教育福島0024号(1977年(S52)09月)-025page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

教育委員任命にこたえて

 

佐藤一

 

教育と、民主的な社会教育である成人教育と、青少年教育の充実でありました。

 

敗戦の悪夢より覚めた日本国民は、かつて経験したことのない、冷厳な教育革命の渦の中に投げ込まれました。このような混迷した世情の中にあって新生日本の再建を考えた時、まず第一番目に手をつけなければならないことは、次代を担う者への民主的な徹底した学校教育と、民主的な社会教育である成人教育と、青少年教育の充実でありました。

そして、この混迷の中より新しい教育委員会制度が生まれたわけであります。

この制度は、いまさら申し上げるまでもなく、私たちの子弟の教育や、私たち社会人の教育を私たち自ら行うという民主主義の趣旨に立脚してつくられたものであり、主権者である住民全体の意志をじゅうぶん教育委員会に反映させ、この趣旨に添うように努力するための制度であります。

この制度の中において第一に考えねばならないことは、理想的なりっぱな教育をするため、教育委員は先生と子供の温かい擁護者であるということです。もし教育委員が権力者であったり、利権屋であったら教育はどうなるでしょうか。考えただけでもゾッとします。先生がたが安心して全精力を打ちこんで教育にたずさわることができるよう子供たちが先生に良くなつき、喜んで勉強するよう、常に配意しなければならないと思います。教育委員たる者は謙虚な心構えを持って、温かい血の通った民主的な教育行政を行う覚悟がたいせつであると思います。これがために教職員の厚生施設の拡充、子供たちのための文化的娯楽機関の設置に努力しなければなりません。

第二に、最近新しい教育が研究され着々その効果をおさめておりますが、どうも本当の学力が昔にくらべて落ちているように思われます。もちろん、丸暗記の詰め込み主義には賛成できませんが、すべての事がらを正しく見、また正確に判断のできるような良識を身につけさせる教育が必要と考えております。

このために、

一、教職員のための研修施設の充実

一、教職員の研修意識の高揚

一、子供の勉強に必要な設備の充実

等配慮しなければなりません。

第三に、民主日本に適応した道徳教育の徹底であります。日本は敗戦後混乱時代が続き、非常に道義が退廃し、道徳教育の復活が求められておりましたがもっともなことであります。新しい日本にふさわしい道徳教育の徹底が必要と考えます。これがために、

一、道徳教育の充実

一、学校教育と相まって社会教育の拡充と生活環境の整備

等がたいせつです。

成人教育においても、政治に、経済に文化の面に、成人のための教育を徹底させ、自治体の文化水準を引き上げて行かねばならないと考えます。

青少年教育については、青少年が何を要求しているかということをよく考えて、その要求をみたしてやることができるような施策が必要だと思います。アメリカイズムのはき違いから、男女間の問題が極めてルーズになり、風紀が乱れておりますことは残念ながら認めざるを得ません。純血運動を活発に行わねばならないと思います。

以上申し上げました社会教育の振興を図るためには、成人教育の具体的な指導方針を樹立して、公民館の運動を活発にし、PTA等各種教化団体とも緊密な連絡をとり、この運動を盛んにすることにしたいと思います。もちろん、これらのことを実現するためには市財政とも直接関係していることでもありますので、市当局と議会とも脈絡提携して、これらの実現に努力せねばならないと考えております。

マンネリ化は一番恐ろしいことです。いつも初心にかえることを心して、福島市の教育進展を願い、当面せる教育諸問題の解決に努力すべく、教育委員としてもう一度教育委員会制度の原点に立って、基本的な事がらを振り返って見なければならないと考えております。

 

(福島市教育委員会委員長)

 

 

 


[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

掲載情報の著作権は情報提供者及び福島県教育委員会に帰属します。