教育福島0031号(1978年(S53)06月)-037page
四、 全国と比べ、なぜ高低があるのか
児童・生徒一人当たり教育費の高低に影響を与える要因を全国と比べ比較的高い小学校と最も低い全日制高校について見てゆくこととしよう。
(一) 本務教員の給与
図1及び表3で見たように、教育費の占める割合の高い「本務教員の給与」が児童・生徒一人当たり教育費の高低に大きな影響を与えている。
表4は、本県と全国の一本務教員当たり児童・生徒数並びに本務教員の平均給与及び平均年齢を比較したものであり、図2は、本務教員の年齢構成を見たものである。
図2 本務教員の年齢構成
この図表から、1)一本務教員当たりの児童・生徒数と2)教員の平均給与額が、児童・生徒一人当たり教育費の高低の要素を示している。
(ニ) 土地・建築費
図3は公立の小学校及び高等学校の教育費を使途別に区分し、「教員の給与」の占める割合と「資本的支出・債務償還費」の占める割合との関係を都道府県別に見たものである。
この図から、「資本的支出・債務償還費」の占める割合が高い県は児童・生徒数の増加が大きく、このための建築費・上地費の支出額が相対的に大きいことによるものと解される。
また、表5は、児童・生徒数及び学校数の対前年度増加率を見たもので、本県の小学校は減少を示し、高等学校はあまり増加はみられない。
このように、児童・生徒が急増すると、校地の買収、校舎の新増改築等に多額の経費を支出するため、土地・建築費は児童・生徒の増加率との関係がでてくるといえる。
図3 都道府県別に見た学校教育費に占める「教員の給与」及び「資本的支出・債務償還費」の比率(昭和49年度)
(三) 債務償還費
債務償還費とは、校舎の建設等のために地方債を発行した場合の元金の返済と利子の支払いに要する経費であり、本県が低くなっている理由は、さきに見た「土地・建築費」と関連があるためである。
なお、児童・生徒一人当たり教育費の高低に影響を与える要因としては以上みてきた要素のほか、学校規模、財源別負担状況、人口規模、人口流動、地域構造等いくつかの要素によって決まるもので、市町村間における教育財政計画等の資料として利用する場合はこれらの相互の関係をじゅうぶん考慮する必要があろう。
表3 支出項目別児童・生徒1人当たり教育費(単位 円)
区分 小学校 全日制高校 本県(A) 全国(B) 差額(A)-(B) 本県(A) 全国(B) 差額(A)-(B) 総額 323,111 302,288 20,823 340,309 416,281 ▲75,972 消費的支出 272,848 222,002 50,846 295,190 306,425 ▲11,235 本務教員の給与 172,128 141,090 31,033 182,682 196,123 ▲13,441 その他の消費的支出 100,720 80,912 19,808 112,508 110,302 2,206 資本的支出 42,373 69,443 ▲27,070 39,091 97,920 ▲58,829 土地・建築費 35,850 63,026 ▲27,176 29,727 87,589 ▲57,862 その他の資本的支出 6,523 6,417 106 9,364 10,331 ▲967 債務償還費 7,890 10,843 ▲2,953 6,028 11,936 ▲5,908
表4 1本務教員当たり児童・生徒数、平均給与・年齢
区分 1教員当たり児童・生徒 教員の平均給与 教員の平均年齢 小学校 本県 21.4人 144.8千円 42.2歳 全国 25.0 140.0 39.9 全日制高校 本県 18.8 130.6 39.6 全国 18.3 141.1 40.1
表5 児童・生徒数,学校数の増加率(%)
区分 児童・生徒数 学校数 50年度 49年度 50年度 49年度 小学校 本県 ▲1.65 ▲2.57 ▲0.57 ▲1.12 全国 2.76 2.80 0.19 0.06 全日制高校 本県 1.39 0.36 0 2.77 全国 3.00 2.96 3.64 5.72