教育福島0022号(1977年(S52)07月)-012page

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一、児童生徒の生活と体力

 

(1) 生活における落ちつき

体力つくりの運動を定着させている学校の特色を集約してみると、児童生徒に落ちつきが出るという現象を挙げることができる。毎日の生活にけじめをつけ、笑うべき時には笑い、汗を流す時には流し、耐えるべきところは耐えるという、健康な生活リズムが体得され、その結果、どの児童生徒も心身ともに自分の力に自信を持ち、希望もわき、生活に落ちつきが出てくるというのである。

このような健やかさを欠き、無気力無感動、無器用な児童生徒が多い現在の傾向を考えると、それをもたらした大きな要因の一つは、運動不足にある。これらのことは体力つくりを実践し、成果をあげている学校の例がよくそれを立証している。

(2) よい姿勢とスタミナ

次の特色は、体力つくりの運動を継続すると、児童生徒の筋力が強化され姿勢がよくなるということである。

そして、貧血で倒れたり、保健室に逃げこむような、スタミナ欠乏症とでもいうべき児童生徒が減少するということである。姿勢をよく保つかどうかということは、筋力、特にこの場合背筋力の強さに関係する。筋肉を強くするためには、運動をする以外にない。そして、全身運動を継続することは、そのまま心肺機能を強化し、よリスタミナをつけることになる。

このような筋力の増強とスタミナの強化は、ともに長期にわたり運動を継続することによって得られるものである。

(3) 教師の認識と行動

このように、体力つくりの運動の効用やその必要性は、教育上はっきりしている。方法もある程度わかっているのにもかかわらず、実践されないのはなぜであろうか。

その一つは、児童生徒のおかれている現状の理解と、体力つくりの必要性について、教師の共通理解が不足しているためと思われる。

もう一つは、教師に時間的なゆとりと、積極性があるかどうかということであろう。学校における体力つくりの運動というのは、教師が先頭に立って運動場に出ることが大事である。

施設がなかったら走るだけでよい。登るだけでもよい。教師がやれば、児童生徒はついてくるものである。そして、やれば体力はつく。大事なことはこれを継続することである。

教師は、とかく消極的になりやすい自分を、児童生徒のためにも動く教師に変え、体力つくりを推進する力となることがたいせつである。

体力つくりの運動を定着させた学校の事例等を収集し、なぜそれが可能であったかを探究してみると、以上の二つのことが集約されてくるのである。

 

二、教科体育の充実

 

小中高校の教科体育の目標を要約すれば、「健康の保持増進と体力の向上について理解し、実践する能力を養う」ことである。そのためにも、内容を精選し、学校の実態、児童生徒の能力、適性に応じた弾力的な指導がたいせつである。

次に、小中高校を一貫した重点指導事項を設定する必要がある。小学校の指導目標は、中学校の指導内容の基本的事項が充足されているのが望ましい。中高校の関係も同じである。

(1) 小学校の体育

運動を適切に行わせることによって「強健な身体を育成し、体力の向上を図る」ことが明示されている。また、各学年の目標においても、体力に関する項目を設け、発達段階に応じたねらいが明示されている。

ここで大事なことは、小学校の児童の発達の特質を考慮し、各学年を通じて「調整力」を養うことに重点をおきさらに第四学年からは「筋力」を、第五学年からは「持久力」を養うことも考慮することとされていることを、よく理解して指導にあたることである。

(2) 中学校の体育

教科目標や体育分野の目標については、小学校の体育の目標と同じく、「体力の向上を図る」ことを明示して、健康の保持増進と体力の向上を強調している。また、目標、内容とも学校や生徒の実態に即した指導計画を作りやすいように示されている。

ここで問題となるのは、体操の具体的な内容のとらえ方や、指導計画の立て方がむずかしいこと、施設の不備等から、格技の充実した指導が容易でないことなどであろう。したがってこれらの問題を解消するくふうと努力が必要である。

(3) 高等学校の体育

保健の内容も考慮しながら、「健康の保持増進と体力の向上」を強調し、さらに「体育」では、「自己の体力に応じて運動を行う能力や態度を養い」、それによって、「心身の健全な発達」と「体力の向上」を図ることが明示されている。また、各運動領域の内容は、特性に基づく基本的なものを精選し、学校や生徒の実態に応じた指導がしやすいようになっている。

ここで特に注意しなければならないのは、選択必修である。男女の特性や個人の能力、適性に応じて選択させるものであり、生がいにわたって運動に親しめるような基礎づくりをしなければならない。また、生徒の能力の多様さに応ずる指導の方法についても、真剣に考えなければならない。

 

◇ 学校体育充実のための重点事項

 

次に本年度の学校体育充実のための重点事項をかかげる。

(次ページの表4を参照して下さい。)

 

 

 


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