教育福島0026号(1977年(S52)11月)-035page

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四、登校拒否症の増加

(1) 年度別・学校種別の来談者実件数

教育センターへの来談者のみでも、年々増加している現況から、来談になかなかこられない地区を考えれば、県下では、相当数いることが推測される。

(2) 長欠者の分類及び早期発見のポイント

(福島県教育センター所報第三十二号二十二〜二十三ページを参照のこと。)

(3) 指導のあり方

1) 欠席が目立ってきたら、全教職員の協力を得て、正しい情報をできるだけ多く集め、分析検討する。

○ 家庭環境、本人の生育歴(特に両親の養育態度)

○ 友人関係(範囲、交友の深まり、質、友人の評価)

2) 管理職著の中には、とかく、管理的な発想が主で、指導面が弱く、出席を督励するあまり、子供を恐怖におとしいれている事例も見られるので、相談的に対処することが望ましい。

3) いずれの型の長欠なのか、早急には握することに努め、家庭の無理解がある場合は、親との面接を数多く行い、親の養育態度の改善に努める。また、相当重症と判断される場合は、専門機関を紹介し、専門機関と協力しながら、子供の心理的成長(自我の強化)を援助することが必要である。

 

五、チックのある子

(1) 症状

不随意運動の一つで、自分の意志ではコントロールできない身体の動きであり、ふつう、身体の一部にかなり早い動きとして現われてくる。

例えば、顔をしかめる、回をゆがめる、首を振る、思わず声を出す、まばたきの回数が異常、手を振る、肩をすくめる、急にとび上がる等で、数えはじめたらきりがない。むしろ、具体的な動作そのものは、一人一人少しずつ違っているといってもよい。

(2) 原因

まれには、脳のはっきりした障害、特に脳炎の後遺症として起こってくることがあるが、その大部分は、心理的な原因によるものと考えられている。

一般に、動きが活発で、おちつかない、エネルギーの多い子供にチックが起こることが少なくない。こうしたエネルギーの発散が、家での厳しいしつけにより妨げられているとき、厳しいというよりは過保護に大事にされるあまり、危いからと行動が抑えられてしまうときに、親への不満の現われの一つとしてチックが起こってくるのだとされている。

(3) 治療

チックをひき起こすもととなった心理的な原因の排除が必要である。

子供に対しては、遊戯療法として遊びの場面での働きかけにより、子供自身がもっている不安や緊張、それに親やまわりの人への敵意や不満の解消を図るなどの治療が効果をあげている。また、自律訓練法をすることにより、リラックスを図ることや行動療法の治療も併用している。

チックは厳格な父親、きわめて潔癖な母親などに養育された子供に多い事例から家族に対しては、チック症状そのものをしかったり、それに注意を向けたりしないようにすることを指導している。もし、親自身がチックをあまり気にしないようになれば、子供に蓄積された情緒的圧迫から解放されて、症状の改善が期待できる。

なお、こうした治療、指導は、親だけでは必ずしもじゅうぶんではない。学校に行っている子供の場合は、学校の先生や接する友達にも、本人のチックへの関心を低めさせ、からかったり、やめさせるようにしたりする働きかけをしないようにすることがたいせつである。

 

六、ケースを顧みて

相談の概要で述べたように、来談者数は急上昇しているが、種々のケースを扱って感じられることは、家庭における現代的なゆがんだ価値感への変容であろう。

その一つは、母子間の心理的距離が近すぎて、密着化されているということである。家庭生活の合理化・スピード化により、余暇のありすぎる母親はとかく完全主義に傾き易く、したがって過保護、過干渉かつ拒否的に陥り易い傾向がみられる。

二つめは、元来、父親は理性や社会的しつけの面で家族に対し、強い影響力を持つものであり、しつけは親から膚を通して浸透されていくべきであると考えられるのに、父親が家庭の中で、家族の精神的支柱になっていないために、子供の自己適応・社会適応を含めた、人格形成に重要な役割を果たしていないことが多いということである。

 

表3 学校における代表的問題行動の類型

素因知能面学習態度面性格面精神神経面身体面
反社会面非社会面
問題行動○精神薄弱
○学業不振
○優秀児
○その他
○学習意欲がない
○注意散漫
〇学科の好嫌や偏り
○学習態度や習慣に問題がある。
○その他
○暴力
○反抗心が強い
○邪魔する
○ボス
○規則を守らない
○うそつき
○盗み
○性的非行
○家出・放浪
○ずる休み
○その他
○依頼心が強い
○無口・無表情
○友達と遊べない
○内気
○泣き虫
○かげ日なたがある
○なやみ
○その他
○神経症
○どもり
○チック
○夜尿・遺尿
○ぜん息
○爪かみ
○指しゃぶり
○その他
○し体不自由
○虚弱
○盲ろう
○難聴
○弱視
○言語障害
○その他

 

表4 年度別来談者件数

年度
学校
474849505152
小学校2248141
中学校04681815
高等学校13971215
3919234431

(注)52年度は7月末現在の集計である。

 

 

 


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