教育福島0032号(1978年(S53)07月)-017page
きたし、生徒のまなざしがいきいきとしてきた事は感じられる。ある生徒は、突然試験の結果、好成績を出したので聞いてみると、なにか自信がでてきたようだと言っている。この方法は昔からあったのであり、なにも目新しいものではない。温故知新で教育法に変化をもたせ、実験実習や視聴覚教育でカバーできない面を今後ともくふうしていきたいと思っている。
プロジェクト学習と学校農業クラブ活動の実践
福島県立岩瀬農業高等学校教諭
生方和廣
はじめに
農業教育の方法は、授業・実験・実習等、いろいろな角度からおし進められているが、それらが有機的・効果的に結びつくところに意味があると思う。その実践活動のなかで難かしさを感ずる点は、特に次の点と思われる。
○能力差に応じた基礎的事項の定着はどのようにしたらよいか
○実験実習の難かしさを克服するにはどうしたらよいか
○研究心・実践力などの意欲をいかにしたら高めることができるか
これらの問題点を解決する一つの方法として、プロジェクト学習と、農業クラブ活動の強化をはかってみた。
一、プロジェクト学習の実践
プロジェクト学習とは、生徒が将来の農業を想定して、自分で栽培設計等を計画し、自分で計画にそって実践し、その結果をまとめて反省し、今後の農業のあり方を検討するといった学習である。それは体験のなかから総合的に学習するものであり、作物の生育の流れにそってはじめから終りまで系統的に学習するものであり、教える学習ではなく求める学習である。
実施場所は学校の農場で、時間は、授業(選択)と放課後実施する。各自の計画に従って、教師の指導助言を受けながら実施する。各自のプロジェクト学習が終了すれば、その週程で農業の本質的な基礎はすべて学習し、身についたことになる。
○効果
1) 体験を通しては握するため、能力差にかかわらず、基礎事項の定着がはかられた。
2) 一つの作物を追求することにより他の作物へも応用できる力が養えた。
3) 総合的に農業知識を組み立てることができた。
4) 意欲と目的意識を持たせることができた。
5) 個別指導が徹底できた。
園芸教科におけるプロジェクト学習の例
生徒の活動 到達目標 指導の留意点 計画 栽培計画の立案 作物栽培と農業経営
品種と作目選定の条件
作物の生育経過と環境
栽培計画の立案○生徒の家の経営実態について
○資料,参考書を読ませる
○個別指導により研究テーマを設定させる実践(実習調査等) 育苗 播種,鉢上げ、育苗管理、定植床作成 たねまきの方法,移植、土,肥料と栽培との関係 ○生徒が自主的に自分のテーマにもとづいて活動できるようにする
※きめ細かい指導○黒板,プリントでの現場指導
○質問に対する答え
○作物の変化に対する発問
※つき離した指導
自主的活動をした後で質問に答える
○記録簿の点検と評価
○個別指導の徹底定植 定植 定植の時期と条件、定植の方法と管理 定植後の管理 支柱立て、誘引、芽かき、花粉交配、追肥、薬剤散布 栽培の仕立て方
整枝,誘引,芽かきの方法
栄養成長と生殖成長
花芽分化,開花,結実
追肥と肥料の吸収状態
病気と診断
農業薬剤と使用法収穫 収穫
包装収穫の適期の判定
品質鑑定
調整 荷姿まとめ データーの整理
論文作成
研究発表収支決算
実験調査のまとめ方
研究発表の方法論文の作成にはじゅうぶん時間をかける
農業クラブの研究発表大会に参加
二、学校農業クラブとプロジェクト学習の関連性
学校農業クラブにおける研究活動と専攻学習におけるプロジェクト学習の目的は、教育的にみてほは同じであるので、指導の一本化をはかり、更に教育効果の向上につとめた。
○効果
1) 専攻学習(プロジェクト学習)の生徒と研究班(農業クラブ)の生徒のメンバーを同じくすることにより、自主的研究活動は、グループ活動にまで盛り上がり、授業内活動から放課後活動まで延長されるようになった。
2) 生徒みずから研究活動をしているという盛り上がりが、校内全体に広がった。
3) 農業クラブは、研究活動の援助として、講演会、講習会、先進地視察、研究発表大会などの行事を開き、さらに研究活動(プロジェクト学習)を盛り上げることができた。
工業
「工業」における学習指導法のくふう
教育過程審議会答申の2)に関連事項として五項目があげられているが、そのなかで指導方法について次のように述べられている。要約すると「教育過程の実施の効果は、各学校における自発的・創造的な活動に期待するところが大きい。特に精選された内容を確実に身につけさせ、一人一人の生徒の個性や能力・適性に応じた行き届いた学習指導を進めるためには、教育の実際