教育福島0027号(1977年(S52)12月)-024page
特集
-座談会-
個性を伸ばす教育の推進を
教育事情等懇談会を開催
県教育委員会では、今後の本県教育行政を推進するに当たり、文部省教育モニターの代表のかたがたから意見を聞いて行政施策に反映させるため、文部省と共催のもとに、十一月十一日、郡山市立中央公民館において、「教育事情等懇談会」を開催いたしました。
会議は、教育長のあいさつのあと、佐藤総務課長の司会により、次のテーマについて御意見を承りました。
一、福島県の教育に望む
(1)学校教育について
(2)社会教育について
二、大学入試の改善に望む
なお、御出席のかたがたは次のとおりです。(モニター番号順・敬称略)
郡山女子大学副学長 関口正
福島民友新聞社取締役県南担当
(兼)郡山支社長 伊藤二郎
福島大学教育学部教授
(併)附属中学校長 鈴木勝衛
福島民報社郡山支社長 佐藤謙寿
マルキ自動車株式会社代表取締役 渡辺信雄
福島大学教育学部教援 新田勝彦
福島県教育庁教育次長 小畠哲
同 総務課長 佐藤昌志
同 義務教育課長 塙保貞
同 高等学校教育課長代理
同 小松原格
同 社会教育課長佐藤利三郎
総務課主幹 若杉栄
同 県中教育事務所長 添田信一
その他教育庁事務担当者
次に懇談会の概要を掲載いたします。
福島県の教育に望む
(1)学校教育について
司会 最初に学校教育について御意見を承りたいと存じますが、これは内容が広範囲にわたりますので、話し合いの糸口として、学校教育全般について日ごろお考えになっている点からお伺いいたします。
関口 最近高校教育において“学校の味”というものが乏しくなってきたのではなかろうか。例えば、今までの学校は、校訓とか建学の精神とかが受け継がれ、守り育てられてきたが、最近画一的な形での教育が進められてきた結果、学校自体が“学校の味づくり”をしなくなったし、また“地域に密着した生徒の育成”をがなされなくなってきた。このことが現在の学校教育において、根本的な問題ではなかろうか。
渡辺 小・中・高等学校とPTA会長を長い期間にわたって務めてきたが、その中で感じたことは“個性がなくなってきた”ということである。例えば宿題、塾通いというように、小さいうちから金しばり的になっており、のびのびした個性というものが感じられなくなったことは、学校教育の大きな問題であると思う。
伊藤 “味”というものが、どういうところから生まれてくるのかということを考えてみたい。結論的には、教師と子供の人間関係から生まれてくるのではなかろうか。
例えば、子供が疑問や問題点を持ちそれに対して教師が、責任を持って解決してやらねばならない立場にあるわけだが、教育委員会の指示命令に従わなければならないということで、教師自身にも個性がなくなり、そのことも影響しているのではないだろうか。
また、親にも責任がある。即ち、親もいっしょに勉強していかなければならないのに、同じテーマについて話し合う機会を作ろうとしない。そのうえ授業が優秀児を中心に進められ、成績のよくない子供が置き去りにされるなど、子供の個性を生かした教育とはいえない。一人一人の先生がたが、一人一人の子供をたいせつにし、実態に即した指導を進めていけば、一人一人の個性を生かすことになり、必然的に“味”がでてくるのではないか。
鈴木 “味”の問題もさることながら現在の教育をめぐる問題には、非行や自殺等も重要な問題であり、それらの問題の原因は、単一の理由からではないように思われる。例えば、教師のあり方、現在の社会生活の問題などが、統合された形で起こっている。一つだけを取り上げても問題は解決されないし父兄の認識・意識も関連してくる問題である。“味”の問題、人間的ふれあいなどを解決するには、総合的に考察してみる必要があるのではないか。