教育福島0031号(1978年(S53)06月)-015page
高等学校における生徒指導
はじめに
高等学校における生徒指導は、現在さまざまな課題に直面している。その最たるものは非行等の問題行動に走る生徒の指導、対策であろう。
しかし、生徒指導は、本来、生徒の非行対策といった、いわば消極的な面にのみあるのではなく、積極的に、すべての生徒のそれぞれの人格のよりよき発達をめざすものである。すなわち
○生徒指導は、個別的かつ発達的な教育を基礎とするものである。
○生徒指導は、一人一人の生徒の人格の価値を尊重し、個性の伸長を図りながら、同時に社会的資質や行動を高めようとするものである。
○生徒指導は、生徒の現在の生活に即しながら、具体的、実際的活動として進められるべきものである。
○生徒指導は、すべての生徒を対象とするものである。
○生徒指導は統合的活動である。
(文部省「生徒指導の手びき)
昭和五十三年度の高等学校における生徒指導の重点事項(「教育福島」二・三月号参照)は、現在、各学校が直面している現実の課題に即しながらも、より積極的な生徒指導の役割を指向して設定したものである。
一、 教師の共通理解を図り、校内の指導体制を確立する
(一) 全教師の共通理解のもとで指導する体制をつくる。
生徒指導は、生徒の人格の健全な発達を助長するために必要な教育活動であり、学校の教育目標を達成するための重要な機能の一つである。しかも、生徒指導は、学校教育のあらゆる場と機会を通して、終始生かされなければならないものである。
すなわち、高等学校における生徒指導は、教科指導、ホームルーム指導などの場をはじめ、生徒会、クラブ活動部活動などを中心に学校教育活動全体を通じて行われ、しかもこれらの指導活動は、生徒指導と相互補足の関係にあることを重視し、一体的に行われるように配慮されなければならないものである。
さて、生徒指導をこのように、学校の全教育活動に重要なかかわりをもつものであると考えるとき、生徒指導は一部担当教師による特別の指導領域と解することはできない。全教師の共通理解と協力、そして全教師がそれぞれの役割を分担し、全生徒を対象として指導に当たることは当然なことである。
従って生徒指導充実強化を目指し、その効果的な運営を図るためには、全職員の共通理解のうえに立って、学校の基本方針及び指導の重点を明確にし学校運営組織の中に正しく位置づけるなど一貫した指導ができるような指導体制が確立されなければならない。
生徒指導を行うための指導体制を考えるとき次のような点に留意する必要がある。
○教師自身の指導理念の確立
○教育目標に沿う全体計画・学年指導計画の作成
○学校の施設設備の充実
○生徒指導の組織づくりとその円滑な運営
○関係機関、団体等との緊密な連携
文部省編生徒指導資料「生徒指導の推進体制に関する諸問題」では、これの組織化について次のようなことをあげている。
○学校における生徒指導の重点事項や課題を明確にし、指導のための基本構想を確立したうえで、組織を押さえること
○学校の特色を生かし、できるだけ単純かつ明確で、実践的な組織を考えること
○生徒指導部としての役割や機能をじゅうぶんに考え、係の合理的な設定について配慮すること
○各係の担当者を決定する際には各教師の特性、特に年齢、経験年数、性別、担当学年、担当教科、所属小学科などを配慮すること
○生徒指導部としての協力的な指導となるように係間の連絡が密になるように配慮すること
○各係は単にもうら的になったり、従来からの慣例だけにたよったりすることなく、全体としての調和をたいせつにすること
教育目標にもとづく全体計画についても、その学校の生徒指導を具体的に進めていくための構想であり、生徒理解や教育相談、教師の共通理解を図るための機会の設定や、各種文献、資料の収集、指導事例による研究、研修計画の立案などにわたるものである。
作成に当たって留意しなければならないことは、
〇一般的、抽象的なものでなく、日々の教育実践を進めるに当たって具体的な手がかり、方法を明確に