教育福島0033号(1978年(S53)08月)-044page
福島の文化財
県指定重要文化財
木造釈迦如来坐像
所在地 いわき市常磐湯本町三函勝行院
勝行院の木造釈迦如来坐像
勝行(しょうぎょう)院本堂右側にある釈迦堂の本尊である。像高八十五センチメートル、裳先まで三十九センチメートルある。寄木造り漆箔で、肉身部分のみは金箔をおしており、その一部が残っている。玉眼◆入(ぎょくがんかんにゅう)で肉◆(にくけい)は低く小さく、渦巻きの螺髪(らぼつ)が額で軽くカーブする。顔は鼻筋とおり、口元ひきしまるエキゾチックな美男型の仏像である。
両肩から腹部に流れる衣文のとり扱い、腹帯をのぞかせ、定印の指の爪先を長く伸すなど、大陸宋風の影響を濃厚に受けた鎌倉末期〜南北朝期の特徴を示している。ことにハギ合わせる両袖先と裳先をシンメトリに幅広く台座から垂下する様式はユニークである。この垂下様式は禅宗の高僧の頂相(ちんそう)像(=肖像)の影響を受けてとくに鎌倉を中心に製作され展開するが、両袖先と裳裾先を直接垂下する方式が先行し、ついで裾先を台座の上でハギ合わせ、垂下するように変る。この先行形態のものは東京都五日市光厳寺の釈迦如来坐像のほかに見られるが、勝行院の釈迦はこれに属し、量感もじゅうぶんでなかなかの傑作である。南北朝時代の作であることはほぼ間違いなく、飛天、すかし彫りの光背も同時代のものである。
(所有者勝行院 拝観は無料です)