教育福島0031号(1978年(S53)06月)-044page
福島の文化財
重要文化財
木造阿弥陀如来及び両脇侍像
喜多方市上三宮町上三宮 願成寺
願成(がんじょう)寺阿弥陀如来は高さ二四一センチ、両脇に侍する観音・勢至菩薩とともに量感豊かな寄木造りの三尊である。本尊は漆箱(しっぱく)、玉眼嵌入(ぎょくがんかんにゅう)の像で上品下生(じょうぽんげしょう)の印相を示し跌座(きざ)している。両脇侍はやや前かがみに跪座(きざ)(腰をやや浮かしてひざまずく)する姿で京都大原三千院の三尊と同じ形式である。両脇侍が跪座する来迎像は弥陀の来迎を切実に願う心をあらわしたもので、地方には類例がなく興味深い。後世の修補によって腰をおとして坐った形になった。
願成寺は寺伝によると浄土宗の一派、多念義流の宗祖隆寛を開山とし、その弟子実成(じつじょう)を開基としている。隆寛は、はじめ天台宗を学んでいたが、のち法然の浄土宗に傾倒しその教えを受けた。その後天台宗の定照(じょうしょう)と論争したため、ざん言によって嘉禄三年(一二二七=鎌倉時代)奥州へ遠流の身となった。隆寛は配流の途中相模に留まり(相模飯山で歿)、弟子の実成がかわって奥州に下り願成寺を創建したと伝えている。
三尊は藤原時代のおだやかな慈相を残しながら、鎌倉時代特有の写実性のある力強くどっしりした趣きをあらわしている。このことから三尊の製作年代は願成寺の創建とほぼ同時代の鎌倉初期のものと考えられる。東北に遺存するこの種の仏像としては注目すべきもので昭和四年重要文化財に指定された。(拝観希望者は電話 喜多方二−一五六五に連絡)