教育福島0031号(1978年(S53)06月)-038page
福島県教育センターから
夜尿症の治療について
教育相談部
一、 母親からの手紙
前略 私は○○に住む者でございます。家族は○人で、別によそ様の生活となんら変わりなく、円満に生活をしておりますが、ただ、長女(小学校二年生)が数年前から夜尿症になり、あらゆる良いという方法を試みましたが、いっこうに良くなりませんでした。思いあまって、学校の先生に相談をしましたら、教育センターを御紹介いただきました。
医者でも治らないのにと、疑問の気持ちもありましたが、なにせ、我が子が少しでも良くなってくれるのではないかと思い、恥をかえりみずうかがいました。
当初は、普段となんら変わらなかったのですが、一か月を過ぎるようになりましたら、わずかながら、尿の回数が減少してまいりました。そうしたらどうでしょう。子供自身が明るさを増し、自分の方から「教育センターに行こう」とせがむようになりました。それから二か月ほど通い、今では完全に良くなり、子供にも笑顔がもどり、学業にも興味を持ち始め、みちがえるほど活発になってきました。
私たち夫婦も大変感謝しておりますとともに、私たち以上に困っているかたがたが大勢いると思いますので、もっと教育センターの相談活動を知らせて、気軽に相談に応じてくださいますようお願いいたします。(以下略)
この手紙は、夜尿症のために、教育相談部を訪れ、三か月間週一回ずつの心理療法を受けた小学校二年生(女)の母親からのものである。
二、 夜尿症の原因
夜尿症を一口でいえば「夜寝ていて、知らない間に放尿をする癖が、満三歳を過ぎても治らない場合」ということである。普通子供は、心身の発達につれて、排水をコントロールできるようになるが、なかには、年齢が進んでも、このコントロールがうまくいかない子供もいる。夜尿が問題となるのは、六歳を過ぎても、ほとんど毎晩のようにあるといった場合であり、年齢と回数の両方の要因を考えてみる必要があろう。
昭和52年度教育相談延べ件数集計表
管内
区分県北 県中 県南 会津 南会津 いわき 相双 計 幼児 232 7 - 2 - - 1 242 小学生 203 67 - 32 - 4 - 306 中学生 150 89 - - - 5 - 244 高枝生 106 10 12 - - - - 128 一般 10 - - - - - - 10 教員 109 18 - 4 - - 1 132 計 810 191 12 38 - 9 2 1,062 管内
区分県北 県中 県南 会津 南会津 いわき 相双 計 知能・学業 123 54 - 1 - - - 178 性格・行動 512 86 4 33 - 5 2 642 身体・神経 105 33 4 - - 4 - 146 進路・適性 9 6 4 - - - - 19 教育一般 61 12 - 4 - - - 77 計 810 191 12 38 - 9 2 1,062
(一) 訓練の不足した場合
おしめをいつまでもさせ(特に夜)おねしょを積極的に直そうとしなければ、夜尿はずっと残るものである。もちろん、寝室と便所との距離、便所の構造なども関係が深い。また、子供をかわいがるあまり、いつまでも赤ん坊扱いしたいという親の願いが、つい訓練をなおざりにしてしまうということもあろう。
(二) 一種の心身症としての夜尿
この場合は、普通、いったんでき上がっていた夜のしつけが、心理的な原因から崩れて、退行現象としての夜尿がひきおこされてくる。これは、子供がなんらかの欲求不満を感じているためで、それによって、自律神経のバランスが乱れ、コントロールがうまくできなくなってしまうことであり、特に、母親の愛情のの回復を求めたいという無意識のうちの反応が、赤ん坊的な夜尿をひきおこすことが多い。
(三) 器質又は機能的な泌尿器神経系の疾患の場合
この場合は、よりまれなものといえるが、ただこのときには、単に夜尿ばかりでなく昼間の遺尿(無意識排尿)、又は尿失禁か、ひん尿を伴っ