教育福島0030号(1978年(S53)04月)-039page
早苗とる手もとや昔しのぶ摺
中学校・高等学校の国語講座では、古典文学の教材研究の一環として「奥の細道」臨地研究を実施している。
今年度からバスの利用が可能となり文知摺、月の輪、医王寺まで足をのばすことができるようになった。
昨年までは、往復一時間三十分の日程で、現在の瀬の上の渡しまで行っていた。阿武隈川の堤防に立ち、そこから、かつて芭蕉が歩いた方角を一望し今なおわずかに残る葦の原を通ることで満足するしかなかった。
このため、研修に来られた先生がたから、バスを利用することによって距離を延ばし、実際に「奥の細道」の史跡を尋ねたいという希望が絶えなかった。それが、ようやく実現されることになったわけである。
俳かいの神髄を求めて旅にあけくれた俳人芭蕉に思いをはせ、道々詠まれた俳句を鑑賞して当時をしのぶことにより、文学を深く理解しようとするこの臨地研究は、より充実した実習になると思われる。
日程とコースは次の通りである。
〇日程
中学校国語講座
・第一回
七月六日(第三日目) 十三時三十分−十六時三十分
・第二回
八月三十一日(第三日目) 十三時三十分−十六時三十分
高等学校国語講座
十月四日(第二日目) 十三時三十分−十六時三十分
○コース
教育センター−五十辺(いそべ)−○文知摺観音−○月の輪−鎌田大橋−宮代−○医王寺−松原−桑折−教育センター
※○印は下車地
信夫文知摺石
三、「他科目研修」を取り入れた高校理科講座
自然科学の進歩に伴って、それぞれの分野の分化がとみに進んできている。しかし、問題によっては、各分野を総合した立場からの多角的研究の必要性が高まってきている。
こういった現代科学のすう勢に即応して、理科の教員としては、幅広い科学の専門的教養の会得が望まれてくる。
そこで、高校理科講座では「他科目研修」と称して三時間だけ、担当科目以外のものについても研修するように研修課程を組んでいる。
生物の先生がシンクロスコープを、物理の先生が鉱物組織について研修するというように。
これは、単に科学の教養の幅を広げるだけでなく、それぞれ各自の専門分野の内容や考え方を深めることにも役立っていく。
この講座は、実施してから四・五年たつが、好評を得ながら定着したといえよう。やがて、高校の新しい教育課程では「理科1)」が入ってくる。これに対応する講座は、いまの「他科目研修講座」の経験と実績の上に立って、より組織的、より系統的なものへと発展させることになろう。
四、実験実習を重視した家庭、技術・家庭講座
本講座は、小学校、高等学校家庭と中学校技術・家庭講座とから成り立っている。
各講座とも三分の二は実験実習の時間にあてて運営している。特に、中学校技術・家庭講座女子向きでは、「電気1」の研修時間を大幅にふやしてほしいという要望がでていた。従って、昨年度から、八日間のうち二日間をそれにあて、単相交流電動機、電熱、照明器具を中心に研修している。
初日の朝は、「難解で、苦手な電気を二日間も……」といった顔が随所にみられる。やがて、自分の声を電流に変えたり、直流や交流をオシロスコープで観察するようになると、だいぶ心もなごんでくる。
電気回路、回路部品の理論や実験、実物機器の計測、教具や装置の製作に入ると、ショートの火花や音に驚き、計器の取り扱いにとまどい、ハンダ付けが思うようにならず悪戦苦闘が続くのである。しかし、どの顔も真剣そのものであり、次第に思考のポイントも定まり、手順や操作もよくなって、時間の経過も忘れ、熱中した姿がみられるようになってくる。
二日目後半になると、自作した教具や装置を操作し、談笑がもどってくる。しかも、これらを指導過程にどう位置づけ、展開するかといった議論が各所にみられるようになるのである。
実験や実習において、失敗や苦労の連続は、自分の腕をたしかなものにしていくプロセスであり、指導者の技術的経験の集積や行動は、本科の充実した指導を期する「かぎ」になっている