教育福島0024号(1977年(S52)09月)-031page
(2) 検証と考察
1) 検証授業の考察
子供たちは対象を部分的につくり表現しようとする傾向が強い。そのため全体のつり合いがとれにくい。
半立体のモールを用いることにより部分にこだわらず、対象を全体的に見る目ができ、つり合いを考えた表現ができる。また、曲げのばしが自由になるので、傾きを考え、動きを追求させながらとらえさせることができたと考える。
さらに、構想の段階でこの基礎練習をさせたことは、対象を平面的な形としてとらえさせるのではなく、立体として感覚的にとらえさせることができた。
2) 変容(上掲表4)
(3) 結論
抽出児が少ないので結論とまではいえないが、二群の比較に表れた変容から次のことがいえよう。
1) 構想の段階で立体クロッキーをさせることは、対象を立体として感覚的にとらえさせることができ、全体と部分とのつり合いや傾きぐあいを考えさせることにより、動きをつかませることができた。
2) 仮説による基礎練習は、上位群には変容が見られず、中位群、下位群に変容が見られた。
上位群に変容が見られないのは空間を意識し、立体的に表現する力が身についているからである。一方、中位群、下位群に変容が見られたのは、モールを用い、自由に曲げのばしして、四方から見て満足のいくまで、傾きを考えさせる過程で動きをとらえさせることができたものと考える。
A-1) 立体クロッキー
A-2) 実験群「ミシンをふむお母さん」
B統制群「ぬいものをする母」
●上段 上位群
●下段 中位群
C-1)
C-2) 実験群「つぼをつくる人」
D統制群「そうじをする人」
五、反省と問題点
(1) 等質検定は前学年の図工科の総合評価と彫塑領域の評価によって行ったが、もっと信頼度を高めるためには造形要素の理解度についても行い、より客観性の高いものにしなければならない。
(2) 基礎練習の指導課程における位置づけや、立体感を高めるための他領域との関連指導については、今後の課題としたい。
表3
〈評定尺度〉
動き A つり合いがとれ働いている人の特徴をよくつかんでいる B つり合いはだいたいとれているが働いている感じが弱い C 動きがほとんど感じられない 立体感 A 体の太さや長さのつり合いがとれ量感がある B 体の太さや長さのつり合いがだいたいとれている C 偏平で量感がない 安定感 A 均衡がとれ安定感がある B 均衡や安定感がやや弱い C 均衡がとれず不安定である
表4
〈作品に表れた変容〉 (数字は人数)
項目 比較群 群 上位群 中位群 下位群 評定 A B C A B C A B C 動 き 実験群 4 0 0 4 0 0 0 3 1 統制群 4 0 0 1 1 2 0 0 4 立体感 実験群 4 0 0 3 1 0 0 3 1 統制群 4 0 0 0 0 4 0 0 4 安定感 実験群 4 0 0 3 1 0 0 3 1 統制群 4 0 0 1 3 0 0 0 4
〈態度に表れた変容〉
項目 比較群 群 上位群 中位群 下位群 評定 A B C A B C A B C 計画性 実験群 4 0 0 2 2 0 0 3 1 統制群 4 0 0 1 1 2 0 0 4 積極性 実験群 4 0 0 3 1 0 0 4 0 統制群 4 0 0 1 1 2 0 1 3