教育福島0031号(1978年(S53)06月)-040page

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図書館コーナー

 

資料紹介(一)

 

生がい教育に関する本

 

「生がい教育」という概念が初めてわが国に紹介されたのは、一九六七年に波多野完治氏によって訳出された、ポール・ラングランの『社会教育の新しい動向』(ユネスコ国内委員会)という論文によってであった。以降十年余を経過し、一時期の喧(かまびす)しい論議も鎮静して定着しつつあるようである。だが言葉のブーム化とは別に、その真の意味と実態を究明するには、まだじゅうぶんであるとはいえないのではなかろうか。

本稿はこの十年間に出版された「生がい教育論」に関する図書を、主として県立図書館所蔵のものを中心に紹介し、その現代的意義を考えるための一助にしたいと思う。若干のコメントも添え参考に供したい。(出版年順)

○森隆夫編著『生涯教育』(帝国地方行政学会・一九七〇年)

−−各界の第一線で活躍中の八氏による啓蒙書。教育の生がい教育、理念としての生がい教育、諸外国の生がい教育の三部。付、資料、座談会等三篇。

○ポール・ラングラン著『生涯教育入門』(波多野完治訳・社会教育連合会・一九七一年)

−−この理念を提唱し発展させた第一人者P・ラングランが、一九七〇年の「世界教育年」を記念して出版したもの。生がい教育の概念やその意義をユネスコの立場から論じたもので、この分野の必読基本図書である。

○ 持田栄一編『生涯教育論−−その構想と批判』(明治図書・一九七一年)

−−現在進行中の学制政革や教育の計画化の動向と関連づけ、また勤労大衆にとっての意味を掘り下げた検討と批判の書。(教育計画会議の十四氏執筆)

○波多野完治著『生涯教育論−−教育改革の指針となる生がい教育の理論と実践』(小学館・一九七二年)

−−前記P・ラングランの名テキストの評釈をめざし、日本の現状をも視野に入れながら具体化して解説。

○ポール・ラングラン他著『世界の生涯教育』(新堀通也・原田彰編訳・福村出版・一九七二年)

−−書名の通り世界各国の生がい教育の現状を紹介したもの。本書ではブラジル、米国、フィンランド、イギリス、ポーランド、ソ連、それに日本の七カ国の現状が収められている。

○森隆夫著『生涯教育−−現代"学問のすすめ"』(日本経済新聞社・一九七三年)

−−老若を問わない自己学習のため、生がい教育の意義や自由時間、教育休暇、能力と老化等を解明。肩の凝らない教養の書としても楽しめる。

○ユネスコ教育開発国際委員会編『未来の学習』(第一法規・一九七四年)

−−生がい教育の原理で全教育体系を再整備する、等々の提言を含む国際教育での重要指針を訳出。専門家および教育関係者にはぜひ読んでもらいたい書である。

○藤原英夫著『社会教育体制と生涯教育』(協同出版・一九七四年)

−−直接生がい教育を論じたものではないが、まさしく今日的課題であることを認識した著者が、特に社会教育との関連で論じた労作。社会教育行政の研究者、従事者にとって示唆に富む考察がなされている。

○友田不二男著『生涯学習入門』(ビジネス社・一九七四年)

−−教育の基本的問題を、人間の一生がいにわたる学習という観点から、しかも「実践と体験とをできるだけありのままに提出」して考察したもの。

○宮城誠一編『生涯学習』(東洋経済新報社・一九七四年)

−−生がい教育というものを単に形式的、抽象的なレベルで論じるのではなく、教育の歴史的現実ととりくみ「国民の生活の内面に、地域と職場の内部に、しみわたっている教育体制の退廃をうちやぶっていく力をどこにもとめるか」(序言)を考えるなかでの、現状批判的な論が展開される。

紙幅の都合でコメントを付けることはできないが、以下に書名・著者名・出版社のみを紹介しよう。

○『生涯教育と自己実現』(永田時雄・ダイヤモンド社)○『生涯教育新講』(波多野完治・教育開発研究所)○『生涯教育論批判』(持田栄一・明治図書)等。

 

 

 


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