教育福島0033号(1978年(S53)08月)-023page

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を開発する能力を育成するには、どのように指導すればよいのかである。

進路指導の究極のねらいは、自己開発の能力の育成にあることは言うまでもない。指導上困難ではあるが、特に進路をみずから選択、決定し志望実現に向かって障害を克服する能力の育成に努力すべきである。

(一) 重点目標

自己開発の能力は、まず自己理解、進路情報、啓発的経験によって育成されるものである。本校の生徒の最大の欠陥は、自己理解の甘さと依存性にある。以上のことから本校として次の四項目の全体目標をあげ努力している。

1) 生徒の一人一人の能力、適性を的確には握し、それぞれの発達段階に即して進路に関する問題意識を引き出し、自己についての理解を深めさせながら、個人のなかに成長していく自己指導の能力を養う。

2) 聴覚障害に対する正しい認識のうえに将来の進路の選択能力や、新しい生活への適応を図りながら障害を克服して自己をよりよく生かす能力を育成する。

3) 社会の一員としての自覚のもとに社会に貢献するという倫理感を基盤として、勤労を尊重する態度を養う。

4) 生徒指導の一環としての進路指導においては、自主性とともに、社会性の育成を図る。

(二) 自己理解のための啓発経験としての職場見学

本校の問題点の一つに閉鎖的な環境からくる行動範囲や情報の窓口の狭さと、片よりがあげられている。そのうえ、比較相手が聾(ろう)に限られ、聴覚障害に対する正しい認識が得られず、一般との比較において自己を知ることが困難である。

こうした生徒の実態から、少しでも多くの啓発的経験を得させるための職場見学を実施している。

1) 第一回職場見学

高等部全員を対象に、郡山市で比較的大規模な事業所を二〜三社見学する。

2)第二回職場見学

本校には、産業工芸科、被服科、金属工業科、普通科があるので、学科との関連のなかで四コースにわかれて見学している。

3) 昭和五十二年度より、県心身障害者雇用促進協会主催による高等部二年生対象の職場見学が実施され、本年度からは一、二年生を対象として実施ずみである。

このことは、生徒の見学の機会が増え好ましいかぎりである。

職場見学実施後の整理として、全員に感想文を書かせることにしているがほとんどの生徒が表面的なみかたしかできていない。ただ、回をかさねるに従い、自分なりに問題を持ち、考え方が深りつつあることもたしかである。

(三) 残された課題

高等部において解決をせまられている課題はあまりにも多い。これらの中で、特に重点的に取り組む必要があるものを二、三あげていると、

1) 進路指導上必要と思われる。諸検査の実施とその資料の整備。

2) 能力に対する過信、ものごとの見方、考え方の単純さ、学科や職業選択上の主体性の欠如など自己理解にかかわる問題。

3) コミニュケーションや学力遅滞の問題。学習か受け身で主体性が育ちにくい。そこで、情報や良質の経験を受容し、内面化できる指導。

4) 閉鎖環境解消の努力。

普通高校生との積極的な交流の推進。聴覚障害者に対する正しい認識を得るための啓蒙運動。

 

五、事業所等との連携

 

福島市中学校職能開発研究協議会

 

義護教育出身者の職業的自立を助けるため、学校、事業所、福島市教育委員会、福島公共職業安定所の四者で組織された通称、職能研と呼ばれる会が活動している主な事業は、

1) 研修会

「事業所は中学校の進路指導になにを望むか。」「職場での障害者受け入れ態勢はどうあるべきか。」などについて、学校と事業所が意見や情報を交換し、理解を深める。

2)学校教育への協力

〈生徒の事業所見学〉市内中学校特殊学級合同で会員事業所見学を実施。

〈職場実習への協力〉職場適応訓練の場を会員事業所が提供。

〈指導計画作成資料の編集〉

職業的自立に必要な諸能力の調査と指導内容選定の参考資料集の編集

〈勤労者表彰〉

〈会報、「職能研だより発行」〉

本会の結成は昭和四十六年、高度成長に先立つ不況期で、昭和四十年ごろに急増した特殊学級の関係者は、経験が浅くまた、事業所、職業安定所も不なれで就職難に伴い、伏在していたさまざまな問題が露呈した。賃金に格差のあること、就職選考で別枠にすること、職場で養護教育出身であることをわざわざ明らかにすることなどについて、学校と事業所が直接意見を交換する機会が強く望まれた。さらに、話し合いの中から事業所に改善を求める声が起こり本会の結成へと導いた。

現在、本会に負わされた課題は、養護教育出身者が自立しようとする、土壌を肥よくにすることである。特殊学級、養護学校合同の作業生産学習場としての職業訓練センターの設置や、中卒で未成年勤労者の社交場との開設などを抱負としている。

 

 

 


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