教育福島0024号(1977年(S52)09月)-015page
児に指導することが望ましいねらいを示したものである。
ねらいは、このような方向に幼児を発達させたいというものなので、これをそのまま幼児に与えるものではなく、また六領域の各事項(ねらい)は、一年保有の五歳児とか、二年保有の五歳児とか、四歳児とか、その年齢や教育期間に関係なく示しているので、指導計画を立てる際には、幼児の成長発達の実態や地域の実状を考慮して、具体化しなければならない。
例えば、絵画製作の「材料や用具の準備やあとかたづけをする」。という指導事項の「あとかたづけ」については、
○先生といっしょに、使ったものをかたづける。
○自分の近くの物を少しかたづける。
○うながされれば使ったものをかたづける。
○進んで自分の使ったものをかたづける。
○みんなで使ったものを友達といっしょにかたづける。
○みんなで使ったものをきちんとかたづける。
などのように具体化することができる。
このようにして具体化したねらいを各年齢に分けて、おさえていくのである。
また、具体化したねらいを達成させるに最も適した活動や経験を選択し、配列しなければならない。
しかし、一つのねらいを達成するためには、いくつかの活動や経験が考えられるので、幼児の興味・欲求、発達の実情や自主的な活動などの点から最も望ましい経験や活動を選択し、指導計画を作成しなければならない。
三、環境の構成に努める
幼児一人一人が生き生きと個性をじゅうぶん発揮しながら活動しているときは、幼児が自主的に活動しているときである。
このようなことから、環境構成で大事なことは、ただ環境としてあるのではなく、刺激となり活動をうながすような環境である。教師が「○○しましょう。」と指示しなくとも、幼児がひとりでに興味をもち、自主的に活動するように設定することである。
ボールを真っすぐにころがしたいときには、ボールを幼児の目につきやすい所に置き、その近くにボーリングのピンのような物を立てておいたり、トンネルを作っておいたりすると、興味のある幼児たちが遊び始め、しだいに他の幼児たちも仲間にはいってくるようになる。しかし、幼児の興味は長つづきしないので、これだけではすぐにあきて他の遊びへと移ってしまう。そこで、ボールがトンネルを通った印としてカードを与えるようにする(幼児の好みそうなきれいな色をつけたり絵をかいたりする)と幼児は、カードほしさのあまりトンネルを通そうと何回もころがす。
このような、楽しい遊びなどの活動をとおして教師のねらいが達成できるようにすることがたいせつである。さまざまな指導のくふうが望まれるところである。
高等学校
理 科
"理科授業のありかたを求めて"
理科における充実した授業とは、どんなものなのだろうか。
生徒の能力・適性の多様化という実態を踏まえて、一人一人の学習の成立を図るためにどのような配慮が要求されるのだろうか。
今こそ、単に「指導理念」の展開のみにとどまらず、具体的に実践を通じての成果が期待される時期だと思うのである。
すべての生徒が、喜びをもち、みずから進んで参加している授業場面に接したとき、教師は、真の意味での満足感に浸ることができるのではないだろうか。
このような成果を求めて、多くの教師が努力しているところであるが、その中から二つの実践の事例を紹介する。
一、個別化を重視するための年間指導計画(生物教材)作成と実践
会津高校 遠藤孝
(一) 年間指導計画について
生物の基本的概念項目については、現在ほぼ定着しているので問題はないが、その配列や、取り上げかたには、教師の教材感、生徒の実態などによって種々の方法が考えられている。
私は、最も一般的に生命をエネルギー変換系として重視し、最初に配列した。
1) 指導項目や内容の選択については生徒の実態や、教師の教材観によってその配列や重点事項など異なるのは当然であって、ここでは細胞を基盤に酵素・光合成・呼吸の四項目に重点をしぼり、物質交代をエネルギー交代の意義と役割の重要性の強調を図った。
2) 目標及び下位目標の設定にあたっては、教師の意図した目標に対して生徒の学習成果がどの程度まで達成されたかを、学習の流れの中で知るために行動目標であらわし、更に下位目標を段階的に1→2→3の順に学習させこれらすべてをマスターした時点で、上位の目標が達成されるというシステムをとり、指導の個別化を図った。
3) 学習形態・方法については種々の条件からいっせい授業を基盤に、特に理科の一般目標である科学の方法を重視し、思考過程を基調に教材に応じた学習方法がとれるよう考慮した。