教育福島0023号(1977年(S52)08月)-039page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

たいせつであり、第二に地域の特質を考え、身近なものに対する関心を高め再発見をする喜びも感じとらせる。第三に、造形的な学習に児童が興味と関心をもつように組み立てていくことがたいせつなことであって、教科書を教えるのでなく、それを主たる教材として指導を進めることが再確認された。

実習として、壁飾りの製作を行い、自作の完成品を飾ることの喜びを体得し、作品の合評会を行い、作品の見方感じ方を深めることができた。

(2) 中学校美術講座

工芸の部

〈金属による工芸。厚い金属板を用いての工作〉

教材として金属を取り扱うことは施設設備などから難しいこともあるが、比較的学校で取り組み易く、応用のできる題材として、真ちゅう板を利用しての文鎮兼ペーパーナイフの製作を試みた。

〈木材による工芸。ベニヤ合板による器物の製作(積層による)〉

木材の入手が困難になりつつある折何十人もの生徒が同一条件の必要じゅうぶんな素材を与えることは容易ではない。そのようなとき、立体の形状を得る一つの方法として板材の層を何枚も重ねて接着剤ではり合わせる方法がある。

講座では、ベニア合板をもとに、使う工芸品の製作実習をとおして構想と製作、材料と技法、行為と道具の関係を知り、創造表現の喜びを体験することをねらいとして器物の製作を行い、完成後合評会を持つことにより、今後の生徒指導のための方策をも検討することができた。

彫塑の部

〈彫塑(頭像の制作)〉

彫塑表現の特性、モデルを使っての制作の意味、デッサンの役割、人体骨格と筋肉などについて講義を行い、実際のモデルによる頭像の制作をした。

完成後合評会を持ち、彫塑における評価について考察し、彫塑学習における指導や評価においてたいせつなことは、記憶によるものと写生によるものとの指導のねらいや、指導の進め方のちがいをじゅうぶん研究しておく必要があり指導のねらいをはっきりさせておくことによって、評価も適切となり指導計画のたいせつなことが確認された。

(3) 高等学校美術・工芸講座

〈陶彫(土のオブジェ)〉

前期はオブジェと陶彫の接点を考察し、表現方法として、平板と立体とがあるが、バリエーションを育てるためにも今回は寄せ型による土のオブジェを行った。各自のイメージデッサンをもとに、粘土を使って立体の原理について探求し、石こうによる寄せ型二つ割り方式で、土張り、成型、仕上げと各自のイメージにより、それぞれ独創的な形の主張のある作品ができ上り、じゅうぶん乾燥させたのち後期で焼成完成させることにした。

後期は作品の完全な乾燥がみられたので作品の窯入れ、焼成を行い、平行して石こう型取り法と、じかづけ法による石こうのオブジェの制作を行った。

身近な材料でしかも制作過程での失敗も少なく、構想を豊かにする題材として制作意欲もまし、単純化された形の中に個性的な作品ができた。

また、十六ミリ映画による「創るよろこび」他数本を鑑賞し、芸術というものが、どうすれば生み出されるかの筋道を教えることのたいせつさを痛感させられた。終わりに前期・後期の苦心の完成作品を並べ合評会を行い創造の喜びを味わった。

〈鑑賞指導法〉

鑑賞能力を育成するためには、単に感覚面から対象の印象を享受する受動的な態度だけではなく、客観的な価値の判断ができる能動的な態度の育成をも必要とされることであり、これを別なことばでいえば主観的立場と客観的立場の融合による鑑賞が望ましいことであるとした。

 

美術・工芸講座「土のオブジェ」

 

美術・工芸講座「土のオブジェ」

 

鑑賞の評価は、鑑賞すること自体は生徒個人の精神の内部現象であり、これを客観的に評価することはむずかしいことである。しかし、指導の目標を具体化し、評価の観点を明確にし、それに適した方法を見つけだす努力とくふうが必要とされることの重要性が確認された。

 

おわりに

以上、講座の概略であるが、講師の先生がたの適切な指導助言と、受講の先生がたの熱心な研究態度と制作態度に支えられ、予想以上の成果をあげることができた。

第一日目の講座内容説明のときは、四日間の日程で制作の成果がじゅうぶんあげられるかどうかなどの不安な様子も見うけられたが、講座が始まると休み時間をとるのももどかしい感じの制作意欲で、その日の講座終了後も講義室での継続制作がなされたり、更には宿泊棟における自主研修をされての作品制作であったので、全日程終了後の満足感は、文字どおり創造の喜びそのものであったことであろう。

一人でも多くの先生がたが今後も研修に参加されることを祈って紹介の結びとする。

 

 

 


[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

掲載情報の著作権は情報提供者及び福島県教育委員会に帰属します。