教育福島0032号(1978年(S53)07月)-009page
力と経験を生かしながら、教材を精選し、指導の重点化を図っていくことがたいせつである。
教師の創意・くふうや苦労なしに授業の充実は期待しがたい。
実践の積み重ねを通して、こういうときにはこうする、こういう場合にはこう対処するといった場に応じた仮説のセットを豊かにしていくことがたいせつである。
二、単位時間の取り扱いについて
指導の効果を期するには、単位時間の指導をより充実する必要がある。
単位時間の取扱い上配慮したい事項をいくつかあげてみると
○ 学習課題の吟味と提示のしかたにくふうする。
児童生徒が切実な必要感や興味・関心をもつもの、より魅力のあるものにする。
○ 学習の連続性からみて、導入の簡易化を考える。
○ 本時の重点を明らかにし、自主的、発見的に学習させ、統合的・発展的に考えさせられるための発問、教具(学習具)、学習形態、教育機器等の利用などについてくふうする。
○ 重点事項を評価するための教師自作テストをくふうする。
数学的な考え方の評価は、その考え方が次の他の教材に転移するかどうかでみることができよう。
数学的な考え方は、一度の指導で身につくものではない。何回も繰り,返し指導し、学習させることがたいせつである。
○ 計算、作図、実測、分類整理などの活動と指導のねらいとの関連をよく検討して、それらが能率的に行えるようくふうする。
○ 練習や力だめしは必ずしも一括して取扱う必要はない。集中的に扱うか、分散して扱うか、どちらがより効果的か、実態に即してくふうする。
特に、学力差をじゅうぶんに考慮する必要がある。
三、みずから学ぶ力を育てる学習指導過程について
問題を数学的にとらえたり、数学的に解決したりするときに、一般によくとられる数学的方法、考え方、能力が身につくような学習指導過程を構成し繰り返し経験させることがたいせつである。
○ 問題は握の段階
○ 問題解決の段階
○ まとめと発展の段階
の性格、内容をじゅうぶん吟味し、各教材とのかかわりでくふうしていくことがたいせつである。
小学校低学年から、ゆとりをもって発見的に考えさせる指導が望まれる。
○ 児童生徒が学習の問題をはっきりつかむ。
〇 一人一人が能力に応じて考え、記録する。
○ 忘れたことはノートや教科書で調べる。
○ 自分の考えを発表し、友達に理解してもらう。
○ 友達の考えと比較して、考えの違いを明らかにする。
○ いろいろな考えを関係づけて、統合的・発展的に考える。
○ それらの考えを、ことば、記号、図式で表す。
などのための時間を与える。
これらの時間を確保することによって、児童生徒がゆとりをもって考え、自主的、発見的に学習し、算数・数学を学ぶことの楽しさを味わうことができると考えられる。
G・ポリヤは著書『いかにして問題をとくか』で
○ 問題を理解すること
○ 計画をたてること
○ 計画を実行すること
○ ふり返ってみること
の四段階を設定している。
算数・数学の指導に役だてたいものである。特に「計画を立てる」「ふり返ってみる」段階の具体的実践例の累積が望まれる。
四、児童生徒の反応について
過程の重視が叫ばれながらも、依然として、結果に対する是認が多いように思われる。
よくわからない児童生徒を大事にし、これらの者から、どこがわからないのか、その原因は何かと追求していく教師でありたい。
教師の発問に対して、教師が予想した答えと違った場合でも、単に「違う」とか「ほかに」のようなことばで否認したり、黙殺したりしないこと。また反対に、期待どおりの答えが返ってきても、すぐに「よろしい」などと断定して、他の発言を封じこめてしまうことのないようにすること。「なぜ、それは違うのか」「どこが違うのか」あるいは「どうして、それはよいといえるのか」のように論理的に究明していくことが、算数・数学の指導では、たいせつである。
指名等についてもなるべく広範囲の児童生徒に指名し、できるだけ多くの児童生徒の考え方を発表させるようにし、発表に対して、誤りのあるときは学級全員の力でそれを修正していく方向が望ましい。
児童生徒が問題のやりっぱなしをしないで、自分で自分の思考過程に誤りを発見したり、よりよい解決法を次々に発見していくような指導のあり方について絶えず研究し、そのような態度や能力を身につけた児童生徒をひとりでも多くつくりあげていくことが、授業改善の方向であろう。