教育福島0024号(1977年(S52)09月)-007page

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一、豊かな表現をさせるために導入段階における発想の指導をいっそう重視する

表現活動を促進するためには、発想が重要なはたらきをすることはいうまでもない。児童生徒が新鮮な感動や興味をもって仕事に取り組めるようにするには、教師の適切な動機づけが必要である。つまり、導入段階の発想指導が重要と考えられる。

(一) 導入段階における発想をたすける手だて

児童生徒の発想を促すための指導法については、固定したものがあるわけではなく、発達段階や教材内容によって方法がくふうされるものである。参考まで二、三の例をあげてみる。

(1) 物語の絵を描かせる場合には、お話の提示のし方、感受のさせ方が特に重要である。お話には次のような要件が満たされることが望ましい。

○ 内容が鮮明であること。

○ 明るいさわやかな内容のものであること。

○ 話の中に絵になる場面が二〜三含まれていること。

○ 話の長さは十分程度であること。

○ イメージを形象化させる方法をとること。

(2) 彫塑表現では、児童生徒が経験したり、感じたり、考えたりした量感を、触覚をとおして直接に感じながら、確かめながら表現していくことがたいせつである。

したがって、表現の対象を見てとらえることだけでなく、触れることによって新たな発見がされる。

(3) デザインや工作をする場合の発想は、見たり、使ったり、作ったりした既有の経験や知識がよりどころになっている。経験を広げるため、児童生徒に資料を収集させたり、導入段階で数多く参考作品を見せたりしながら、そこから得たヒントをもとに新しいものを生み出させていきたい。つまり、模倣から創造へと高めていくことがたいせつである。

(二) 豊かな発想をさせるための主な留意事項

○ 問題点を明確にする。

○ 発想のもとになる既有の経験や知識、参考作品を生かすようにする。

○ 発想するための時間を多くとるようにする。

○ 着想をそのつど記録し、数多く出すようにする。

創造過程が、〈問題--準備(あたため)--啓示(ひらめき)--検証〉としておさえた考え方がある。このうち、発想指導においては、あたため、ひらめきの段階が特にたいせつにされる必要がある。例えば、教師が児童生徒と話し合いをしながら課題を設定しすかさず「あなたはなにを作りたいか」とか、「どんなふうに作りたいか」など発問しているのは、あたため、ひらめきの過程を無視した指導であり、反省しなければならない。問題や課題を事前に提示しておくことが適切な教材もあるから注意したいものである。

また、発想のし方には個人差があることを考慮する必要がある。発想の速度の違い、着想の数や質などについても児童生徒の傾向をは握して指導に当たることがたいせつである。

 

二、表現過程における児童生徒の構想や表現技術のつまずきをとらえ、効果的な個別指導を行う

図画工作科や美術科の授業では、他の教科の授業に比べて個別指導の時間が多い。次の表現活動の性質を理解し効果的な指導助言のくふうが望まれる。

(一) 表現活動の性質

1) 児童生徒が思っていること、考えていることを具体的なもので表す。

2) 思っていること、考えていることがそれぞれ違っているから、一人一人との対話が要求される。

3) 思っていること、考えていること を表す方法が一定でない。

(二) 個別指導上の留意事項

個性の表現とか自己実現といわれている造形活動に対する個別指導を行うに当たって、次のような点に留意する必要がある。

1) 一人一人の児童生徒の造形能力を知る。

大胆な表現をする、細かな表現をする、きちょうめんである、色彩が豊かである、色がにごる、説明的表現がたくみであるなど一人一人の特徴をは握しておく必要がある。

2) 独自の発想を生かすようにする。

教師の指導過剰にならないように注意する。

3) 表現上のくふうや特色を認めて自信をもたせるようにする。

作品内容からだけでなく、児童生徒の考えを話し合いの中でとらえるようにする。

4) 児童生徒のつまずきは、自分自身 で解決できるように援助する。

イメージが明確でないとか、表現方法にこまっている場合には、幅広い助言の中から児童生徒に気づかせたり、選択したりできるようにする。そのためには、参考作品を示したり教師の用意したスケッチブックで技法を演示するなども効果がある。

指導助言は、教師自身の人がらと児童生徒とのふれ合いによって行われるものであり、児童生徒の主体性を高める手だてであると考えられる。

 

三、表現活動の過程における評価を適切に行い、指導に生かすようにする

教科の目標は、各学年のそれぞれの題材において具体化され、実施されるが、学習の評価は、計画、指導の一貫

 

 

 


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