教育福島0032号(1978年(S53)07月)-023page

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る。生体内部の特定状態変化特性を尿意として抽出し、これと下腹部をたたく身振りとを対応させることが信号化の過程である。音声は、その上に重ねて発信を続けると(図4)、やがて音声「オシッコ」を受信して、下腹部をたたく身振りを行い(図5)、便所でおしっこをするようになる。こうして、音声「オシッコ」を受信しただけで、便所に行けるようになる(図6)が、子供自身が音声を発することができない場合、言われればできるが、言われないとできない状態にとどまることを心得ておく必要がある。

以上の論考を下敷きにして、T・Nに対する指導内容・方法を考えると、適時、適切、適度なものであったかどうか、各自検討をしていただきたい。

 

図1 おむつをしている状態

図2 身振り信号の受信が可能になった状態

 

図2 身振り信号の受信が可能になった状態

図3 身振り信号-排尿行動 体制の対応成立状態

 

図3 身振り信号-排尿行動 体制の対応成立状態

図4 身振り信号に音声を重ねた発信状態

 

図4 身振り信号に音声を重ねた発信状態

図5 音声を受信すると身振りを発信する状態

 

図5 音声を受信すると身振りを発信する状態

図6 音声を受信するとトイレで排尿できる状態

 

図6 音声を受信するとトイレで排尿できる状態

五、雑誌掲載の研究報告の検討

 

五、雑誌掲載の研究報告の検討

 

1)「小学校低・中学年を対象としたコミュニケーション能力を伸ばす指導」(高橋健剛、精神薄弱児研究、No.234,1978・3)

冒頭のコミュニケーション能力を伸ばす基本的な考えを、次に引用する。

「子供たちが『話す』ためには、目や耳から入ってきたいろいろな事象を受けとめ理解し(受容)、関連づけたり組織化し(連合)、そして表出する(表現)という一連の機能の働きによって、成立すると考えられる。ことばで表現できないということは受容-連合-表現というコミュニケーション過程のどこに遅れがあるのか、発語器官の機能に問題はないのかなど、できるだけ総合的に診断を試みていかなければならない。」

コミュニケーションの方法は、音声系だけに限らないことはすでに述べた。この考えに従うと、聾や盲聾の子供のコミュニケーションは不可能だということになりはしまいか。また、これとは別に、コミュニケーションを考えるとき、われわれは音声だけによっているのではないということにも注目する必要がある。図7に示したように、分子合成的信号系を習得した者にとって、交信行動はもはや音声や文字だけによるだけでなく、自成信号、象徴信号等が組となって受信され、加えて時間経過上直前の行動の結果も関与して、活動の方向や強さを規定することになる。これを信号の累和効果というが、コミュニケーションを考えるとき、これを無視してはいけない。受容、連合、表現の考えについては、これまでの論考を参考に整理していただきたい。

2)「『5は3よりいくつ多いか』についての一考察」(一瀬千恵子、前掲誌No.229,1977・10)

この報告によれば 「どちらが多いか」までは分っても 「いくつ多いか」はむずかしいという。そして、事実のは握のし方の発展があって、その上でコトバがわかってくる筋道があることを指摘して結論としている。

図8 1)のような数字と物の集合の量との間に一対一対応写像関係を理解していることを前提とする。図8 2)のXとYとの関係を等価祝し、Xは空集合なので、AがBよりYの数だけ多いという正解にいたるまでには、集合A、Bの属性に注目し、概括したり、抽出経たりする操作を経なければならない。正解までの操作の詳細は別の機会にゆずることにするが、こうした操作の回数を増すと、課題はそれだけ次元が高くなり、難かしさを増すことを意味する。

 

図7 生命活動に繰り込まれる信号組のようす

図8 1対1対応写像関係

 

図8 1対1対応写像関係

 

 

 

 


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