教育福島0030号(1978年(S53)04月)-030page

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思われるものをあげてみる。

1)ねらいを達成するために、最も適切な経験や活動を選択するよういっそうの努力と研究に努める。

指導計画を作成して指導の効果をあげるためには、最も望ましい経験や活動を選択し配列しなければならない。望ましい経験や活動とは、幼児が興味・関心をもって喜んで取り組み、幼児の欲求を満足させながら目的を達成されるものである。従って

○幼児が今、どんなことに興味・関心をもっているか知る。

○心身の発達の程度をは握する。

○いろいろな経験や活動についてそれぞれの特質や教育的な意義を明らかにする。

○ぜひさせたい経験や活動については興味のある材料の提示、適切な助言等、その指導法をくふうし興味をもたせるようにする。

2)正しい幼児理解に努める。一人一人の幼児をたいせつにし、幼児の望ましい人格形成を目指す保育を行うためには、次のような適切な幼児理解が必要である。

○個々の幼児の生育歴や家庭・地域の環境及び毎日の生活の状況などを通して幼児を理解する。

○子供の立場から幼児の心の動きを理解する。例えば、教師が「集まりましょう。」と言う指示をしたとき、幼児が指示どおり動かない場合について考えてみると、

ア、指示が聞こえない。

聞こえたかどうかを確かめる。

イ、指示に従うのが嫌い。

集まることがいやなのか。言うことが聞こえないのか判断する。

ウ、遊びに夢中であって、指示に従わない。

「集まる」行動より、今、自分の遊んでいる遊びに夢中で集まれないのではないか。

この三つの場合を、行動面からのみ判断して「指示どおり動かない」と理解するのではなく、集まれなかった理由を考え、みずからの反省の資料にするとともに、感情面から理解していくことがたいせつである。

3)知的好奇心をもたせるための場と機会を適切にとらえ、助言や賞賛のしかたを研究する。

幼児はまわりの事物に興味をもちさわる、つかむ、動かすなどをしたり「なぜ」と質問したりすることが多い。教師もともに考えたり、気づいたことをほめたりして、幼児の探索力を伸ばしてやるようにする。

配慮すべき点として、

○幼児の思考は自己中心的であり物の一面しか見られない傾向がある。他の幼児と考えたり、話し合ったりすることによって、他の面にも気づくようにする。

○教師自身が常に思考する態度をもち、機会あるごとに、幼児に疑問を投げかけ、考えさせる。

○疑問を解決するためには、自分で考えたり、試したり、調べたりする態度をもたせる。

4)自由遊び(幼児みずから選んで行う経験や活動)の指導に当たっては、どのような配慮やくふうが必要か研究する。

自由遊びが尊重されるのは、自主的な態度、熱中する態度、友達との協力などの諸能力を養成するのに適切な機会となるからである。

従って、自由だから自由に遊ばせておけばいいと教師が指導せず見ているこどではなく、教師の手によって遊びを誘発し、これを発展させるような興味のある環境を設定する。

○幼児の自発性を尊重する。自発的に取り組める環境の設定、教師の働きかけをくふうする。

○教師の計画で引っぱっていくのではなく、あくまでも幼児中心の形をとる。

○幼児の興味や欲求と一致したものを取りあげる。

○幼児の発達段階と経験の幅に合ったものを取りあげる。

5)幼児が創意を働かせたり、経験を広めたりして、遊びに取り組んでいけるような材料、用具、遊具の与え方をくふうする。

幼児は遊びの中で創意くふうして遊んでいることが多い。それはほんのちょっとしたことであったり、大人の目からはつまらないものであったりするが、どんな小さなことであっても教師は機を逃がさず、創意を認め激励してやるようにする。賞賛や激励によって創意くふうを喜び、楽しんでするようになるからである。

○教師は常に一方的に教えこんだり、見本をまねさせるようなことはしない。

○幼児たちといっしょに作り出すという姿勢をもち、幼児に創意・くふうする意欲をもたせる。

○くふうして遊べる材料、遊び等を考え、幼児が遊びたい気持ちをもてるようにする。

○既有経験・興味のあるもの、発達段階等をふまえて指導する。

以上、本県における幼稚園教育の現状と拡充、指導の充実について述べてきたが、就園率が全国平均値より上回ることができたのは、国の幼稚園教育振興計画に基づく財政援助措置により、県・市・町・村・私立幼稚園関係機関の積極的な施策によるものと考える。

今後は更に、就園率の地域格差の是正のため幼稚園の新増設を進めるとともに、未設置町村の解消、四歳児の就園率の向上を図っていくことが課題になると思われる。

また、このような施設の量的な拡大とともに、幼稚園教育の質的充実も重要な課題である。今までよりいっそうの教育効果を高め、成果を示めしてこそ、幼稚園教育についての理解がより深まり、普及の促進が図られるものと考える。

 

 

 


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