教育福島0024号(1977年(S52)09月)-013page
道 徳
道徳教育のねらいは、道徳的価値に対する理解判断、心情及びその強い意欲に基づいた道徳的態度を形成することである。
今回はこの態度化、実践化の指導に視点をあて考察してみる。
一、総則道徳の充実
道徳については、学校教育全体を通じて行う、道徳教育の基盤の上に立ってこそ、その成果がいっそう高まる。しかし、実際には、道徳の時間の指導が、教育目標(その学校のめざす児童生徒像)とのかかわりや、他教科等との関連が図られていないまま、孤立して行われていることがある。
特に、道徳的実践の指導の場は、他教科や特別活動などの中に計画されていなければならず、この受け皿、具体的な実践の場を、どこに、どう計画すべきか検討してみる必要がある。
教科指導では、学習活動のある場面で、児童生徒を実践的な立場に立たせることも可能であろうし、長期的には学業指導(学習意欲や学習習慣の形成など)として実践の指導が行われている。
また、特別活動では、児童会・生徒会活動、学校行事、学級指導、学級会活動等の中に実践指導の場が考えられる。
少なくとも、以上述べたいろいろの指導計画を策定する場合には、道徳教育の立場から計画を見直し、実践的態度や意欲の形成とのかかわりをチェックし、事後の指導に役立てる配慮だけはしたいものである。
二、道徳の時間の充実
道徳の実践の指導は、道徳性について、計画的・発展的な指導を担う「時間の指導」の充実に求めなければならないと思う。
(一) 指導過程を吟味する。
終末段階における中心資料から離れての価値の一般化、意欲づけの段階を重視して、じゅうぶん時間をとって、一人一人の児童生徒の心に食い入る指導となるよう努める。この段階こそ、それまで追求してきた価値を主体的に受けとめさせ、実践につながる意欲づけをする道徳指導のかぎを握る段階である。
そのためには、中心資料とは別の場面や角度から、しかも児童生徒の生活により接近した資料を取り上げるなどして、実践への構えを実際的にするくふうが必要である。
(二) 児童生徒の生活問題を重視する。
道徳指導の成否は、教師がどれだけ児童生徒の実態を正しく理解し、問題傾向をは握しているかにかかっている。
導入段階でよく取り上げる児童生徒の生活経験や行為を、外面的、表面的な実態のら列にとどめないで、児童生徒の行為それ自身ではなく、そのときどう感じ、どう考えたのかの彼らの内面を取り上げるようにすることがたいせつで、児童生徒の実態を離れた指導では、実践指導の効果は上がらない。
(三) 事前、事後の指導を重視する。
授業でいくら熱心に価値を追求しても、終鈴とともに、いっさいが切れてしまったのでは、態度化は望めないだろうし、人格に根づくことも期待できない。
道徳の時間は週一時間、しかも、同じ内容は年に一度か二度しか指導の機会がない。したがって、教師の指導効果のたしかめ、その修正、再指導、あるいは実践化の見まもりなど、温かいしかも、執念ぶかい継続指導がなければならない理由がここにある。
事前指導としては、前述したように実態のは握がその中心になる。その過程での児童生徒との個別的な話し合いから、教師はもちろん、児童生徒は授業への期待も生まれてくるだろう。
また、事前の予告や、主題に関する学習環境づくりなど、事前の準備が指導の効果を大いに左右することを考えたい。
特別活動
今年度の指導の重点事項のうち、特に改善を図りたいものについて考察し指導上の主な留意事項等を述べる。
一、学級目標達成のため、学級会活動の組織運営にくふうを加え、よりよい人間関係を育成する
教師と児童生徒が一体となって、自分たちの学級をよい学級につくりかえたいという願望と目標をもって努力する過程の中から問題を発見し、学級会の議題が生まれてくる。さらに実践活動をとおして自分の学級に対する愛着や所属感が高められるのである。
係り活動は、学級の全員が学級生活の中で仕事を分担し、自主的に解決、処理する活動である。したがって、組織運営は学級の実態に応じてくふうされなければならない。またそれらの係り活動によって学級生活に関与しているという児童生徒の自覚と意欲が高まれば、よりよい人間関係も育成されることが期待できる。