3100.7101.5101.3
16M85.185.584.885.185.3
指数100100.599.7100100.2

 

 

 


[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

掲載情報の著作権は情報提供者及び福島県教育委員会に帰属します。