教育福島0024号(1977年(S52)09月)-030page
研究実践紹介
表現を豊かにさせる彫塑学習の指導
会津若松市立鶴城小学校教諭 奥庄一
一、研究の趣旨
子供は、元来粘土あそびが好きだといわれているが、彫塑学習での生き生きとした姿を見ていると、そのことがよく理解される。また、彫塑学習における興味調査の結果からもそのことを確認することができる。
しかし、児童の作品の傾向を見ると量感が乏しく、動きが弱い。人物などの表現は、正面から見れば一応その形はできているが側面から見ると偏平であり、量感や動きの弱い作品が多い。
表1の意識調査の結果を見ると、動きについて正しくとらえられていないことがわかる。また、動的なポーズは動きがあり、静的なポーズは動きがないと考えやすい。さらに、表現意欲があり、つくることへの楽しみは感じていてもそれが表現活動に結びつかないのは、部分にとらわれて、全体的に表現しようとする力が弱いからではないかと考えられる。
これらの問題点を解明し、個々の豊かな表現力を高めるための効果的な指導法を見いだじたいと考え、次の仮説を設定した。
二、仮 説
彫塑学習において、構想の段階で立体的な基礎練習をさせれば、表現意欲を刺激し動きのある表現ができる。
三、計 画
(1) 方法 二群法による
(2) 対象 実験群(五の一)四十四名
統制群(五の三)四十五名
(3) 組織、日程(略)
(4) 等質検定
○ 等質検定は前学年における図工の評価によって行う。
○ 図工の評定は五段階、彫塑領域の評定は三段階による。
○ 実験群、統制群ともに上位群、中位群、下位群三名を抽出する。
四、研究の概要と考案
(1) 経過
1) 検証の方法
実験学級と統制学級を設定し、統制学級では構想の段階で、四方面からのクロッキーをさせ、立体表現をするという一般的な授業を行う。
一方、実験学級ではクロッキーのほかに、モールによる立体クロッキーを行い、それぞれの表現経過や作品によってその変容を明らかにし、検証する。
2) 検証授業の計画
ア、題材名「働く人」
イ、題材設定の理由
これまでの児童の作品を見ると、形だけで動きの弱い作品が多く、頭部が大きすぎたり、足が短かすぎたり、安定して立たないなどの傾向が見られる。これは対象を立体的にとらえようとする力や全体と部分の比に対する意識が低いためであり、平面的な構想から、立体的な表現にうつすことに低抗があると考えられる。そこで、立体クロッキーをさせることによって、働いている人の特徴を立体的にとらえさせたいと考えた。
ウ、目標、指導計画、指導過程(略)
エ、評定尺度の設定(表3)
表1 〈"動き"についての意識調査〉
作品A 「集配人」児童作品実物
ア つり合いがとれており動きが感じられる 51% イ どこから見ても立体的で動きがある 15% ウ 細かい表現がしてある 8% エ じっとしているポーズなので動きがない 26%
作品B 「農夫」児童作品実物
ア 消毒する農夫の感じがでており動きが感じられる 46% イ どこから見ても立体的で動きがある 27% ウ 不安定でたおれそうな感じがする 8% エ たっているところなので動きが感じられない 19%
表2 〈等質検定〉
上位群 中位群 下位群 実験群 抽出児 A B C D E F G H I J K L 図工評定 5 5 5 4 3 3 3 3 2 2 1 1 彫塑評定 3 3 3 3 2 2 2 2 1 1 1 1 統制群 抽出児 A' B' C' D' E' F' G' H' I' J' K' L' 図工評定 5 5 5 4 3 3 3 3 2 2 1 1 彫塑評定 3 3 3 3 2 2 2 2 1 1 1 1