教育福島0033号(1978年(S53)08月)-040page
図書館コーナー
マンガをどうとらえるか
子供たちは、マンガをどのように読んでいるかの実態を調査した次のような表があるので、御覧いただきたい。
1)の問いかけに対して男子七十名、女子五十名のうち、読んだと答えたもの六十二名(八九%)、女子の場合五十一名(九六%)である。次に、その一週間内に読んだ子供について、何冊位読んだか、マンガの本と雑誌に分けて聞いたのが2)の表である。
また中学生について次のような結果もある。
小学生の実体(6年生 男子70名・女子53名)
1)今週1週間のあいだに,マンガの本やマンガ雑誌をよみましたか。
男子 女子 読んだ 62人 51人 読まなかった 8 2
これらの表は、いずれもある読書団体の調査による、都市部の小・中学生を対象としたものであるが、一般的な傾向はよみとることができるだろう。
つまり、読書との比較においてみた場合は、テレビに費やす時間がかなり多く、マンガをみる時間は意外に少ない。しかし表1)2)にあらわれているように、なんらかのかたちでマンガ及びマンガ雑誌との接触は相当日常的に行われているというのが事実である。
「今の子供は本を読まなくなった。テレビとマンガばかりみている」という嘆きをよく耳にするのであるが、それは事実であるだろう。しかし、マンガやテレビを無理に取り上げればコトはすむのであろうか。おそらくそうではあるまい。第一そのようなことは不可能であるばかりでなく、愚かなことでさえある。
2)1週間に読んだ冊数
〈マンガの本〉 〈マンガ雑誌〉
男子 女子 男子 女子
1冊 12人 12人 1冊 11人 10人 2 3 1 2 8 9 3 5 3 3 7 6 4 7 0 4 4 1 5 3 1 5 2 2 10 2 3 10 1 2 15 1 2 15 1 1 最高 41冊 20冊
3人最高 30冊 15冊
むしろ、マンガというのは(テレビも同様であるが)子供の文化としても、一つのものを築き上げてきているので見落としてはならない、という認識のもとに、いい本を勧あるなり本を読む生活を子供自身の生活の中に、築いていかせることを考えることのほうが、マンガを取りあげることよりも数段現実的であり、建設的であると思える。
子供とマンガのかかわりということは、なにも今にはじまったことではない。戦前と戦後の一時期、関係者の間では″マンガおやつ論″というのがあった。子供は見るには見るけれど−飛びつくけれど、すぐに卒業していくものだといういい方である。だが今の状況はそんなナマ易しいものではなく″マンガ主食論″さえまかり通る状況である。
中学生の実体(1年生〜3年生)
3)放課後,家へ帰ってから,次のことをするのに,どれくらいの時間をつかうか。 (%)
読書 テレビ マンガ 勉強 0分 37.9 2.5 31.4 10.3 15分 16.6 3.3 14.7 6.7 30分 17.7 4.3 25.2 17.9 1時間 11.3 11.5 16.3 20.3 1時間半 4.4 11.2 5.4 13.9 2時間 8.8 2.0 3.7 14.8 2時間半 1.1 12.7 1.2 7.7 3時間以上 2.3 34.5 2.0 8.4
しかしそれにしては、あまりにもマンガに対処する態度がお粗末すぎたのではないか。頭から拒否するか、あいまいなままに状況に流されるのかどちらかであったと思えるのである。今こそ正面から取り組んだ、今の子供の文化としての正しい位置づけがきちんとなされねばなるまい。
本稿はマンガ論の展開にその目的があるのではなく、マンガをどうとらえるか−−特に子供文化の中のマンガ−−を考えるための資料提供にある。
以下、県立図書館所蔵のものを主としてリストを紹介したい。
○『こどもとマンガ』(秋山弘・図書館問題研究会大阪支部発行の「学習権の保障と図書館活動」所収)
○『小学生のマンガ指導』(深川文学教育の会・明治図書)
○『現代マンガの思想』(石子順三・太平出版社)
○『子どものマンガをどうする』(石子順三・啓隆閣新社)
○『マンガ芸術論』(石子順三・富士書院)
○『マンガ文化』(副田義也編・至文堂発行の「現代のエスプリ・一〇八号」)
○『漫画家族』(田中和男編・富士ゼロックス社発行の「GRAPHICATION・一九七七年三月号」)
○『少女マンがの世界』(前掲書・四月号)