教育福島0027号(1977年(S52)12月)-039page

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講義「特別活動の意義と目標」(千葉大坂本教授)

 

講義「特別活動の意義と目標」(千葉大坂本教授)

 

(三時間配当・講義)

3) 生徒活動の指導のすすめ方

(三時間配当・講義→協議)

4) 学級指導と学校行事の指導の進め方

(三時間配当・講義→協議)

5) 特別活動の指導の現状と諸問題

(三時間配当・講義→演習)

6) 特別活動の評価

(三時間配当・講義)

 

三、特別活動の指導の充実をめざして

 

特別活動の総括目標の特徴は、「望ましい集団活動を通して」ということを基本的な方法として、「人格(心身)の調和のとれた発達を図る」という究極目標を達成しようとするところにある。

そこで、特別活動の指導の充実を図るためには、

(1) 学校における「集団」とはどのような性格をもつものであるか。

(2) 「望ましい集団活動」とはどのようなもので、どのようにして育成されるものなのか。

(3) 「人格」とはどのようにとらえることができ、どのような構造をもつものであるか。

(4) 望ましい集団活動は、「人格の調和のとれた発達を図る」ことにどのように貢献するものなのか。

 

「特別活動の指導の現状と諸問題」の演習風景

 

「特別活動の指導の現状と諸問題」の演習風景

 

(5) 特別活動の指導は、人格の構造のどの領域に注目し、どのように働きかけるべきなのか。

などについて明らかにしなければならない。特別活動の研修においては、こうした点を基礎理論として明らかにするとともに、「やるべきこと(知識・理解)」も「やり方(技能)」も身についているのに、「やる気(態度・習慣)」とがないという児童生徒に対する指導をどうすべきかについて、人格の調和のとれた発達を図るという立場から、特別活動の内容の特質に応じて明らかにしようと意図している。

教師の人格も児童生徒の人格も、それぞれかけがえのない独自性をもつとともに、個性という唯一性をもつものであるという認識に立って、教師と児童生徒の親和的な人間関係を育てあげることが、特別活動の指導においては特に肝要である。人格が思考と行動の独自性と一貫性にあるとされている以上、客観的にとらえられる行動こそは個人理解を進めるための重要な視点となる。そしてまたその行動は、その行動がとられた「状況」のもとで適、不適を評価されなければならない。

自他の尊厳を損なわないという確信に裏づけられた、真の自由意志によって選択された行動こそが、児童生徒の人格の感情的領域から発した「やる気」を伴った行動になることも忘れてはならない。したがって、特別活動のそれぞれの内容において、その指導の効果を決定する決め手は、「行動の選択場面の設定」をいかにするかということにかかっているといえよう。

自発的、自主的活動を通して育てようとする個人の自主性と、自発的、自治的活動を通して育てようとする集団の自主性(協同性)は、それぞれの教師による「援助(児童生徒の行動の受容と支持)・指導(発達課題をふまえたうえでの個人理解と集団理解に基づく指導助言)」の時期と機会にかかわる「適時性」と、その方向と内容にかかわる「適切性」にかかっていることにも留意しなければならない。

 

四、終わりに

 

望ましい集団活動(自主的活動と実践活動の方向性と性格をもつ集団活動)を目指す活動を進めさせながら、心理集団(相互の個性尊重と相互の個性理解に基づく社会的相互作用のある集団)としての成熟を図るためには、児童生徒が「ともに学ぶ」よろこびをそれぞれの具体的な行動を通して感じとるようにさせなければならない。

生きている児童生徒を真の意味で生き生きとさせるためには、児童生徒の心理をひらかれたものとする教師の努力と温かい目が必要である。今後も、特別活動講座の改善充実に務め、講座そのものを生き生きとさせて行きたい。

 

 

 


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