教育福島0031号(1978年(S53)06月)-008page
〇一人で行うことは少ない。友達と集団で行っている。
○両親共働きや、夜仕事で保護者がいない家庭又は、両親は家にいても本人の部屋にはいっさい不干渉の個室や他の生徒たちのたまり場に集まり運転の計画を立てている。
○運転は深夜行われることが多い。
○車は、家の車を無断で持ち出すか、(家庭でカギの保管がよくない)他家の車でカギのつけたまま置いてある車を無断借用、窃盗。
○窃盗車は、途中で乗り捨て、別の車をまた窃盗している。
○集団の中には、誘われて、ことわりきれずに仲間に入って同乗する者が必ずといってよいほどいる。
ウ、 運転の原因、動機は何か
工、 性格・行動面ではどのような生徒が多いか
等が実態は握に含まれると考えられる。原因、動機、性格、行動については、項を改めて述べることにする。
以上、無免許運転を例として述べてきたが、他の問題についてもこのような観点から自校の実態を具体的にとらえてみることがたいせつであろう。
2) 原因、動機をとらえる。
問題となる行動を起こすには、それなりの原因や動機が存在する。非行や問題行動の防止、事故の事後指導に当たっては、その原因・動機を知り、分析し、その解明、問題点の解消に努めなければならない。
例えば、無免許運転をした生徒の場合、運転の理由として
○むしゃくしゃした気持ちをスカッとさせたいと思った。
○このほかに楽しいものがない。
などが生徒から述べられた場合、単に「法律違反だから」「あぶないから」等を理由に運転をやめさせようと指導しても問題の解決にはならない。
学校生活、家庭生活に楽しさが見いだせず、深夜の運転に楽しさを求めた生徒には、運転に代わる楽しさ、生きがいを見いだす指導をしなければ、また運転を続けるか、運転はやめたとしても、他の好ましくない行動に移っていくかもしれない。
こうしたことから、遵法についての指導とともに、学校や家庭生活への適応に配慮し、健全な趣味の育成や活動場面の設定等、積極的な面の指導、援助に力を入れることが必要である。
このように当該児童生徒に即応する指導の対策を立てるためには、児童生徒の内的状態を的確には握し、それらを分析して問題行動の原因・動機も詳細にとらえなければならない。そのためには、受容的な態度で児童生徒に接し、共感的な理解に努めながら閉ざされた胸の中を開かせるようにすることがたいせつである。
家出の原因、動機としては、家庭内の問題に起因するものが多く、その中には、学校が立ち入ることのできない父母間の問題もあるが、家庭の取り組み方次第で善処できる場合も少なくない。しかられての家出や、まわりの人から無視されての家出等も出ているが一人でも自分を認め、話し相手になってくれる人があれば状況は変わってくるであろう。
また、友人関係、学校適応、個人の趣味、希望、行動上の問題等に起因する家出も出ているが、児童生徒とのふれ合いや教育相談等によりこれらの実態を日常の学校生活の中でとらえておくことが、具体的な指導対策を立てる基となろう。(表3参照)
窃盗の原因、動機としては、物欲、好奇心、こづかい銭欲しさ、誘われて等が多く、しかも偶発的に発生していることが多いことから、特定の児童生徒だけでなく、普通の児童生徒にも非行を犯す可能性がじゅうぶんにあることに着目しなければならない。
また、好奇心は、窃盗のみでなく、自動車・バイク等の運転、女子の性非行の原因としてもあげられていることに留意したい。(図2参照)
図2 非行の原因・動機(20歳未満少年)
(福島県警察本部防犯少年課調べ)
3) 児童生徒の性格、行動をとらえる。
家出した児童生徒の事故報告書から性格、行動の特徴をあげてみると、表4のようなことが多く出ている。
この中で、衝動的、内気、おとなしい、目立たない、友達が少ない等は、自殺した生徒の性格、行動と共通していることである。
このような性格の児童生徒が必ず家出等の事故を起こすとは限らない。こうした性格でも学校、家庭に適応した生活を送っている児童生徒が多いのであるが、
表3 家出の理由
○家庭内の問題
○家人からしかられて
○非行が発覚して(したと思って)
○友人から誘われて
○放浪癖
○学校ぎらい
○周囲の人々から無視されて
○家人がうるさい
○自由な生活をしたい
○働きたい
○趣味を深めたい
○タレントへのあこがれ
○今までの生活を改め、清算しようと思って(義務教育課調べ)
表4 家出児童生徒の性格,行動の特徴
○衝動的、自制心に欠ける
○おとなしい
○気が弱い
○意志が弱い
○交友少ない
○わがまま、したいほうだい
○自己中心的
○欠点を言われると興奮する
○めんどう見はよい方、親切(義務教育課調べ)