教育福島0032号(1978年(S53)07月)-014page
両面で新出事項が出て、文構造も複雑--を補うためにも、また速読、多読の力をつけるためにも、副読本を紹介し活用させている。
これまで読みの指導という面で好評だったのは、全員に買わせた"To Live Beyond My Power"(力の限り生きん)--田中春雄著、三友社刊--という本であった。中卒の工員である著者がふとしたきっかけで殺人を犯し、七年の懲役刑に服するが、獄中で英語の勉強に血のにじむような努力をする様子がなまなましく描かれ、生徒にたいへんなショックを与えた。内容の強烈さに生徒たちはぐんぐん引っ張られ、自己の生き方と対比しながら一気に読破していった。一章ごとの大意と読んだ感想を毎週提出させたが、それを見る限り、英文を読むとはどういうことかを自分なりにつかめた生徒が多かったように思う。
なお、副読本によらない速読の指導として、月に三回ほど、易しい題材を使って1paragraph雲にとに大意を言わせる練習をやっている。OHPを使って読み返しのできない方法が有効である。
(三) 教科書教材の言語材料の面での指導の要点
1)語義は文脈のなかで推し量り、あとで辞書で確かめる習慣をつけること。未知語の意味の想像がうまくなることも読む力の一部である。
2)複雑な文構造は単純化して読む。
3)数、時制、態などの言語的signalsを理解しながら読む。
4)人称代名詞や指示代名詞、hereやtherなどの具体的な中味を文脈のなかで吟味する。
5)省略部分を補って読む。
ただし、これらはあくまで内容は握の準備段階として行われるものであることを強調している。
(四) 音読の指導の要点
1)範読は主として肉声で行う。
2)斉読は生徒全体が大きな声で、そろって、速く読むよう促す。
3)必要に応じintonationのtonemarkをつけさせる。
4)読むときの切る箇所を注意させる。
5)不定冠詞や複数形語尾もはっきりと読ませる。
二、書くことの指導
(一) 和文英訳の指導
言い古されていることであるが、高校の英作文とは「英借文」であること、与えられた日本文を、自分が知っている構文にあうように加工できたら半分以上成功であることを常に強調している。従って少なくとも教科書の模範文は暗記することを要求し、そのための豆テストは予告なしで行すことにしている。また、練習問題は決して虎の巻や進度の速いクラスの友人のノートを写して訳文を作成することのないよう厳しく申し渡しているかわり、時間の許す限り黒板に書かせて添削していく方法をとっている。
英作文の教科書には1)文型、構文中心型、2)Topic中心型、3)発想別表現中心型の三つに類別できると思われるが、本校で使用している1)型の教科書は内容の点でうるおいがないため、必要に応じ2)または3)型の教科書のなかから関連教材をコピーして使用している。
(二) 自由英作文の指導
situationのない「和文英訳」と違って、自由英作文を課すとこちらがびっくりするほど生徒は実に生き生きと表現しようとする。自分を認めてほしいという切なる願いがひしひしと伝わってくるときもあって、人間教育という面でもこの指導はたいせつであると思う。
具体的な指導としては、学習指導要領「書くこと」の内容(ウ)の趣旨にそって、簡単なテーマを与えて自分の経験したことや考えたことを五十語〜百語程度で書かせている。テーマとしては、「私の家族」「好きな先生」「将来の夢」、少しむずかしい「自由と責任」、「民主主義と教育」などであるが、授業中に扱う余裕はなく、ほとんど宿題として課している。生徒の作品は筆跡そのままに電子ファックスでコピーし、授業中に批評しあっている。自由英作文の注意として1)ウソを書かないこと2)一語一語和英辞典で調べず、文の意味をとって既習の文を利用して表現することの二点を強調し、評価は(a)その生徒らしさ、豊かな着想、(b)paragraphの構成、(c)英語の正確さ、の三つの柱を視点として、必ず評言を付した上でA°、A、Bの三段階で評価している。原文は添削しているが、(a)をこわさないよう注意している。また、立論できずにいる生徒には、いくつかの論点を提供して書き易くしてやる配慮が必要であり、さらに自由英作文に抵抗を感じ易い一年生に対しては、その準備段階として次の三点を考慮している。
1) outline composition テーマとそれに関する語句を与えて内容のある英文を書かせる方法。
2) picture composition 絵を見て思いついたことを英文にする方法。英語Aの教科書のEXERCISESにこの種の問題があり、この教材を英語Bの時間に利用することもある。またNHKテレビ英語会話STEP2)はこの方式を採用していてたいへん参考になる。
3) ストーリーの出だしを与えて、自由に完成させる。
特に1)はRiversがguided writingと呼んで推奨しているが、いずれの場合も、Topicの内容が既習の語句や構文でかなりカバーできるよう配慮してやると、生徒は意欲的に英文を創作する。
三、聞くこと、話すことの指導
(一) Listening Comperhension
通常の授業で生徒が英語を聞くのは
1) リーダー本文を聞くとき
2) Q and Aで教師からQを聞くとき
3) 教科書付属テープに録音されているHearing Testを実施するとき
4) 教室英語を教師から聞くとき