教育福島0028号(1978年(S53)01月)-012page
特選・実践記録
数学科において、指導内容の重点化と教材の精選を図り、指導法の改善を通じて、基礎的・基本的内容の定着化を図るにはどのようにすればよいか
会津若松市立謹教小学校教諭 山ノ内ワグリ
一、実践の趣旨
数学科は積み重ねの教科で、前提条件が満たされていなければ、どんなに学習意欲が高まっていても、確かな学力を身につけることは期待できない。
過去五年間の中学校の新入生数学の学力が、国語、社会、理科の三教科と比べて低い実態や、指導法の反省等から、わかる数学を志向し、指導力並びに学力の向上を図るために、次のような仮説をたてて実践した。
「学習指導要領での基礎的知識・技能の分析と年間指導計画の検討によって指導内容を重点化して教材の精選を図り、予習的課題を導入展開時に位置づけ、終末時に確かめ、プリントによって学習状況を反省させれば、基礎的・基本的内容を身につけさせることができる。」
二、実践の内容
(一) 方法
1) 実践記録の累積を中心とし、従来の個人の研究で有効であったことがらを生かす。
2) 継続可能なものを取りあげ、中教研・校内と市教委の研究との接点をみつける。
3) アンサーリサーチを主とし、検証では実験群(担当学級)と非実験群(非担当学級)による二群法的手法も取り入れる。
ア 校内いっせい放送による「授業についてのアンケート調査」の分析結果から、仮説の是非と改善点をみつける。
イ 自作アンケート調査の分析結果から、学習予定表、予習的課題、確かめプリント、板書、指名の是非と改善点をみつける。
ウ 教研式数学科標準学力診断テストの結果から定着のようすをみる。
(二) 内容
1) 基礎的知識・技能に視点をおいた指導内容の重点化と教材の精選を図るために、
ア 生徒の学力・学校の実授業時数教科書、学習指導要領、公立高校入試問題等の実態を調べる。
イ 学習指導要領と教科書を検討・分析する。
ウ 現実的な実授業時数をふまえて単元及び一単位時間ごとの指導内容を明確にした年間指導計画を作る。
エ 教材についての見方を確かなものにする。
ア) 教材を類別してみる。
イ) 類推の考えを整理してみる。
ウ) あることがらを別な観点でみなおす。
2) 指導法の改善を図るために、
ア 授業の累積記録によって反省し改善点をみつける。
ア) 授業の進め方の基本型をつくる。
イ) 一単位時間の授業目標にせまる、基礎的内容に重点をおいた予習的課題、例題のあり方を検討する。
ウ) 教材別の指導のあり方を検討する。
エ) 指導過程でのくふうのしかたを考える。
イ 授業への興味・関心を持たせるための内的報酬の与え方を考える。
3) 基礎的・基本的内容の定着化を図るために、
ア 毎時の確かめプリントのあり方を考える。
イ 誤りやすい用語、記号、考えをみつける。
ウ 誤答の類型をまとめる。
エ 数学科でいう「答え」の意味と型を分析する。
オ テストの処理のあり方を模索する。
4) 各種のアンケート、卒業生の学力の推移から考察、変容を分析し、今後の問題点をつかむ。
(三) 概要と考察
(一)〜(二)内容・方法の中から、次の二つを例として取り上げ示すことにする。「例1」年間指導計画(学習予定表)
広域(基底)カリキュラムの現状は内容・時数ともほとんど教師用指導書通りで、前提、小単元、大単元等の評価のための時数が計上されていない。
実授業時数の確保が、標準時数の約八五パーセント程度である現実を考えても、年間指導計画を通した指導内容の重点化は絶対条件となるだろう。重点化された指導内容は学習課題として一単位時間ごとに、一〜二程度位置づけていく。生徒には、学習予定表として大単元ごとに印刷配布し、毎時の授業に生かしていく。
年間指導計画(学習予定表)についてのアンケートから(自作)
(注)五十一年度第二学年実験群五クラス実施)
○「あった方がよい。」と答えた生徒は九四・九パーセントで、上位生徒では「き帳面になれる。」「中心がわかる。」「テストまでの計画がたてられ計画的に学習できる。」「学習のすじがわかる。中位では「学習の範囲がわかって予習しやすい。」「見通しがたちやる気が出るい「計画をたてやす