教育福島0027号(1977年(S52)12月)-027page

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やろうかということが、大学の受験で今までの考えと方向が変わってくる。受験科目そのものに問題があるように思う。大学を選ぶのか科目を選ぶのかという大学入試の問題がある。受験科目を大いに広げ、入試のときだけはもっと門戸を広げ、大学に入ってから専門分野に分かれるようにしてはどうか。

子供の将来の進路に合った大学の選択ができるよう考えていただきたい。

司会 国立文科、理科、私立文科、理科と分かれ、それぞれ選択科目が違っている。自分の選択科目の取り方について、高校の段階で教師と父兄とがよく相談をして考えていく必要があります。

伊藤 共通試験によって、国立の入試が一回だけになり、私立大学の入試とふたまたをかけるということから、国立も私立もむずかしくなるものと思う。更に六月下旬にはその方針をきめなくてはならない。そうすると高校の二学期ごろまでには、三学期までの内容を終わってしまわなければならない。

今までは、十二月までに決めればよかったのが今度は大部早く決めなければならない。それでは、高校三年の満足な授業ができないのではないかという問題がある。

司会 現在、国大協側と高校長会側とは意見が分かれておりますが、いずれ調整がつくと思います。

伊藤 一番困るのは今年の浪人組ですね。

佐藤 大学入試がそのような形で行われるということは、高校がますます予備校化していくことになるのではないかと思う。したがって中学校も予備校化し、“ゆとりある教育”などできないのではないか。むしろ、“ゆとりある教育”を実現しようとするなら、下からの改革にもっていくべきだと思う。

この話に妥協して共通一次試験をどうするかということになれば、十二月とか一月にやるんではなく、授業が全部終わった段階で実施すべきでないかと思う。

伊藤 共通一次試験のよさは、今までのように運・不運で落ちる生徒がだいぶ救われるということではないかと思う。そういう点ではいいんではないか。

司会 足切りの問題もありますね。

伊藤 東大は足切りをやるといっている。四十四校はやるということだが−。

高校教育課長(代) 福島県高校長協会の普通高校長部会として、保原島校長から入試センターの加藤所長に意見書を提出してあります。その内容の一つは、実施時期が問題であること。高校のカリキュラムが消化されないことになるのではないかということ。更に一次試験が終わったあと、各大学で二次テストをやるわけですが、二次テストで約三科目実施するということになれば、負担軽減、高校教育の正常化をめざした国大協のテストが、ますます高校教育をゆがめることになるのではないかということ。もう一つは足切りの問題ですが、約五十三パーセントとかなりの大学で行うということで、高校サイドとしては、この成り行きについて心配をしているところです。

司会 御意見のように、私立大学の入試がむずかしくなるのではないかということも考えられます。

新田 私どもの善意がそれほど端的に高校生に反映していないというは残念であるが、大学の学部ごとに見れば、少しは受ける方の立場を考えて行っている。

教育系の大学などは、負担を軽減しようとして、例えば、実技教科は試験をしないとか、推薦制を加味しようとか、教育学部についてはあまり問題はないように思う。実施時期についてはいろいろ言われているが、三月までに至らない範囲内における共通テストになると思う。時期の早い遅いはあまり問題にならないのではないか。ただ、入試のもたらす有形・無形の弊害の解消には、あまりならないのではないかということが実感として残る。

一番悪いのは東大ですよ。今までと変わりないことをやるというのだから。

司会 終了の時刻になりましたので、御協力に感謝を申し上げますとともに小畠次長から御礼のごあいさつを申し上げます。

教育次長 先生がたから貴重な提言をいただきましてありがとうございました。

ここで二、三気のついたことを申し上げたいと思います。

一つは現在、学校現場等できくわけですが、管理面がきびしいのではないか、教師はそれにしばられて自主的にできないのではないかということです。

県教育委員会としては、学習指導要領一つを取り上げましても、それは基準的なものであり、法的拘束性を持つにしても、その中に書かれてあるものを前提として、学校の教師の自主的なまた、地域の実情に即応した形で取り組んでいただきたい。教師の自主性を大前提として尊重するということでございます。

我々としては、先生がたに地域に密着した、しかも子供の成長に役立つものにするために、先生がたに本当の自主的活動を期待しているわけであります。

現在の社会情勢からいうと、ゆとりのある時間は補習にまわせなどということになれば、なんのために“ゆとりのある時間”をとって、先生と子供のふれ合いをたいせつにしていこうとするのかという、最初の意図と全く違うものになってしまいます。

もう一つは、先ほどありました大学入試の改善の問題でありますが、現在の大学には森ら万象について研究する機関はあっても、大学そのものを研究する機関がないということであります。

大学の先生を前にして失礼ではありますが、一般論としてお聞きいただきたいわけですが、大学は大学そのものをもっと研究してもらってもよいのではないかと思います。個々の大学が、大学入試等について突っ込んで研究していただけるならばと考えております。

遅くまでありがとうございました。

厚く御礼を申し上げます。

 

 

 


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