教育福島0031号(1978年(S53)06月)-017page
接な連絡をとったり、教育相談の専門機関との協力体制を強化して進めることが必要である。この点の配慮をふまえながら、教育相談について学校全体で取り組みがなされなければならない。
(二) ホームルーム担任が中心となる教育相談体制の確立
一人一人のもつ課題に立ち向う力を助長することが教育相談の力であり、すべての教師に教育相談的心構えが必要であることは前述のとおりである。しかし、学校における生徒指導の第一線はホームルームである。したがって、教育相談についてもホームルーム担任であることは当然といえる。
ホームルーム担任が中心となる教育相談活動をすすめるにあたってはまず校内組織体制を整えることが必要である。校務分掌上に教育相談係(現在県内の高校で相談係の設置されている高校は七三校(六一%)であるが、毎年その数は増加しつつある。)をおき、相談活動を全校的計画のもとに進めることがたいせつである。
また、その際教育相談係が生徒指導の他の部門、特に学年、ホームルーム担任との連携が容易で、学校の指導体制の中で無理がない長続きする体制を作ることが重要で、とりわけ、学年主任、養護教諭などの協力を得た組織を作ることが望ましいものと思われる。
更に教育相談の運営については、教育相談年間計画を、その学校の教育目標を受けて立案し、更に時間設定その他にも配慮するなどして、学校全体が一つの計画のもとにホームルーム担任中心の相談を実施する。そして更にすすんで定期面接、チャンス相談、個別相談、父兄相談を行い、やがて自発来談へと発展することを期待することがたいせつである。
教育相談計画で、ホームルーム担任が中心となっている須賀川女子高校では、年間計画の中で学年別、月別に、面接の主眼点をあげ、更に面接の場所も配慮している。福島農蚕高校では生徒理解のための諸検査、定期面接、研修会等の有機的な関連と教育相談のめやすを示しながら実施されているところに特徴が見られている。
ホームルーム担任が中心となる教育相談の校内体制は、その学校における教育相談の基本的な指導理念が確立されていること、教育相談の計画的、組織的な実施のくふうがなされること、教科担任、クラス、部担任、養護教諭司書等との連絡、助言があり、学年ぐるみでの体制を作りあげられていることなどの、担任をとりまく条件が整備されていることが特にたいせつといえる。
さらに家庭、地域と連絡を密にする相談の体制も必要である。それらの中で、特に親に対する助言は、忠告でなく、親の立場を理解し、共に悩み、親の立場を支持するホームルーム担任の教育相談的態度が重要である。
なにはともあれ、いずれの学校においても、各学年の代表、生徒指導担当者、更に養護教諭などで構成する相談係とホームルーム担任を活動の中心とした相談体制を整備、充実し、そして実践することが急がれなければならない。
(三) 教育相談に関する研修の向上
県教育センターでの調査によると、高校教師の教育相談的姿勢として、一般に教訓的な態度と評価的態度が高く教育相談にとってたいせつな理解的な態度と支持的な態度が不足がちであるという結果がでている。
そして、このことは学校教育相談が重要な課題であることは理解できても教育相談的態度をなかなか実践しにくいことを示している。
教育相談を、全教師のものとして、定着させ、意識を高め、基礎的理論、技術の習得を図るための研修がいっそう必要であることを示しているものと思われる。
このような現状のなかにあって、教育相談講座で養成をうけた人々が、各高校においてそれぞれ実践に取り組んでおり、この実践家を中心に教育相談に関する校内研修会をもって、教育相談の意識と技術の向上を図っている例も見られ、また、校内研修でその効率の高いといわれる外部から専門講師を招き研修の充実につとめているところも多い。その研修内容は「生徒理解について」「ホームルーム担任の行う教育相談」「事例研究会のもち方」等である。
これらは、校内で共通理解をはかり体制を整える研修として、教師みんなの参加により、関心を高め、理解を深めるための一つの方向を示しているものである。
教育相談の研修は、教育相談の理論や知識を知るだけでなく、研修を深めることによって実際の自分の感情を見つめ、ありのままの自己受容をすることによって統合された人間になること、人間尊重の精神を教えながら、自分の成長を図る心理的訓練を受けることでもある。従って、教育相談を行うものにとって、自分が教育相談の研修をうけることは、これらの経験の不足を補うものとなる。
これらの研修を推進するにあたってこれを推進する部門の役割を明確にしその時間を生みだすくふう、研修方法のくふうがたいせつであり、各校の課題であることはすでにのべたとおりである。
なお、教育相談に関する研修の機会として、教育センターの研修講座、文部省のカウンセリング技術指導講座などがある。また県高校生活指導協議会主催の教育相談研究会に参加することあるいは自主的に日本相談学会、全国教育相談研究会に加入したり、民間のカウンセリング、ワークショップ(日本カウンセラー協会、東京セルフ研究会、深層心理研究会、全日本カウンセリング協議会、等)に参加するなども一つの方法と考えられる。