教育福島0028号(1978年(S53)01月)-023page

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図書館コーナー

 

市民の期待に対応できる図書館づくり

第25回福島県図書館大会から

 

去る十月二十八〜二十九日、いわき市において第二十五回福島県図書館大会が開かれた。昭和二十八年福島市において第一回大会が開かれて以来、実に四半世紀にわたるもので、この歩みは即本県図書館活動の足跡でもあったということができる。今回は「市民の期待に対応できる図書館づくりを考えよう」のテーマのもとに、講演、事例発表、分科会等をもったが、県下各地からの関係者を交えて約二百二十名の参加者があり、県下の図書館の不振をいかにして打開し、発展させてゆくかをめぐって、熱心な発表、討議がなされた。以下印象に残ったいくつかの点について紹介する。

 

第25回福島県図書館大会(いわき市)

 

第25回福島県図書館大会(いわき市)

 

〈講演〉

「現代社会と図書館」と題してお茶の水女子大学助教授小川剛師の講演は、現代社会は第一次産業から第二次産業へ…農村中心の社会から都市中心への変化であり、しかもこの変化が非常に急速なテンポで行われ、この変化に対応して生きていくには、常に新しい学習が必要であり、ここに生がい教育がどうあらねばならないかを、1)変化の中で生きてゆくことの力量、2)主体的に生きてゆく力量、3)創造的に生きてゆく力量を身につけることと説き、このような観点から、図書館としては、多様な内容のものを、確実性をもって容易に利用できるという点で、図書館が生がい教育の最も有力な機関として位置づけられるとし、「図書館白書」による東京都下あるいは北海道置戸町の図書館活動の例をあげて、その目ざましい活動の要因は、住民の声にその出発点があり、特に住民による着実な文庫活動は理事者の図書館に対する認識を大きく前進させたことにある。日本でもこのパターンが定着してきており、やろうとすればどこでもできることであると力説、図書館関係者、利用者それぞれに、図書館発展の指針を示してくれたものとして大きな感銘を与えた。

 

〈事例発表〉

1) 市立図書館における図書館奉仕の現状と問題点 喜多方市立図書館 田中喜美子氏

2) 公民館における読書活動の現状と問題点 田島町公民館 星徳夫氏

3) 子供の読書と図書館 矢吹町サークルのら 大橋幸雄氏

4) 地域文庫を実施して いわき市なかよし文庫 小貫ツル氏

の四氏がそれぞれの貴重な体験を発表。田島の星氏は、文部省事業としての「母と子の読書活動促進事業」を実施するに先だち、司書資格取得に三年かけて講習に参加したなど、職務に対する取り組み姿勢には頭が下がるものがあった。サークルのらの大橋氏たちは男女青年層が主体となり、特に子供たちに対する文庫活動に取り組んでいるもので、若い人たちのこうした活動に大いに期待したいものである。

なかよし文庫は子を持つ母親の集まりであるが、すでに子供が大きくなっても、他の子供たちのためにこうした活動をやらずにはいられないという切実なうったえには、図書館充実の願いがこめられて参加者の共感をさそった。

 

〈分科会〉

講演・発表の熱心さに討議の時間が短縮されはしたが、特に各館の協議会委員の参加が多く、一分科会として独立し、各館の会運営についての意見の交換、更に意見を述べるだけでなく、県内の委員の力を結集して、図書館発展の方途を探ろうではないかというように、今後の活動の方向を見い出したことは大きな収穫であった。

 

〈終わりに〉

ぶりかえって見ると、毎年取り上げられたテーマは、「福島市に市立図書館を」などはすでに二十五年前に取り上げられていたことであるが、それがようやく今日、日の目を見るに至っている。図書館の歩みは牛歩そのものであるかも知れない。しかし郡山市における″図書館を発展させる会″など、各地の住民の声が図書館活動に反映されてきている現状、町村においても″図書館を″という声をちらほら聞かれるようになったことは、こうした毎年の積み重ねがあったればこそである。「図書館は住民のために」の原点に立って、我々は明日への努力をしていきたい。

 

 

 


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