教育福島0031号(1978年(S53)06月)-009page
中には、なにか問題に直面した場合、他の生徒とは別の行動を起こすこともあり得ることを銘記しておかなければならない。
「おとなしい、目立たない、友達が少ない」という児童生徒は、他人とのいさかいや他人の邪魔をするということも少なく、教師の個別指導の対象になっていないことが多い。おとなしい子であればあるほど胸の中にたまった悩み、不安、不満を外にはき出すこともできず、一人で思い悩んでいることが多いのではあるまいか。このような子にこそ、声をかけ、相談にのってあげる教師の姿勢が欲しい。
集団非行における誘われ組の中には人に誘われればことわれない、気が弱い児童生徒が多い。
このような実態をとらえ、それぞれの児童生徒に即応する指導・援助の手をさしのべるようにしていきたい。
4) 充実した生活を送らせるようにする。
昭和五十二年度に事故を起こした児童生徒の中から中学一・二年生を抽出し、事故終息後どのような生活行動が行われ、学年末を迎えたかについて各学校に調査を依頼したところ、表5のような報告を得た。
この中で「よくなってきている」生徒について、学校や家庭でどのようなはたらきかけが行われているかを記してみると表6のようにまとめることができる。
このような指導や家庭の生活変容の結果、「家庭では親子間の信頼関係が強まり、手伝い等も率先して行うようになってきている」「学校でも目的をもった活動にいそしみ、充実した生活を送るようになってきている」等の報告が得られた。
この事実は、生活に充実感をもたせる配慮をもって教師や家庭が積極的に生徒にはたらきかけることが、当該生徒の生活行動を望ましい方向に変容させていく上で大きな効果があることを示している。
従って、児童生徒の指導に当たってたいせつなことは、禁止や指示事項で行動を規制するばかりでなく、当該児童生徒とのふれ合いを多くして長所を認め、その伸長を図るとともに、困難に立ち向かう彼らを励まし、充実した生活が送られるよう配慮することである。そのために、児童生徒の興味関心がどこに向いているか、健全な方向に向くのを阻害しているものは何か等を、一人一人の実態に即して分析してみることが必要となろう。そして、家庭との連携を図りながらより充実した生活が行われるよう、活動の場や機会を設定したり、意欲の誘発に努めながら学業適応や集団適応を図るなどの援助や指導を継続していくことが、児童生徒のもつ問題を解消させ、ひいては非行の防止に役立つと考えられる。
次に、昭和五十一年度並びに五十二年度において東京教育大学で生徒指導教育相談について研修を深め、現在、中学校で活躍しておられる先生がたの生徒指導に関する実践や研究を紹介し参考に供したい。
学校における教育相談の充実
福島市立野田中学校 遠藤幸吉
一、 生徒指導のおちこぼし
おちこぼれとかおちこぼしという言葉は、教科学習からの脱落を意味するのだろうが、実は生徒指導にもおちこぼしがあることが意外に見逃されているようである。問題行動を起こした生徒がでたあとで、よく「学級指導や全体指導の場で指導し、じゅうぶん注意したのに」との言葉が聞かれるものである。このことは、授業で「よく指導したのに子供は覚えていない」ということと同じで、おちこぼれの原因は子供のがわにあって指導者のがわに非はないとの自我防衛の心理のあらわれである。
指導はじゅうぶんしたつもりでいても、おちこぼれの子供がいたとしたら「全体指導では限界があるものだ」との反省が当然なされるであろう。さらに問題行動を起こしてしまった子供に対しては、結論的には指導がなされな
表5 事故後の生徒の生活行動
(調査対象生徒三十一名)
○よくなってきている 十四名
○よくなってきているがまだ心配である 十二名
○前と同じである 二名
○養護施設、教護院入所 三名(義務教育課調べ)
表6 生徒に対する指導
学校での指導 ○出席確認し、励ましのことばをかけることを励行している
○部活動に参加させ、励ましている
○指導のことばは、他の生徒と区別しない
○担任、生徒指導教師との個別面談を続けている。
○機会をとらえて教育相談をしている
○クラスの係活動を責任をもってさせる
○担任が毎日生徒の動静に配慮しながら指導に当たっている
○不和雷同型なので終始見守る必要がある(2) 家庭での生活や指導 ○子供といっしょにいる時間をできるだけ多くしようとする
・母は夜間の保険外交セールスを中止(母子家庭)
・日曜日いっしょに過ごす
・夕食は全員で
・父子の対話、生活のけじめをつける努力をしている
・放任主義から家庭教育のあり方に関心を示すようになった
○外出は必ず行先、時刻を報告させ制服で行動するようにし、訪問者も制限している
○母が一週間ごと子供の生活の様子を記録し、担任に提出している(義務教育課調べ)