教育福島0022号(1977年(S52)07月)-015page
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部活動が、ごく一部の選手養成、競技力向上だけの部活動と同居しているところに、学校教育活動としての部活動のあり方に疑惑をもたれる原因があるように思われる。
(2) 保健体育的行事の運営
1) 学校生活の充実をめざす体育的行事
◇ 学校生活の充実と体育的行事の基本条件
まず、生活の充実につながる体育的行事であるためには、基本的に「運動の楽しさ」「運動の喜び」がじゅうぶん生かされる必要がある。日常生活が精神的緊張にしばられていればいるほど、運動の喜びによる解放感は大きく脱日常的活動としての行事の意義は増大することになる。
現代は、テレビから与えられる受動的娯楽活動をはじめ、各種の手がるな楽しみ方があふれており、児童生徒の興味や関心も多様化しているため、運動の機会を単純に提供することだけで、行事としてのはたらきを発揮できるかという問題がある。そこで、体育的行事全般にわたって、問いなおされてよいように思う。運動の楽しさ、運動の喜びについても、もっと基本的な吟味が求められているようである。すなわち運動の楽しさ、喜びは、「与えられる」というよりは、自らの力で引き出し、つくり出すものという考え方を基本にした、指導法のくふう改善が望まれる。
また、みずからの力をたしかめ、新しい自分を見い出し、その発展充実をめざすためには、運動の行事が、最も適しているように思われる。
特に長距離や遠泳等の行事では、体力・気力を最もきびしく問いかけるのが普通で、ここでは自己との戦いにぎりぎりの線までいどむことになる。この経験を克服することは、人間的成長にとって、計り知れない意味をもつであろう。
このように、体育的行事は、他の教育活動の領域では触れ難い側面を含んでいるが、それだけに、慎重な準備と指導管理が必要である。ここでは、全教師、全児童生徒の共通理解と、一体感が重要な前提条件として要求される。
事故をおそれて、それらの行事を避けようという傾向もみられる今日、もはや学校の英断、勇気、及びそれを裏づける自信がなければ、実践に踏みこめない種類の行事になりつつあることは、大きな問題であろう。
◇ 運動プログラムのタイプからみた各種体育的行事の特徴
運動プログラムの一つのタイプとして挙げられるのは、多くの運動が競争を伴いやすいという性質を積極的に活用したもので、競技プログラムとして仕組まれた行事であるということである。球技をはじめ、各種の運動について行われる校内競技会がこれに該当する。成長期の児童生徒は、一般に競争に対して強い興味や関心をもっているが、特に他の学級や学年との競争になれば一段と闘志をもやし、協同やフェアプレーの精神の養われる中で、勝敗をめぐる貴重な経験を得させることが期待できる。
運動会は、校内競技よりもっと古くから、そして、もっと深く親しまれてきた体育的行事で、学校行事の観点からいえば、最大の規模のものとして扱われてきた。この運動会を、運動プログラムのタイプ論から特徴づけるとすれば、いくつかの性質の運動プログラムから混成される、総合的プログラムだという点である。そのほかに、手がるなレクリエーションプログラムも重視され、運動会のもつ独特の楽しさを特徴づける一つの重要な要素となっている。
また、発表プログラムも重要な要素とされてきた。
これら、各種のプログラムを総合的に編成する際に、どの要素にどの程度のウエイトをおいて編成するかという問題がある。学校による差異、地域社会との関係で生ずるちがいなどを考慮して編成することがたいせつである。いずれにしても運動会は、基本的には学校側の姿勢のあり方によって左右されるが、学校生活の充実をめざす体育的行事の条件を満たすのに、最も、有効な代表的行事であることにちがいはない。
◇ 運営上の諸問題
体育的行事の運営が困難であるという直接的な要因として、運動施設の不足が挙げられることもあり、長距離のような行事になると、交通事情の悪化のために、その場所さえ得られないと言われてきた。また教師の側にも、運動に関する経験・指導力の問題等に悩んだり、勤務条件をめぐる調整に苦慮するなど、いくつかの問題が指摘されている。もちろん、これらの問題は、各関係機関の今後の事態解決の努力によらなければならないものである。
さて、一つ一つの学校における経営努力に目を向けてみると、まず、最も基本的な問題は、運営組織の確立である。それも、単に形を整えればよいというものではなく、特別活動及び、その中の体育的行事の意義に対する教師間の共通理解と、具体的な実践活動に機能する組織の確立がたいせつである。多くの場合は、この過程の成否がすべてを制するとみてもよいであろう。
運営の技術面では、学校教育全体との調和(特に配当時間、教師の負担)目標設定-評価反省の具体化(運営の手順や条件でなく、目標達成についての評価の具体化)、安全対策等に最善をつくすことなどが重視されるべきであろう。
さらに、体育的行事の成果に重要な影響をもたらす要因としては、運動行動のあり方が、ふだんの教科体育や業間運動、クラブ活動でよく学習されていること、主体的な児童生徒の活動が育てられていること、父兄の協力活動を求めることなどを挙げることができる。
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