教育福島0026号(1977年(S52)11月)-040page

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福島の文化財

 

県指定重要文化財(工芸品)

銅製御正体

いわき市平大学豊間下之内100 諏訪神社

 

諏訪神社の銅製御正体

 

諏訪神社の銅製御正体

 

諏訪(すわ)神社宝前にかけられた御正体(みしょうたい)で鋳銅製、径二二・五センチの鏡板に坐像の諏訪社本地仏を鋳出し、上部に二つの環座がある。鏡板には外周と内周に二条の重圏があって銘帯を形成し、上下左右の四か所に三箇の珠文を鋳出する。中央に、蓮台に結跏趺坐(けっかふさ)の仏像がある。像は稚拙で五仏を刻んだのであろう宝冠をつけ、合掌に宝珠をささえる四手が表現されている。諏訪社の本地普賢菩薩(ふけんぼさつ)を鋳(い)たのであろう。像の左に花をさした花瓶がある。銘文は裏面に刻まれ次のように判読される。

奉懸奥州岩城之郡豊間之

取訪大明神御宝前御正琳躰

大旦那志賀右衛門尉

助力之旦那

遠藤三郎兵衛

塩家

本願大峯大夫新伊守久吉

小大夫 吉廣

大工 重吉

永録九年◆十二月十三日

取は諏、新は紀の誤記であろう。作者の大工重吉は、重美認定の玉川村須釜都々古別神社の御正体に見える「天正十年壬午岩城大工長山対馬守重吉造之」今は失なわれたがいわき市、飯野八幡宮の銅鐘銘「天文廿年◆十二月十六日鋳工対馬守重蔵」と同一人か父子であろう。

本願の大峯大夫(たいほうたゆう)というのは、吉野二峯に参寵(ろう)した修験の徒と思われる。

 

 

 


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