教育福島0022号(1977年(S52)07月)-041page

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やさしい教育法令解説

 

政治的活動について

 

公務員は、全体の奉仕者として、行政の政治的中立の立場を堅持する必要から、政治的行為が制限されていますが、その趣旨は、公務員の政治的中立性を保障して、行政の公正な運営を確保するとともに、公務員の利益を保護することにあります。

ところで、教員も国民の一人として政治的自由が認められることはもちろんですが、教員は公務員としての身分を有することに加えて、学校教育に従事することのために、教基法をはじめ多くの法律によって、政治的自由について、 一般私人や地方公務員より強い制約が課せられています。これは、教育が人格の完成をめざし、心身ともに健康な国民を育成するために行うものであることから、政治的に中正なものでなければならないという国民的な要請があり、これにこたえて国民の信頼を確保しようとするものです。

教員に対する政治活動の制限には、次のような態様があります。

 

一、学校教育の政治的中立性の確保

 

教基法八条二項は、「法律に定める学校は、特定の政党を支持し、又は反対するための政治教育その他、政治活動をしてはならない。」と規定しています。ここでいう学校は、学校教育活動の主体としての学校自体という意味であり、たんなる施設としての学校が、選挙運動等に利用されることを妨げるものではなく、学校の名において特定の主義・政策を支持し、又は反対する声明を出すことなどが、学校の政治的活動と解されます。

学校の構成員としての教員はどうかといいますと、教員は学校の教育計画に従って教育を行うものですから、学校教育活動の中で党派的政治教育を行うことは、当然禁止されます。

例えば、教員が授業中に特定政党のイデオロギーに基づく教育を行うことはもとより、そのような教育を家庭訪問のさいなどに行うことも禁止されます。

 

二、公立学校教員の政治的活動の制限

 

教特法は、地方公務員である教員に対し、地公法三六条(政治的行為の制限)の規定によらず国公法を適用し、制限に違反した者の処罰については、地公法上の懲戒処分にとどめています。これは教育公務員は、教育を通じて国民全体に奉仕するものであり、教育が国民全体に直接責任をもって行われるもので、 一地方限りの利害に関することではないという認識を前提としているからです。このために、制限の範囲を国立学校の教育公務員と同じにして妥当な限度を越えて政治に介入することを防ぎ、教育が公正に行われるのを保障しようとしています。

国公法は、1)政党又は政治的目的のための寄付金その他の利益を求め、受領すること、2)公選による公職の候補者となること、3)政党・政治的団体の役員や顧問となることなどを禁止しています。

人事院規則では、特定の政治的目的と特定の政治的行為を制限的に列挙しこの目的と行為の連結のある場合のみ禁止の対象としています。政治的目的は、1)公職の選挙で特定候補者を支持又は反対すること、2)特定の内閣を支持又は反対することなど八項目であり政治的行為としては、1)特定政党その他の政治的団体の構成員となるように又はならないよう勧誘運動すること、2)政治的目的のために、職名、職権又はその他の公私の影響力を利用することなど十三項目を挙げています。(教職員の服務及び勤務二七ページ参照)

 

三、公選法による制限

 

公選法は、公務員の地位と教育者の地位に着目して、一定の選挙運動を禁止しています。

主なものとしては、1)地位を利用して候補者の推せんに関与すること、2)地位を利用して投票のあっせん勧誘などの企画に関与すること、3)地位を利用して特定の候補者の後援団体の結成に関与し、その構成員となることを勧誘すること、4)地位を利用して特定候補者を推せん、支持、反対する目的で文書を配布することなどが禁止されます。

なお、中確法は、教基法の精神に基づいて教育を党派的勢力の不当な影響や支配から守り、教育の政治的中立を確保し、教職員の自主性を擁護することを目的とし、特定の政党等の政治的勢力を伸長又は減退させるために、職員団体の組織や活動を利用して、教職員に対し、児童生徒を特定の政党を支持し、又は反対する行動にかり立てるような教育を行うことを教唆・扇動することを禁止しています。

 

(注)教基法 教育基本法

教特法 教育公務員特例法

地公法 地方公務員法

国公法 国家公務員法

公選法 公職選挙法

中確法 義務教育諸学校における教育の政治的中立の確保に関する臨時措置法

 

 

 


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