教育福島0023号(1977年(S52)08月)-008page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

○ どんな職業にも苦労はある。他の職業がよく見えるというが、それはあるよい面だけをいっている。その職業にどんな苦労があるか見抜いていくことが必要である。

○ なぜその職業が存在するのか。現にその職業が存在するということはそれなりの意義があるはずである。

○ 人それぞれには、能力、個性に違いがある。能力、個性にぴったり合った職業につけることは好ましいが皆が能力にぴったりの職業についているとは限らない。

○ 人の能力は、環境やその人の努力によって引き出されてくるものである。職業が人間を変える力をもっている。

○ 職業は生活を左右する。金銭面だけでなく、人間の生き方、考え方の基本的なことから、人間関係などにも影響を与える。

これまで職業観の指導に関して主としてその内容を述べてきたが、次に指導の方法について触れてみよう。

職業観とよばれる価値観自体は、究極的には生徒個人のものであり、生徒の意志によって選択されるものであるから、教師の一方的な押しつけとならないことが必要である。そのため、指導に当たっては、例えば今日の社会の多くの人々が、この価値観をめぐって好ましいとか、好ましくないとしている意見や、生徒の意識調査の結果の資料などを中心として生徒にじゅうぶん話し合いをさせ、好ましい職業観とはどのようなものであるかを深く考えさせることがたいせつである。そして、これらの価値観をそれぞれの生徒が当面している進路の選択や、将来の職業的自己実現の問題と関連させ、これを自分のこととして、いっそう深く考えるようにしていきたい。

 

二、進路指導体制の整備

 

各学校では、進路指導の重要性を認識し、学校教育全体をとおして、また学級指導において進路指導を充実させるための計画を作成し、実施しているが、指導体制では、学級担任や進路指導主事の役割が明確でない場合も見られるので、それぞれの役割について述べ、参考に供したい。

1、進路指導主事の役割

(1) 進路指導主事

「進路指導主事は教諭をもってこれにあてる。校長の監督を受け、生徒の職業選択の指導その他の進路の指導に関する事項をつかさどり、当該事項について、連絡調整及び指導、助言に当たる。」(学校教育法施行規則第五十二条の三)

(2) 進路指導主事の役割

(1)で示されていることから、その役割として、次のようなことがあげられよう。

○ 学校における進路指導の中核として、全校的な協力体制を推進し、進路指導に関する全校の連絡調整に当たる。

○ 進路指導に関する年間指導計画の立案、校内研修等の企画、運営の中核となる。

○ 進路指導において、特に専門的知識や技術を必要とする面の担当者となるとともに、学級担任教師の行う指導を援助する。

○ 生徒理解のための個人資料の収集の企画(観察や諸調査・検査等の企画、実施を含む。)整理、解釈、活用を図る。

○ 進路情報を収集、整理、保管し、その活用を図る。

○ 進路相談室、資料室等の施設、設備の管理や運営に当たるとともに、進路相談に当たる。

○ 職業安定機関、上級学校、事業所をはじめ、校外の関係機関や団体との連絡に当たる。

(中学校・高等学校進路指導の手引〔中学校学級担任編〕文部省)

以上のように、進路指導主事の任務はかなり広く、その内容も多岐にわたっている。生徒指導主事等の生徒指導担当教師や学級担任との役割分担を学校の実情に即して明確にして運営することがたいせつである。

また、三か年を見とおした計画的・継続的な進路指導の企画、運営の中核となり、それぞれの学年の実態に即しながら、系統的・発展的な指導が行われるよう配慮していくことが、役割としてたいせつなことになってこよう。

 

学級担任との進路相談(若松三中)

 

学級担任との進路相談(若松三中)

 

2、学級担任の役割

(1) 学級担任と進路指導

学校における進路指導が適切に行われるためには、特に学級担任教師の熱意と指導力にまつところが多い。したがって、学級担任教師は、進路指導の重要性と、その果たすべき役割をじゅうぶん理解し、学校の指導計画に基づきながら、学級の実態に即して適切な指導計画を作成し、指導方法を改善・くふうするなど積極的に生徒の指導に当たることが望まれる。この場合、進路指導主事と密接な連携を図り、その協力を得て指導の効率を高めるように配慮することが必要である。

進路指導における学級担任の役割を

 

 

 


[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

掲載情報の著作権は情報提供者及び福島県教育委員会に帰属します。